ツキカゲ (Echeveria elegans, Rose 1905)

ツキカゲ(Echeveria elegans Rose, 1905)は、英語圏では Mexican snowball の名でも流通する、ベンケイソウ科の小型の多年生多肉植物です。この植物を理解する手がかりは、低く詰まったロゼットにあります。肉厚で白い粉を帯び、ろうのような質感の葉が水を蓄え、年を重ねると子株を出して群生します。

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学名Echeveria elegans
属Echeveria
科Crassulaceae
目Saxifragales

エケベリア・エレガンス, Mexican snowball, Mexican gem, White Mexican rose と Pearl echeveria

基本情報
毒性
ASPCA によれば猫・犬・馬に無毒注意 : 人(子どもを含む) · 無毒 : 猫, 犬 と 馬
管理の難易度
低い
植物タイプ
多肉植物 · ロゼット
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
メキシコ北東部ベラクルス州メキシコ湾岸中部
自生環境
乾燥した亜熱帯の、水はけのきわめてよい環境。岩場や斜面、明るい場所での鉢栽培
季節性
開花期
冬春
生育
生活環
多年草
休眠
休眠しない
生育速度
3/10
成熟までの期間
ロゼットが成熟し、強い光を受けてから開花する
樹冠径
8–15 cm
増やし方
ひこばえ分け, 挿し木, 種子
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
背の低い鉢なら強いが、用土が湿りすぎていると弱い
湿度
30–50 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌pH
土壌タイプ
サボテン用土, 水はけのよい鉱物質土, 非常に水はけのよい土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

一日を通して強い直射日光が当たる場所に置きます。

光について
やわらかな直射日光、またはごく明るい光
室内
明るい窓台, 乾燥したサンルーム, 温室
屋外
霜の当たらないロックガーデン, 風よけのあるバルコニー, 乾燥したサンルーム
鉢
テラコッタ鉢, コンテナ, 底穴のある鉢
形態
高さ5–10 cm株張り10–50 cm
葉
青緑
花
ピンク黄大きさ1–2.5 cm
果実
茶
樹形・草姿
ツキカゲ(Echeveria elegans):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
緑

世界の分布

Echeveria elegans の自生域はメキシコです。POWO はメキシコ北東部からベラクルス州にかけてとまとめ、Mexico Gulf、Mexico Northeast、Mexico Southwest の各地域を挙げています。園芸系の資料では単に「メキシコ」と簡略化されることがよくあります。

  • 原産3
  • メキシコ北東部
  • ベラクルス州
  • メキシコ湾岸中部

六角形:資料に基づく地域。緑の点:原産分布域。分布状況の出典 POWO(キュー王立植物園).

基本情報

ツキカゲ(Echeveria elegans)は、ベンケイソウ科エケベリア属の多年生多肉植物です。受理名は Echeveria elegans Rose で、1905年に North American Flora で発表されました。日本では和名のほか学名のエケベリア・エレガンスでも呼ばれますが、英語圏の園芸流通では Mexican snowball、Mexican gem、White Mexican rose、Pearl echeveria といった名前が使われています。1 2

英名の多くは株の姿を言い表したものです。「rose」とあっても植物学上のバラではなく、多肉質の葉が重なったロゼットにすぎません。シルエットを覚えるには便利なたとえですが、クラッスラ、セダム、一部のカランコエと同じベンケイソウ科に属することを見落とさないよう注意が必要です。3

見分け方

低く詰まった、幾何学的ともいえるロゼットが最大の特徴です。葉は単葉で縁に切れ込みがなく、厚くなめらかで毛がなく、先に向かって幅が広がります。表面は白い粉(ブルーム)に覆われ、青緑、銀緑、あるいは白っぽく見えます。よく育った株ではこの粉が葉を守り、色合いもつくっています。指でこすると跡が長く残ります。4 5

葉は短く、長さは2.5〜7.5 cmほどが一般的です。株の高さが10 cmを超えることはまれですが、古い群生株は脇から出る子株によって幅50 cmほどまで広がることがあります。高さが低く横に広がるこの対比が、直立する多肉植物とはまったく違う、クッション状の草姿を生んでいます。4 5

花はロゼットの上に伸びる細い花茎につき、花茎はときに弓なりに曲がります。花は筒形、または小さなちょうちん形で、ピンクからオレンジ色、先端は黄色です。園芸系の資料では、主に冬の終わりから春にかけて咲くとされ、気候や栽培条件によっては夏まで続くこともあります。5 4

知っておきたい分類

拠りどころになるのは二名法の Echeveria elegans Rose です。POWO はこれを受理名とし、Echeveria perelegans A.Berger を同タイプ異名(ホモタイプシノニム)として挙げています。IPNI は1905年の発表と、命名上の識別子 urn:lsid:ipni.org:names:86934-2 を確認しています。1 2

種より下の階級になると扱いが難しくなります。POWO は var. elegans、var. hernandonis、var. tuxpanensis など、いくつかの種内分類群を認めています。園芸データベースや集約サイトでは、Echeveria potosina、Echeveria albicans、Echeveria simulans の名が別の文脈で登場することもあります。専門家でない読者は、種の受理名、分類学の資料が認める植物学上の変種、そして商業上のラベルの三つを分けて考えると混乱を避けられます。1 6

エケベリア属そのものも混同を招きやすい属です。「エケベリア」として売られる株の多くは交配種で、hens and chicks という通称は Sempervivum にも使われています。締まったロゼットだけでは決め手にならず、種名、葉の形、花、ラベルの出どころをあわせて確かめる必要があります。3

