カシワバゴムノキ (Ficus lyrata, Warb. 1894)

カシワバゴムノキ(Ficus lyrata)は、アフリカ熱帯域の西部から中西部にかけての湿潤な森林を原産とする、クワ科の半着生の樹木です。革質で大きく、竪琴やバイオリンを思わせる形の葉と、傷口からにじむ刺激性の白い乳液が見分ける手がかりになります。

続きを読む
学名Ficus lyrata
属Ficus
科Moraceae
目Rosales

フィカス・リラタ, Ficus lyrata, Fiddle-leaf fig と Banjo fig

基本情報
毒性
乳液に刺激があり、猫と犬には軽い毒性注意 : 人 · 有毒 : 猫 と 犬 · 要確認 : 馬
管理の難易度
中程度
植物タイプ
果樹 · 室内植物
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
カメルーンガボンガーナギニアコートジボワールリベリアナイジェリアシエラレオネトーゴ
自生環境
熱帯の湿潤林。半着生の樹木で、明るい場所なら鉢植えでも育つ
季節性
開花期
春夏
生育
生活環
多年草
休眠
休眠しない
生育速度
6/10
成熟までの期間
室内で花嚢がつくことはまれ。熱帯では成木になる
増やし方
取り木, 挿し木
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
背の高い鉢植えは風に弱い
湿度
45–70 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
いいえ
用土
土壌pH
土壌タイプ
水はけのよい培養土, 弱酸性〜中性の水はけのよい土, 肥沃な培養土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

朝か夕方を中心に、1日数時間の直射日光に当てます。

光について
明るい間接光、または半日陰
室内
リビング, オフィス, 明るい部屋
窓からの距離
とても明るい窓から約50 cm
屋外
風よけのあるバルコニー, サンルーム, 地植え
鉢
底穴のある重量鉢, 大型コンテナ
形態
高さ2–30 m株張り3 m
葉
緑
花
緑
果実
緑赤白
樹形・草姿
カシワバゴムノキ(Ficus lyrata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
茶緑

世界の分布

POWO と WCVP が認める自生域は、アフリカ熱帯域の西部から中西部です。この範囲の外での記録は、主に栽培、導入、各地の園芸上の観察によるものです。

  • 原産9
  • カメルーン
  • ガボン
  • ガーナ
  • ギニア
  • コートジボワール
  • リベリア
  • ナイジェリア
  • シエラレオネ
  • トーゴ

六角形:資料に基づく地域。緑の点:原産分布域。分布状況の出典 POWO(キュー王立植物園).

基本情報

カシワバゴムノキの学名は Ficus lyrata Warb. で、1894年に発表されたクワ科の種です。POWO と WCVP はこれを受理名として扱い、IPNI は原記載を Botanische Jahrbücher für Systematik 20:172 としています。1 2

和名は葉の形をカシワにたとえたもので、食用とは関係がありません。Ficus lyrata は食用のイチジクと同じFicus属に属しますが、Ficus carica で親しまれる果実は、この観葉植物の見どころではありません。英名の fiddle-leaf fig、fiddleleaf fig、banjo fig は、いずれも葉身を弦楽器に見立てた呼び名です。3 4

見分け方

いちばんの決め手は葉です。単葉で互生し、大きく革質の緑の葉には太い葉脈がくっきり浮き出て、縁は全縁ながら波打ちます。形は倒卵形から竪琴形まで幅があり、成葉では中ほどがくびれて先端側が広がることがあります。種小名 lyrata(竪琴形の)もこの姿に由来します。4

鉢物として売られる株は、まっすぐな小高木に仕立てられていることが多いものの、植物学上は半着生の樹木とされています。湿潤な自生地では、育つ過程でほかの植物に寄りかかることがあるわけです。室内ではこの性質はつる状の姿には現れず、硬い幹として立ち上がり、ときに支柱で支えられます。1

花に観賞価値はありません。イチジク属の小さな花は、ふつう「実」と呼ばれる球形の花嚢の内側に閉じ込められています。NC State によると、花嚢は淡い斑点のある緑色で、熟すと赤くなりますが、室内の鉢植えで目にすることはまれです。4

知っておきたい分類

拠りどころになるのは二名法の Ficus lyrata Warb. です。GBIF の分類体系では、植物界、維管束植物門、モクレン綱、バラ目、クワ科、Ficus属に位置づけられます。イチジク連(Ficeae)に属することを押さえておくと、花嚢やイチジクコバチによる受粉がこの仲間に固有の話題だとわかります。3

似た学名が別の植物を指すことがあるため、シノニムは出典とともに扱う必要があります。WCVP は Ficus pandurata Sander を Ficus lyrata の非合法名のシノニムとし、GBIF はさらに Ficus jollyana A.Chev. をシノニムに加えています。一方で、園芸やアジアの文脈でいう Ficus pandurata は混乱のもとになりやすく、受理名と命名者名を優先して確認するのが確実です。1 3

購入時によくある取り違えは、ラテン語のシノニムよりも株の大きさにまつわるものです。NC State が挙げる Bambino、Compacta、Little Sunshine は、よりコンパクトな姿を示す園芸名で、別の種を意味するわけではありません。4

