アイビー (Hedera helix, L. 1753)

アイビー(Hedera helix L., 1753)は、ヨーロッパから西アジアのイランにかけてを原産とするウコギ科の常緑の木本性つる植物です。はじめは地面を這うグラウンドカバーとして広がり、やがて付着根で樹幹や壁、斜面をよじ登ります。光をよく受ける成熟した枝になると、秋に花をつけ、冬に黒い実を実らせます。

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学名Hedera helix
属Hedera
科Araliaceae
目Apiales

ヘデラ・ヘリックス, セイヨウキヅタ, English ivy, Common ivy と European ivy

基本情報
毒性
口にすると有毒。皮膚への刺激のおそれあり注意 : 人(子どもを含む) · 有毒 : 猫, 犬 と 馬
管理の難易度
中程度
植物タイプ
木質つる植物
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
フランス本土イギリスドイツスペイントルコ
自生環境
林縁、森林、生け垣、斜面、壁、樹木、涼しい日陰の地面。グラウンドカバー、壁面緑化、鉢植えでも栽培される
環境への効果
遅い時期の花蜜と花粉鳥の冬の餌になる実一年中の隠れ場所
季節性
開花期
秋
収穫期
冬
生育
生活環
多年草
休眠
休眠しない
生育速度
8/10
成熟までの期間
光を継続して受けられるようになってから花枝が出る
増やし方
挿し木, 取り木
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
しっかりした支えがあれば強い。樹木や外壁では重みに注意
湿度
40–80 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌pH
土壌タイプ
肥沃な土, 水はけのよい土, 水はけのよい培養土
塩類土壌
耐えられる
光と置き場所
日照条件

間接光の当たる場所か、日陰になる部屋に置きます。

光について
濃い日陰から日なたまで。花つきは明るい場所のほうがよい
室内
明るい部屋, サンルーム
屋外
日陰のパティオ, 花壇, 地植え
鉢
コンテナ, 吊り鉢, 底穴のある重量鉢
形態
高さ0.15–30 m株張り4 m
葉
緑白黄
花
緑黄
果実
黒
樹形・草姿
アイビー(Hedera helix):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
緑茶

世界の分布

POWO/WCVP によると、Hedera helix の自生域はヨーロッパ、地中海沿岸、西アジアのイランまでです。フランス本土では在来種とされ、外来の侵略的な種には含まれません。侵略的とされる事例は、主に原産地以外の地域に関するものです。

  • 原産5
  • 移入2
  • 侵略的1
  • フランス本土
  • イギリス
  • ドイツ
  • スペイン
  • トルコ
  • モロッコ
  • ニュージーランド
  • オレゴン州

六角形:資料に基づく地域。緑の点:原産分布域。分布状況の出典 POWO(キュー王立植物園).

基本情報

アイビーの学名は Hedera helix L. で、ウコギ科キヅタ属の受理された種です。POWO/WCVP はこの名を1753年の Species Plantarum にさかのぼるものとし、温帯性のつる植物として、地中海沿岸と温帯ヨーロッパから西アジアにかけてを自生域に挙げています。1 2

日本の園芸店では、アイビーのほか学名をそのまま読んだヘデラの名でも売られています。名前に「アイビー」とつく植物はほかにもあり、シソ科のグレコマ(Glechoma hederacea)や、ときに devil's ivy と呼ばれるポトスは別の植物です。3 4

参照した資料では、Hedera helix はフランス本土の在来種とされ、外来の侵略的な種には位置づけられていません。とはいえ、原産地の外、とくに北アメリカやオセアニアの一部では侵略的にふるまうことが知られています。1 5

見分け方

地面を低く覆うこともあれば、自力で高くよじ登ることもある、常緑の木本性つる植物です。若い茎からは付着根と呼ばれる短い不定根が出て、幹や壁、柱、岩に張りつきます。張りついても、植物に寄生しているわけではありません。6 7

葉の形は枝の齢によって変わります。幼い茎の葉は互生し、革質で光沢があり、3〜5裂の掌状になることが多いです。光をよく受ける成熟した枝は低木状になって付着根を出さず、切れ込みの少ない卵形からひし形の葉をつけます。3 7

花は小さな黄緑色で、丸い散形花序にまとまります。おもに夏の終わりから秋にかけて成熟した枝に咲き、冬に黒い実を結びます。同定には、葉を1枚だけ見るよりも、切れ込みのある幼葉、切れ込みの少ない成葉、黒い実という組み合わせを確かめるほうが確実です。6 3

知っておきたい分類

現在用いられている学名は Hedera helix L. です。分類データベースには、Hedera communis Gray、Hedera poetica Salisb.、Hedera poetarum Bertol. などの同型または歴史的なシノニムが挙がっています。これらは古い植物誌を読むための名前で、庭でふつうに見る株を区別するものではありません。1 4

混同に気をつけたいのは近縁のキヅタ属です。Hedera hibernica や Hedera colchica は同じような用途で売られたり植えられたりしますが、H. helix の単純なシノニムではありません。園芸品種名や園芸上の型の名前は、正確な学名のラベルと結びつけて扱う必要があります。6

POWO は種内の品種として、Hedera helix f. helix と Hedera helix f. poetarum の2つも認めています。一般の読者にとっては、これらを園芸店でいう「品種」と読み替えないほうが無難です。鉢物として流通しているのは、ほとんどが園芸品種です。1

生育環境と分布

POWO の示す自生域はヨーロッパと西アジアで、フランスもそこに含まれます。Trefle のデータにはフランス語の一般名が多数記録され、参照した分布データでもフランスでの自生が確認されています。1 4