生育環境と分布

分類学の資料は Echeveria elegans の自生地をメキシコとしています。POWO は自生域をメキシコ北東部からベラクルス州にかけてとまとめ、Mexico Gulf、Mexico Northeast、Mexico Southwest の各地域を挙げています。Trefle や NC State も、メキシコ北東部からベラクルス州方面に由来するという見方をとっています。1 4

この生い立ちが株の形を説明しています。Echeveria elegans は湿った林床の植物ではなく、水はけのよい亜熱帯の環境に生える小さな多肉植物で、強い光、無機質の土、乾いた時期に適応しています。耐寒性の目安は USDA ゾーン9〜11で、関東の平野部は下限に近い条件です。日本では鉢や浅い器での栽培が中心となり、梅雨や夏の蒸れを避けやすい、雨の当たらない明るい場所が向いています。5 4

参照した資料のなかに、本種を侵略的な植物とするものは見当たりません。知られている範囲では、観賞用の栽培植物として扱われています。

生活環・開花・繁殖

株はロゼットのまま、ゆっくりと大きくなります。年を重ねると親株の根元に子株を出し、この小さなロゼットが hens and chicks という通称の由来になっています。成熟した群生株は一つの大きなロゼットではなく、隣り合う多数のロゼットの集まりです。4

花が咲くのは、株が十分な養分を蓄えてからです。花茎には先端の黄色い小さなピンクの花がつき、冬の終わりから春に咲くことが多くなります。開花を、光不足で間延びしたロゼットと取り違えないよう注意してください。花茎はロゼットから伸びてつぼみをつけますが、徒長した株では茎そのものが伸び、葉の間隔が開きます。5

繁殖は主に子株の株分けか葉挿しで行います。どちらも切り口を乾かして癒合させることが基本です。切ったばかりの多肉質の組織は、乾かしてから水はけのきわめてよい用土に置きます。水に浸けたり、湿った培養土に置いたりすると、株を守っているはずの肉厚な貯水組織が腐敗の起点になってしまいます。4 5

利用と注意点

用途は観賞が中心で、明るい場所の鉢、窓辺、乾いたサンルーム、霜の降りないロックガーデン、多肉植物の寄せ植えなどに使われます。背丈が低く、葉が整ったロゼットをつくり、光によって粉をまとった葉の色が変わるため、造形的な魅力の強い植物です。5 4

ペットに関しては安心できる情報ですが、正確に受け止めることが大切です。ASPCA は Echeveria elegans を犬、猫、馬に対して無毒と分類しています。ただし、人が食べられる植物だという意味でも、大量に口にしてよいという意味でもありません。食用に関する信頼できる資料はなく、Echeveria elegans はあくまで食用にしない観賞植物として扱ってください。7

栽培で実際に多いトラブルは毒性ではなく、物理的な問題や病害虫です。水のやりすぎ、固く締まった用土、冷たく湿った環境、葉のすき間に入り込むカイガラムシ、急な直射日光による葉焼けなどが挙げられます。高温多湿の日本の夏には、とくに蒸れに気をつけたいところです。こうした点は育て方の分野に属しますが、この植物が水を蓄える構造をもつ理由を理解する手がかりにもなります。4 5

品種・購入時の確認・間違えやすい植物

Alba、Hyaliana、Raspberry、Super Clone は、NC State が挙げている園芸上の名前です。いずれも選抜系統や栽培型を指すもので、独立した種ではありません。園芸店のラベルは、確認できる植物学上の階級と結びつかないかぎり、商業上の表示として読むのが無難です。4

もっともよくある混同は、ほかのロゼット形の多肉植物との取り違えです。Sempervivum は hens and chicks という通称を共有しますが、多くはより耐寒性が高く、Echeveria とまったく同じ性質ではありません。ほかのエケベリアや交配種、たとえば E. secunda や E. derenbergii の系統、色の名前で売られる交配種なども、若い段階では E. elegans によく似ることがあります。3 6

購入時の目安はシンプルです。ロゼットが低く締まっていること、葉がなめらかで粉をまとっていること、用土が湿りすぎていないこと、株の中心にカイガラムシがいないこと、そしてラベルに単なる「多肉植物ミックス」ではなく Echeveria elegans と明記されていることを確かめてください。殖やすなら、傷んで柔らかくなった葉よりも、健全なロゼットや子株を選ぶほうが確実です。4 5

主な参考文献

よくある質問

ツキカゲは猫や犬に有毒ですか?

ASPCA は Echeveria elegans を犬、猫、馬に対して無毒と分類しています。とはいえ食べられる植物になるわけではなく、観賞植物を大量に口にした場合は様子を見る必要があります。

ロゼットが間延びしてしまうのはなぜですか?

ロゼットが締まりを失うのは、多くの場合もっと光を求めているしるしです。日当たりは少しずつ強めてください。日陰で育った株を急に直射日光に当てると、葉焼けを起こすことがあります。

ツキカゲの原産地はどこですか?

分類学の資料では、メキシコ、とくに北東部からベラクルス州にかけてとされています。園芸系の資料はこれを「メキシコ」とまとめることが多く、誤りではありませんが精度は落ちます。

Mexican snowball と hens and chicks は同じ植物ですか?

どちらも Echeveria elegans を指すことがありますが、hens and chicks はほかの多肉植物にも使われる通称です。確かな目印になるのは学名です。

ツキカゲは室内でも花を咲かせますか?

十分に明るい場所で育った成熟株なら開花は可能ですが、蓄えた養分、季節、乾かしぎみの休息期に左右されます。花はふつうピンク色で、先端が黄色くなります。

似ている植物

植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。