生育環境と分布

POWO は、アフリカ熱帯域の西部から中西部、熱帯湿潤バイオームを自生域としています。NC State はさらに、カメルーン、ガボン、ガーナ、ギニア、コートジボワール、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ、トーゴなどを含む範囲を示しています。両者が一致していることから、アフリカ熱帯域全体ではなく、アフリカの湿潤林の種と位置づけるのが妥当です。1 4

栽培植物としては世界中に広まっています。アフリカ以外での導入や栽培の記録は、そのまま侵入を意味するものではなく、多くは暖地に植えられた観賞樹か、温帯で室内に置かれた鉢植えの記録です。IFAS はフロリダ向けの資料で非侵略的と評価していますが、これはあくまで地域ごとの判断で、ほかの土地の評価に代わるものではありません。5

室内栽培の難しさも、こうした生態から説明できます。大きな葉には、明るくやわらいだ光、湿ったあとにきちんと水の抜ける用土、そして安定した環境が欠かせません。日本の住まいでは、梅雨どきの過湿や冷暖房による急な温度変化が負担になりやすい点に気を配ると安心です。室内でも生き続けることはできますが、文献に描かれる森の大木にまで育つことはありません。4 6

生活環・利用・注意点

室内で目に見える生長は、ほぼ栄養生長に限られます。根が張り、幹が伸び、大きな葉を次々と展開し、剪定するか光が十分に当たれば枝分かれします。開花や花嚢の形成はこの属では当たり前のことですが、鉢植えではまれなので、実がなることを期待しないほうがよいでしょう。4 5

主な用途は観賞です。鉢植えでは、明るいリビングやサンルーム、エントランスを引き締めるシンボルツリーとして使われます。屋外での栽培は USDA ゾーン10〜12、つまり冷え込みのはっきりしない気候に向いており、関東など冬に寒さが来る地域では室内の鉢植えとして育てるのが現実的です。POWO には食用や薬用の記録も一般的な用途として載っていますが、参照した文献には推奨できるほどの詳しい情報はありません。1 5

おもな危険は乳液と誤食です。ASPCA はカシワバゴムノキを犬と猫に対して軽い毒性があるとし、消化器への刺激や樹液による皮膚の炎症が起こりうるとしています。Pet Poison Helpline もイチジク属を同様に扱い、樹液の刺激性、摂取後の口や消化管の炎症、接触による皮膚の炎症を挙げています。7 8

参照した ASPCA のデータには Ficus lyrata そのものの項目はありませんが、Ficus sp. と Ficus benjamina を猫、犬、馬に有毒としています。念のため猫と犬は要注意として扱い、馬についてはこの種での確認がとれていないものとしています。8

品種・混同しやすい種・購入時の注意

Bambino、Compacta、Little Sunshine、Variegata は、まず園芸流通上の呼び名です。はじめの三つはコンパクトな株であることを示し、Variegata は斑入りを意味します。どのラベルも、実物を見ることの代わりにはなりません。実際の大きさ、節間の長さ、勢い、斑の安定性、根の状態のほうが、札の名前よりも頼りになります。4

取り違えやすいのは、主にほかの室内向けのイチジク属です。

  • Ficus elastica(インドゴムノキ):葉は楕円形で厚く、形がそろう
  • Ficus benjamina(シダレガジュマル):葉が小さく、枝が垂れる
  • Ficus carica(イチジク):食用の果実を目的に栽培される
  • 大型のフィロデンドロンやタウマトフィルムの一部:イチジク属の乳液も花嚢ももたない

カシワバゴムノキかどうかを確かめるには、学名、竪琴形の葉、浮き出た葉脈、小高木の樹形、切り口ににじむ白い乳液を合わせて見る必要があります。大きな緑の葉というだけでは決め手になりません。3 4

主な参考文献

よくある質問

カシワバゴムノキは本当にイチジクの仲間ですか?

はい。Ficus lyrata は食用のイチジクと同じイチジク属に属します。ただし小さな花嚢は、Ficus carica の食用の果実とは別物です。

葉が茶色くなるのはなぜですか?

よくある原因は、強すぎる直射日光、乾きすぎた空気、水浸しの用土、環境の急な変化です。葉の面積が大きいぶん、こうしたストレスが目に見えやすくなります。

Ficus lyrata は猫や犬に有毒ですか?

参照した獣医学系の情報源は、カシワバゴムノキまたはイチジク属を、犬と猫に対して刺激性から軽い毒性をもつものと分類しています。主な経路は摂取と乳液への接触です。種を特定した情報源がないため、この分類は馬には広げていません。

Ficus lyrata はフランスで侵略的になっていますか?

採用した文献には、フランス本土での侵入を記録したものはありません。IFAS はフロリダで非侵略的とみなしていますが、ほかの地域での評価に代わるものではありません。

Ficus elastica とはどう違いますか?

Ficus elastica の葉は楕円形で厚く、形がそろっていることが多いのに対し、Ficus lyrata の葉は竪琴形からバイオリン形で、縁が波打ち、葉脈がくっきり浮き出ます。

似ている植物

植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。