ホソムギ (Lolium perenne, )
ホソムギ(Lolium perenne L., 1753)は株立ちになるイネ科の多年草です。マカロネシア、北アフリカ、ヨーロッパからシベリア、ヒマラヤに自生し、世界の温帯に広く帰化しています。発芽の速い芝草や栄養価の高い牧草として利用されます。一部の市販品種には、虫から植物を守る一方、放牧家畜に神経症状を起こす内生菌が共生しています。
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世界の分布
自生域はマカロネシア、北アフリカ、ヨーロッパからシベリア、ヒマラヤまで広がります。牧草価値が高く発芽も速いため、世界で特に広くまかれるイネ科植物の一つとなり、原産地外を含む温帯各地に広く帰化しています。
基本情報
ホソムギ (Lolium perenne L.)は、イネ科イチゴツナギ亜科の株立ちになる多年草です。 カール・フォン・リンネ が1753年の『Species Plantarum』で記載し、Plants of the World Onlineはこの二名法学名を受容名としています。 1 2
属名Loliumはラテン語でドクムギ類を指し、種小名perenneは「一年を通して続く」を意味するperennisに由来します。これは多年生であることを示し、穀物に混入して問題となる有毒な一年草ドクムギ(Lolium temulentum)とは異なります。英名には English ryegrass と Perennial ryegrass があり、フランス語のray-grassも18世紀に英語ray grassから借用された語です。rayはドクムギ類、grassは草を意味します。 3
見分け方
ホソムギの株は通常高さ 20〜60 cm で、毛のない茎の基部にはしばしば暗赤色が差します。出穂した茎は 1 m ほどになることもあります。葉は長さ 10〜15 cm 、幅 2〜5 mm で、平たく、裏面に光沢と竜骨状の稜があるため、穂がなくても見分ける助けになります。膜質の葉舌は 1.5〜2 mm 程度です。 3 4
芽の中の若い葉が折り畳まれている点は、葉が巻かれるネズミムギ(Lolium multiflorum)との重要な違いです。葉身の基部にある葉耳は 短く、未発達か欠けています 。滑らかで溝のある穂軸に小穂が互生し、平たい並びを作ります。各小穂には 2〜10個 、まれに14個までの花があり、 芒はないか8 mm未満 です。 5 4
分類のポイント
1753年公表のLolium perenne L.が、Plants of the World Onlineの受容名です。一部の研究者は分子系統に基づいてウシノケグサ属へ移し、Festuca perennis (L.) Columbus & J.P.Sm.としましたが、これは異名として扱われ、受容名には採用されていません。 1
Lolium属は互いに近縁で交雑しやすい小さな種群です。ホソムギのほかにネズミムギLolium multiflorum Lam.と、両種の自然交雑種Lolium × hybridum Hausskn.が別々に認められます。交雑種にはLolium × boucheanum Kunthという異名もあります。遺伝的に近いため、市販種子では3つの型が明瞭に区別されず混ざっている場合があります。 1
生息地と分布
マカロネシアから北アフリカ、ヨーロッパ、シベリア、ヒマラヤへと自生域が広がります。湿り気があり肥沃な草地、水はけのよい牧草地、道端、芝地に、海岸付近から山地中部まで生育します。耐寒性の目安は USDA 3〜8 で、株は −20 °C まで耐えます。RHSでは厳しい大陸性の冬に対応するH7に分類されます。 3 4
フランスは自生域に含まれ、ホソムギは草地や芝地で特に普通に見られるイネ科植物です。 10
種まき後 7〜10日 という発芽の速さから、世界各地の芝用混合種子に使われます。牧草としての価値も高く、原産地を大きく越えて、温帯各地に広く帰化しています。 9 11
生活環と繁殖
穎果は適した条件なら 7〜10日 で発芽し、多くの芝草より速く芽生えます。幼植物はひげ根を発達させ、基部から分げつして株を大きくします。ナガハグサと違い、横に伸びる地下茎は作らず、株元の分げつだけで広がります。 4 5
原産地などでの花期は 5〜6月 で、直立する穂の互生した小穂から風が花粉を運ぶ 風媒 です。ネズミムギと容易に交雑するため、中間的な形質を持つ自然交雑個体がしばしば生じ、葉や茎だけでは区別が難しくなります。 5 1
利用と注意点
