マドカズラ (Monstera adansonii, )



マドカズラ(Monstera adansonii)は、熱帯アメリカ原産のサトイモ科の半着生つる植物です。室内では、心形で穴の開いた葉を楽しむために育てられます。その葉はホウライショウ(Monstera deliciosa)よりも小さく、しなやかです。
続きを読むMonstera adansonii, Monkey mask, Five holes plant, Swiss cheese vine と Adanson's monstera
葉に直射日光が当たらない、明るい場所に置きます。

世界の分布
Monstera adansonii は熱帯アメリカに分布する受理種です。POWO はこの種を熱帯湿潤バイオームに位置づけ、中央アメリカ、熱帯南アメリカの広い範囲、フランス領ギアナ、小アンティル諸島を含む広い自生域を示しています。プエルトリコは導入地域とされています。
基本情報
マドカズラ(Monstera adansonii Schott)は、サトイモ科モンステラ属の受理種です。学名は1830年にハインリッヒ・ヴィルヘルム・ショットが発表したもので、IPNI は掲載誌を Wiener Zeitschrift für Kunst, Litteratur, Theater und Mode としています。1 2
和名のマドカズラは、葉に開く窓のような穴に由来する呼び名です。園芸店では英名の monkey mask、five holes plant、Swiss cheese vine を見かけることもあります。最後の名前は見た目をよく表していますが、紛らわしさも残ります。より大型の Monstera deliciosa も Swiss cheese plant と呼ばれているからです。3 4
葉に窓状の穴をもつ熱帯のつる植物の一群に属します。室内では M. deliciosa より細身でしなやかに育ち、吊り鉢にも仕立てやすいのが特徴です。支柱を添えると本来の性質がよく表れ、気根が足場を探して伸び、葉も大きくなっていきます。
見分け方
多年生で常緑の半着生つる植物です。茎の節からは気根が出ます。この気根は樹木に寄生するものではなく、体を固定し、より好ましい光のほうへよじ登るための道具です。5 3
葉は単葉で、心形から卵形、中程度から濃い緑色で、光沢のあることが多いです。決め手になるのは葉身の内側に開く穴で、楕円形の窓が主脈の近くに列をなして並び、縁までは届かないことがよくあります。家庭で育てた株の葉は小さめですが、植物学的な記載によれば、熱帯の自生地では成葉がはるかに大きくなることがあります。5 3
室内で花が咲くことはまれです。条件のよい気候で開花すると、サトイモ科らしく、白からクリーム色の仏炎苞が黄色からクリーム色の肉穂花序を包みます。自然の生活環では果実もつけますが、家庭での食用に関する公表された情報はありません。同定や熟度、地域ごとの事情は、別に検討すべき事柄です。5
知っておきたい分類
拠りどころになるのは Monstera adansonii Schott という二名法の学名です。POWO はこれを受理種とし、Dracontium pertusum、Calla pertusa、Monstera pertusa など歴史的なシノニムをいくつか挙げています。古いデータベースにこれらの名前が出てきても、別の観葉植物を指しているわけではありません。1 6
厄介なのは adansonii 複合群です。POWO と WFO は M. adansonii のもとに、subsp. adansonii、subsp. blanchetii、subsp. klotzschiana、subsp. laniata など複数の種内分類群を認めています。ところが流通の場では、「narrow form」「wide form」「laniata」「friedrichsthalii」「obliqua」といった呼び名が、採集記録のないまま入り混じっています。1 5 7
購入の際には、この点を心に留めておくと安心です。斑入りの株や穴の多い株が、そのまま希少種というわけではありません。Archipelago、Variegata、Albo、Aurea は斑や流通上の呼び名であり、売り手の宣伝文句より、学名と成熟した株の形態のほうが確かな手がかりになります。3 4
生育環境と分布
POWO によれば、自生域は熱帯アメリカで、主に熱帯湿潤バイオームに生育します。WFO はつる植物または半着生植物として記載し、地域によって常緑林、熱帯の落葉樹林、多雨林に見られるとしています。1 5
記録された分布は中央アメリカと熱帯南アメリカにわたり、コスタリカ、パナマ、コロンビア、ベネズエラ、ギアナ地方、ブラジル、エクアドル、ペルー、ボリビアなどが挙げられています。POWO は広い自生域にフランス領ギアナと小アンティル諸島も含め、プエルトリコは導入地域としています。1 6
耐寒性の目安はUSDAゾーン10〜12で、関東など冬の気温がこれを下回る温帯の地域では、屋外での越冬は見込めません。日本では栽培植物として、室内の鉢植え、サンルーム、加温した温室で育てるものと考えるのが現実的です。参照した資料に、侵略的な植物として扱う記録はありません。熱帯の地域での扱いは、生態系の条件が大きく異なるため、その土地ごとに判断する必要があります。
室内での育て方
うまく育てる要は、暖かさ、やわらかな光、通気のよい用土の三つです。RHS は室内のモンステラについて、18〜25 °C前後の温度、間接光または遮光した光、中程度から高めの湿度を勧めています。NC State も明るい間接光と湿度を重視し、およそ10 °Cを下回る冷え込みを避けるよう述べています。4 3
