シマオオタニワタリ (Asplenium nidus, )



シマオオタニワタリ(Asplenium nidus L.)は熱帯に生える着生シダで、鳥の巣のような株の中心から、切れ込みのない幅広の葉をロゼット状に広げる姿が好まれ、観葉植物として室内で育てられています。花は咲かず、胞子と株分けで殖えます。ASPCA は猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。
続きを読むアスプレニウム・ニダス, Bird's nest fern と Nest fern
間接光の当たる場所か、日陰になる部屋に置きます。

世界の分布
POWO によると、Asplenium nidus の自生域は東南アジアの熱帯からクイーンズランド州北東部にかけての高温多湿の地域です。植物誌や園芸関連のリストでは、太平洋の島々、ハワイ、インド洋にも広く見られると記されていますが、これらはアジアの原産地とは区別して扱う必要があります。
基本情報
シマオオタニワタリ(Asplenium nidus L.)は、チャセンシダ科チャセンシダ属の着生シダです。リンネが1753年に命名し、現在も主要な分類データベースで受理名として扱われています。1 2
英名の bird's nest fern は、株の姿をそのまま言い表したものです。切れ込みのない葉が株の中心から立ち上がり、鳥の巣のような器の形をつくります。日本では丈夫で大柄な観葉植物として出回り、「アスプレニウム」や bird's nest fern の名で売られることもあります。3 4
チャセンシダ属には、葉脈に沿って並ぶ細長い胞子嚢群で見分けやすいシダが多く含まれます。その多くが細かく分かれた葉をもつのに対し、A. nidus は単葉で幅の広い葉をもつ点で目を引きます。5 1
見分け方
株は、切れ込みのない幅広の葉が弓なりに広がるロゼットになり、葉は明るい緑から鮮やかな緑で、つやがあります。ボストンファーンのような羽状のシダと違い、葉身は小羽片に分かれず、縁が滑らかか、わずかに波打つ一枚の板のような形です。3 6
葉の中央には濃い褐色の中肋がはっきりと通り、そこから細い側脈が並んで伸びます。栽培下での株の高さはたいてい40〜60 cmですが、湿度の高い温室でよく育った株では1 m近くになることもあります。4 6
害虫と取り違えやすいのが、胞子をつける葉の裏に現れる細長い胞子嚢群です。中肋に沿って斜めに並ぶこの構造は胞子にかかわるもので、シダとしてごく普通のものです。カイガラムシや虫の卵ではありません。ロゼットの中心には水や落ち葉などがたまりやすく、これもこの種ならではの特徴です。5 3
知っておきたい分類
学名は Asplenium nidus L. で、種のランクの受理名として、ウラボシ目チャセンシダ科に置かれています。POWO はこの種の生育環境を熱帯の湿潤な気候とし、着生または岩生の植物として記載しています。1 2
園芸店では、この種や近縁のシダをめぐって、いくつかの流通名が使われています。
- Asplenium nidus L.:受理名
- Asplenium antiquum Makino:和名オオタニワタリ。近縁種で、同じ「鳥の巣」系の名前で売られることが多い
- 園芸品種の 'Crispy Wave'、'Osaka'、'Fimbriatum':葉の縁が波打つもの、房状に裂けるものを指す
これらの呼び名が表しているのは株姿や葉の質感であり、植物学上の別種ではありません。確かな拠りどころは、受理された学名 Asplenium nidus です。1 6
生育環境と分布
POWO が示す自生域は、東南アジアの熱帯からクイーンズランド州北東部にかけての、高温で雨の多い地域です。そこでは樹幹や枝に着生するか、有機物の多い日陰の岩に岩生して育ちます。1 4
植物誌や園芸関連のリストには、太平洋の島々、ハワイ、ポリネシア、インド洋にも広く見られるとの記録があります。こうした広がりは長い栽培と導入の歴史を反映したもので、アジアの原産地とは区別して考える必要があり、これをもってフランス本土で侵略的な植物とみなす根拠にもなりません。1 6
栽培で求められる条件は、着生という暮らし方から説明できます。ロゼットは高い湿度、林冠を通したやわらかな光、そして水が滞ることのない通気のよい足場に適応しています。鉢植えなら、水はけのよい有機質の用土と湿った空気がこれにあたり、日なたを好む植物とはまったく違う性質です。高温多湿の日本の夏はこの植物の好みに近い一方、耐寒性の目安はUSDAゾーン11〜12なので、関東などでは冬は室内で管理するのが現実的です。3 7
生活環と繁殖
シダ植物である Asplenium nidus は、花も種子もつくりません。一般的な園芸データの中には「花」や「果実」の項目を載せているものもありますが、正確な記述のためには除外すべき情報です。繁殖をになうのは胞子で、胞子をつける葉の裏の細長い胞子嚢群に収まっています。5 6
生活環はシダの典型的な流れをたどります。胞子が発芽して小さな前葉体となり、その上に雄と雌の器官ができます。水のある状態で受精が起こると、そこから葉をもつ新しいシダが育ちます。この過程には途切れない湿り気が必要で、時間もかかるため、家庭で胞子から殖やす人はあまり多くありません。5 7