芝生やスポーツ競技場に速く緑を作る芝草と、肥沃な牧草地で家畜が好む栄養価の高い牧草という2つの用途があります。短く刈った芝では踏圧によく耐え、刈り取り後もすぐ再生するため、放牧地の輪換にも向きます。欧州の品種目録には 1,000以上の品種 があり、フランスだけでも牧草用150以上、芝用約90品種が登録されています。 3 9
ホソムギ自体は猫・犬・人に 無毒 です。ただし一部の品種にはEpichloë属の 内生菌 が共生し、 ロリトレムB などの震えを起こすアルカロイドを作ります。放牧中の馬・牛・羊では、震えや運動失調を伴う ライグラススタッガー が報告され、特に高温で乾燥した時期に問題になります。内生菌を持たない エンドファイトフリー 品種はこの危険をなくしますが、虫への抵抗性が下がります。 6 7
花粉症に敏感な人では、代表的なアレルゲンである Lol p 1 と Lol p 5 を介して強い交差反応が生じます。これらは温帯のほかのイネ科植物にも広く共通し、イネ科の中でもよく研究されているアレルゲンです。 8
品種・類似種・近縁種
育種では牧草用品種と、密度や葉色で選ぶ 芝用品種 が主な区分です。さらに内生菌を持たない品種や 四倍体品種 があり、四倍体は通常の二倍体より葉が幅広く、乾燥にも強くなっています。 3
見間違えやすいネズミムギは、芽の中の葉が折り畳まれずに巻かれ、葉耳が 長く茎を抱き 、小穂の芒も明らかに長くなります。自然交雑種Lolium × hybridumもあるため、葉や茎だけでの判別はさらに難しく、育種では純粋な種だけでなく混合として考えることもあります。 5 1
混播した芝では、ホソムギはほかの草が育つまで地面を守る つなぎの芝草 として働きます。すぐに発芽して土壌を安定させ、その間にナガハグサなど定着の遅い草が、より密で長持ちする芝を作ります。
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Lolium perenne L.
- International Plant Names Index, Lolium perenne L.
- Royal Horticultural Society, Lolium perenne(perennial rye grass)
- NC State Extension, Lolium perenneの植物情報
- Cornell Weed Identification, Perennial Ryegrass(Lolium perenne)
- Merck Veterinary Manual, 動物のペレニアルライグラス中毒
- PMC, 内生菌感染Lolium perenneの有毒インドールジテルペン、単離と安定性
- PMC, 花粉アレルギー疾患、花粉と主要アレルゲン
- Plants For A Future, Lolium perenne
- INPN / MNHN, Lolium perenne L., 1753(ホソムギ)
- Tela Botanica / eFlore bdtfx, Lolium perenne L.
よくある質問
ホソムギは猫や犬に有毒ですか?
いいえ。猫・犬・人への毒性は報告されていません。知られている危険は、有毒な内生菌を持つ品種を食べる放牧家畜に関するものです。
ネズミムギとはどう見分けますか?
ホソムギは芽の中の葉が折り畳まれ、葉耳が短く、小穂の芒がないか短いのが特徴です。ネズミムギは若い葉が巻かれ、葉耳が長く茎を抱き、芒も明らかに長くなります。
ライグラススタッガーとは何ですか?
馬・牛・羊に報告される神経症状で、一部の市販品種にすむEpichloë属の内生菌が作るロリトレムBなどの震えを起こすアルカロイドが原因です。
フランスでは侵略的な植物ですか?
いいえ。フランスに自生し、牧草地や芝地で最も普通に見られるイネ科植物の一つで、侵略的な植物という位置づけではありません。
エンドファイトフリーの芝種子があるのはなぜですか?
Epichloë festucaeという内生菌を持たないよう選抜し、放牧家畜の神経症状の危険をなくすためです。一方、一部の葉を食べる虫に対する抵抗性は下がります。
芝草としてナガハグサとどう違いますか?
ホソムギは数日で発芽しますが、横に伸びる地下茎は作りません。ナガハグサは発芽が遅い一方、地下茎によって連続した芝を作るため、両者はよく混播されます。
ホソムギの花粉でアレルギーは起こりますか?
はい。Lol p 1とLol p 5は、イネ科花粉に敏感な人の花粉症を起こす代表的なアレルゲンです。イネ科の種どうしで強い交差反応がみられます。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。