自生域では、森林、林縁、生け垣、斜面、古い壁に生えます。CNPF は半日陰から日陰を好む常緑のつる植物と説明し、光を十分に受けられるようになってはじめて本格的に花と実をつけるとしています。暗い場所で地面を覆う株が葉ばかりになりやすいのは、このためです。8

原産地の外では、同じ育ち方が地域の生態系にとってのリスクになります。Oregon State は、実の散布によって自然環境へ逸出する例を報告し、オレゴン州が H. helix と H. hibernica を検疫対象にしていることにも触れています。フランスでは在来種、持ち込まれた地域では侵略的になりうる、というように地域ごとに分けて考える必要があります。5

生活環・利用・管理

目に見える生活はたいてい、地面を這う段階から始まります。若い茎は地表を覆い、節から根を下ろします。垂直な支えに出会うと付着根でよじ登り、数メートルの高さに達します。RHS は園芸上の最終的な高さを8〜12 mとしていますが、林業資料や各地の形質データでは、条件のよい支えがあれば30 m近くに達するとされています。6 8

主な用途は観賞と生態的な役割です。日陰のグラウンドカバー、壁やフェンスの緑化、法面の被覆に使われ、野生生物の隠れ場所や餌にもなります。RHS は送粉者のための植物に数えており、BWARS はツタハナバチ(Colletes hederae)が Hedera helix を訪れると記録しています。冬の実は鳥の餌になりますが、人は食べられません。6 9 10

樹木に対して、アイビーは寄生植物ではありません。自分の根を土に張り、付着根はあくまで体を固定するためのものです。それでも、若い木、弱った木、細い枝、すでに傷んだ樹冠では、重さと日陰が状態を悪化させる要因になりうるため、管理は欠かせません。8

壁については、健全な下地と傷みやすい下地を分けて考えます。Historic England の歴史的な壁に関する報告書は、この問題は一概にはいえず、石積みの状態によってアイビーが保護にも劣化にも働くと説明しています。実際には、ひびの入ったモルタル、弱い塗り壁、雨どい、屋根には這わせないようにし、定期的に刈り込みます。11 6

耐寒性の目安はUSDAゾーン4〜9で、関東の平地を含む本州の多くの地域はこの範囲に収まります。

毒性と注意点

ASPCA は English ivy(Hedera helix)を犬、猫、馬に対して有毒と分類しています。有毒成分として挙げられているのはヘデラゲニンを含むトリテルペンサポニン類で、嘔吐、腹痛、よだれ、下痢を起こします。ASPCA は、実よりも葉のほうが毒性が強いとも述べています。10

人にとっても注意は必要です。NC State は、葉と実が人に有毒で重症度は中程度とし、口にしたあとに消化器や神経の症状が出ることがあるほか、樹液やアレルゲンによる接触皮膚炎も起こりうるとしています。RHS も "harmful if eaten" と記し、扱うときは手袋などで保護するよう勧めています。7 6

こうした理由から、ここでは食用としての利用を紹介せず、具体的な薬用の助言も行いません。一部の分類データベースや伝承に薬用の記録はありますが、推奨に足る用量、抽出物、調製法、臨床的な裏づけは示されていません。1

品種・混同しやすい種・近縁の植物

園芸の世界には Hedera helix の品種が数多くあります。参照した RHS のデータでは、'Arborescens'、'Glacier'、'Goldchild'、'Needlepoint'、'Ivalace'、'Teardrop'、'Ovata' などが受理名とされています。斑入りの株は実物を見て判断するのが確実です。光が弱かったり緑色の枝が出たりすると、鉢全体の印象が変わってしまうことがあります。6

'Arborescens' はやや特殊で、よじ登らない低木状の成熟型にあたります。RHS によれば、成熟した枝から取った挿し穂は、付着根を出さない低木状の株に育つことがあります。遺伝的にはほとんど同じアイビーどうしで、樹形が大きく異なることがあるのはこのためです。6

取り違えは3つに分けられます。H. hibernica や H. colchica などほかのキヅタ属、グレコマ(Glechoma hederacea)のように「アイビー」と呼ばれてもキヅタ属ではない植物、そしてポトスのような室内向けのつる植物です。学名、ウコギ科であること、付着根、秋の散形花序を手がかりにすれば、正しい同定にたどり着けます。1 3

主な参考文献

よくある質問

アイビーには毒性がありますか?

はい。ASPCA は Hedera helix を犬、猫、馬に対して有毒と分類しています。NC State と RHS も、人が口にした場合や皮膚に触れた場合のリスクを指摘しています。

アイビーは樹木を枯らしますか?

樹木に寄生するわけではなく、付着根は主に体を固定するためのものです。ただし、若い木や弱った木、樹冠にかかる重みには注意が必要です。

アイビーは壁を傷めますか?

健全な壁では、歴史的建造物の資料が保護的な効果を挙げることもあります。一方、ひびの入ったモルタルや弱い下地では、付着根が既存の傷みに入り込み、広げてしまうことがあります。

アイビーに花が咲かないのはなぜですか?

花は、光をよく受ける成熟した枝につきます。日陰で地面を覆っている株、強く刈り込まれた株、まだ幼い段階の株は、葉だけの状態が続くことがあります。

アイビーは侵略的な植物ですか?

フランス本土では、外来の侵略的な種ではなく在来種とされています。ただし、オレゴン州のように持ち込まれた地域では侵略的になることがあります。

アイビーは室内で育てられますか?

はい。とくにコンパクトな園芸品種を鉢やハンギングで育てるのが向いています。ただし、乾いた暖気の当たらない、涼しく明るい環境を好み、定期的な剪定も必要です。

似ている植物

植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。