水やりは規則的に、ただし水をためないようにします。生育期の目安は週10〜20 mmで、鉢の大きさや気温、光に応じて調整します。基本は、用土の表面が乾いてからたっぷり与えることです。冬や生長が鈍っているときは、はっきりと控えめにします。4
仕立て方で株の姿は変わります。吊り鉢では茎が垂れ下がり、長く伸びやすくなります。モスポール(水苔を巻いた支柱)やトレリス、樹皮に沿わせると気根がしっかり張りつき、節間が詰まって、葉も大きくなることがよくあります。4 3
生活環と繁殖
栽培下では、はっきりした休眠期をもたない常緑のつる植物として扱います。寒さや光不足、湿りすぎた用土で生長は鈍りますが、多肉植物のように乾かして休ませる必要はありません。3
殖やし方の中心は節のついた茎挿しです。新しい株のもとになる芽は節にあるため、節は欠かせません。節のない葉を水に挿しても、しばらく緑を保つことはありますが、つる全体が再生することはありません。3
植え替えは控えめにします。RHS はモンステラに大きすぎる鉢を勧めていません。小さな根のまわりに湿った用土が多く残ると、根腐れを招きやすくなるからです。排水のよい鉢で、前の鉢より数センチ大きいもので十分な場合がほとんどです。4
毒性と注意点
毒性は刺激による中程度とされています。NC State は Monstera adansonii を、口にした場合に人と動物に有毒な植物として挙げ、シュウ酸カルシウムの結晶、消化器への刺激、樹液による接触皮膚炎のおそれを記しています。3
その仕組みは、不溶性シュウ酸カルシウムを含むサトイモ科植物に共通するものです。針状の結晶である束晶が、組織を噛んだりつぶしたりしたときに放出されます。Merck は動物について、すぐに現れる痛み、刺激、よだれの増加、腫れの可能性を挙げています。MedlinePlus は人について、口やのどの焼けるような痛み、よだれ、嘔吐、腫れを記載しています。8 9
ASPCA が「Swiss Cheese Plant」として掲載しているのは Monstera deliciosa で、同じ不溶性シュウ酸塩を毒性成分とし、猫と犬に似た症状を示すとしています。M. adansonii について最も直接的な情報源は NC State です。サトイモ科として慎重に扱うべきですが、口にしたらすべて緊急事態というわけではありません。10 3
品種・形態と混同しやすい種
今回参照した園芸資料で、品種名として最も直接挙げられているのは Archipelago です。ほかによく見る Albo、Aurea、Mint、narrow form、wide form などは、確かな植物学・園芸学の出典が伴わない限り、流通上の呼び名として扱うのが妥当です。3
とりわけ有名なのが Monstera obliqua との混同です。obliqua として売られている株の多くは、実際には adansonii の一形態か、近縁の植物です。葉1枚の写真だけでは同定できません。株の成熟度、葉柄、葉鞘、花序、入手経路まで見る必要があります。5 7
より大柄な Monstera deliciosa や、「ミニモンステラ」の名で売られることの多い別属の Rhaphidophora tetrasperma とも区別が必要です。確かな原則はひとつで、「モンステラ」という名前や葉の穴の数だけで種を決めつけないことです。
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Monstera adansonii Schott
- International Plant Names Index, Monstera adansonii Schott
- World Flora Online, Monstera adansonii Schott
- GBIF Backbone Taxonomy, Monstera adansonii Schott
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox, Monstera adansonii
- Royal Horticultural Society、モンステラの育て方
- Merck Veterinary Manual、不溶性シュウ酸カルシウムを含む観葉植物
- MedlinePlus、サトイモ科植物のシュウ酸カルシウム中毒
- ASPCA、Swiss Cheese Plant の毒性情報
よくある質問
マドカズラとホウライショウは同じ植物ですか?
いいえ。どちらもサトイモ科モンステラ属ですが、M. adansonii は葉が小さく、葉の内側に窓のような穴が開くことが多く、室内でもしなやかな姿を保ちます。
マドカズラの葉に穴が開かないのはなぜですか?
株がまだ若いか、光が足りないか、支柱なしで育てられている可能性があります。間接光を増やし、支柱を添えると、成熟した葉が出やすくなります。
マドカズラは猫や犬にとって有毒ですか?
はい。不溶性シュウ酸カルシウムによる中程度の毒性とされています。口の中の刺激、よだれ、嘔吐、飲み込みにくさが注意すべき症状です。
マドカズラは吊り鉢で育てられますか?
育てられます。ただし、本来の性質がよく表れるのは支柱をよじ登らせたときです。吊り鉢では茎が長く伸び、葉が小さくなりがちです。
Monstera obliqua はマドカズラの一形態ですか?
いいえ。両者は別の名前ですが、穴の多い株は流通の場でよく混同されます。確かな同定には、成熟した株と、できれば入手経路の確認が必要です。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。