栽培下でいちばん簡単なのは栄養繁殖で、生育期に根のよく張った株を株分けします。胞子まきも、時間がかかり湿度の管理にも手間がかかることを承知のうえなら可能ですが、株分けほど早く結果が出ることはまれです。どちらの方法でも、ロゼットの中心を土に埋めないようにし、根づくまで暖かく湿った環境を保ちます。3 6
利用と注意点
使われ方は観賞が中心です。鉢植えや大きめの吊り鉢、暖房のあるサンルーム、湿度の高い温室、霜の降りない日陰のテラス、あるいは浴室のように明るく湿った部屋に向いています。参照した資料には信頼できる食用の根拠がないため、食用や薬用についての記述はここでは扱いません。3 7
動物については、ASPCA が bird's nest fern、つまり Asplenium nidus を、猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。ペットのいる家庭には心強い情報ですが、無毒であることは食べられることを意味しない点は押さえておきたいところです。8 6
家庭で気をつけたいのは、毒性よりも育て方のほうです。ロゼットの中心に水を注ぐと芯腐れを招きやすく、空気が乾きすぎると葉の縁が茶色くなります。冷暖房で乾きがちな室内では、とくに注意が必要です。動物が大量に口にしたり、様子がおかしかったりするときは、必ず獣医師に相談してください。似た名前で売られている別の植物では、毒性が異なる場合もあります。8 3
品種・混同しやすい種・近縁の植物
流通名の違いは、おもに葉の質感にあらわれます。'Crispy Wave' は葉が強く波打ち縮れたタイプ、'Osaka' と 'Fimbriatum' は幅広で、縁が房状に裂けたり切れ込んだりするタイプを指します。いずれも園芸上の呼び名であり、別種ではありません。6 3
とくに取り違えやすいのは、同じ「鳥の巣」型の近縁種です。
- Asplenium antiquum:葉がやや硬く立ち気味で、同じ名前で売られていることが多い
- Asplenium australasicum:オセアニアの近縁種で、中肋が盛り上がる
- Nephrolepis exaltata などの羽状のシダ:葉が細かく分かれ、A. nidus の一枚葉とは似ていない
切れ込みのない葉のロゼット、巣のような中心、濃い褐色の中肋、細長い胞子嚢群。この四つが、「鳥の巣シダ」として売られている株が本当に Asplenium nidus かどうかを確かめる、もっとも確かな手がかりです。4 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Asplenium nidus L.
- International Plant Names Index, Asplenium nidus L.
- Royal Horticultural Society, Asplenium nidus, bird's nest fern
- Missouri Botanical Garden, Asplenium nidus
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox, Asplenium nidus
- Encyclopaedia Britannica, spleenwort (Asplenium)
- Plants For A Future, Asplenium nidus
- ASPCA, Bird's Nest Fern (Asplenium nidus) toxicity entry
よくある質問
シマオオタニワタリは猫にとって有毒ですか?
ASPCA は Asplenium nidus を bird's nest fern の名で、猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。とはいえ食べものではないため、たくさん口にしたときや、いつもと違う様子が見られたときは注意してください。
葉の裏に茶色い線が見えるのはなぜですか?
健康な葉であれば、たいていは胞子をつくる器官である胞子嚢群(ソーラス)です。中央の葉脈に沿って斜めに並びます。カイガラムシの場合は並び方が不規則で、動いたり、べたついたりします。
花や種子はできますか?
いいえ。Asplenium nidus はシダ植物なので、花は咲かず、種子もつくりません。胞子と、株分けによる栄養繁殖で殖えます。
水はどこに与えればよいですか?
株の周りの用土に与え、ロゼットの中心には直接かけないようにします。中心にたまった水は芯腐れの原因になり、室内栽培でもっとも多いトラブルのひとつです。
Asplenium nidus の原産地はどこですか?
POWO では、自生域を東南アジアの熱帯からクイーンズランド州北東部にかけての高温多湿の地域としています。太平洋の島々やインド洋にも広がっています。
どうやって殖やせばよいですか?
室内でもっとも手軽なのは、根の張った株を分ける株分けです。胞子からも殖やせますが、時間がかかり、親株と同じ姿になるとは限らず、常に高い湿度を保つ必要があります。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。




