アボカド (Persea americana, )



アボカド(Persea americana)はクスノキ科の常緑高木で、メキシコ南部から中央アメリカにかけてが原産です。脂質を豊富に含む果実は、いまでは熱帯から地中海性気候の地域まで広く栽培されていますが、多くの動物に対する毒性もよく知られています。
続きを読むワニナシ, Avocado と Alligator pear
一日を通して強い直射日光が当たる場所に置きます。

世界の分布
POWO によると、Persea americana の厳密な自生域はメキシコ中部からコスタリカまでです。園芸や考古学の文脈ではメキシコからペルーまでと広げて語られることが多いため、自生域、古くから栽培化が進んだ地域、近年の商業栽培地を区別して考える必要があります。
基本情報
アボカド(Persea americana Mill., 1768)は、クスノキ科ワニナシ属の常緑高木で、クスノキやゲッケイジュの近縁にあたります。葉の雰囲気は似ていても、花の仕組みははっきり異なります。アボカドの花は2回に分けて開き、ある日に雌花として、翌日には雄花として機能します。この雌雄異熟と呼ばれる性質のため、同じ花の中での自家受粉はほぼ起こりません。成木の樹高は仕立て方によって8〜20 mに達し、大きな種子をひとつ抱えた果実とあわせて、ほかの観賞用のクスノキ科植物とは容易に見分けられます。命名者名の Mill. はイギリスの植物学者フィリップ・ミラーを指し、1768年に『Gardener's Dictionary』でこの学名を発表しました。1 2
アボカドという名はスペイン語の aguacate に由来し、さらにさかのぼるとナワトル語の āhuacatl に行き着きます。この語はもともと睾丸を意味し、果実の形になぞらえたものでした。グアカモーレも同じ語根をもち、ahuacamolli は文字どおり「アボカドのソース」を意味します。英語の古い呼び名 alligator pear は、一部の果実の黒ずんだざらつく果皮を表したもので、和名のワニナシもこれに由来します。3 2
見分け方
剪定して管理された果樹園では8〜12 mほどにとどまることが多く、あまり手を入れない株や野生の個体では20 mに達します。灰色がかった樹皮は年とともに縦に裂け、樹冠は一年中こんもりと葉を茂らせます。ただし新梢が伸びる時期には、古い葉の一部が落ちます。3 4
葉は互生する楕円形で、長さは20〜30 cm。表面は濃い緑色でつやがあり、裏面はややくすんでいます。系統によって、揉んだときにアニスのような香りがするかどうかが異なります。メキシコ系ははっきりとアニスの香りを放ち、グアテマラ系や西インド諸島系にはこの香りがないため、よい手がかりになります。5 3
黄緑色のごく小さな花が、葉腋に密な円錐花序をなして集まります。果実は種子をひとつもつ液果で、長さ7〜20 cm、重さは100 g〜1 kg。品種によって洋ナシ形から卵形までさまざまです。3
知っておきたい分類
POWO が認める学名は Persea americana ひとつで、自生域はメキシコ中部からコスタリカまでとされています。それでも栽培品の多様性は、歴史的な3つの園芸系統に整理されます。寒さにもっとも強く果皮が薄く葉にアニスの香りがあるメキシコ系、果皮が厚くざらつくグアテマラ系、そして寒さにもっとも弱く果皮がしなやかで油分の少ない西インド諸島系です。1 5
3系統は互いに容易に交雑し、ハス(Hass)やフェルテ(Fuerte)をはじめ、商業品種の多くはこうした交配から生まれました。分類上の拠りどころはあくまで学名で、系統や品種は園芸上の性質の違いを表すものであり、別種を意味するわけではありません。1
生育環境と分布
厳密な自生域はメキシコ南部からグアテマラ、コスタリカにかけての、乾季のはっきりした熱帯・亜熱帯の森林です。水はけのよい斜面に生え、水浸しの土には耐えられません。1 4
ペルーのワカ・プリエタやメキシコのコスカトラン洞窟から出土した遺物により、少なくとも1万年前には栽培化が始まっていたと考えられており、その後、本来の分布域をはるかに越えて広まりました。現在ではメキシコからペルーにかけてのほか、カリフォルニア、イスラエル、南アフリカ、スペイン、さらにフランスの地中海沿岸の一部でも栽培されています。IUCN の評価は低懸念です。2 6
生活環と繁殖
開花には、2つの型をもつ雌性先熟という珍しい仕組みが見られます。A型の品種では、花は1日目の朝に雌花として開いていったん閉じ、2日目の午後に雄花として再び開きます。B型の品種ではこの順序が逆です。1本だけの木では、同じ株の雌花と雄花が同時に開くことがないため、自家受粉はほとんど起こりません。2 5
果樹園では、A型の品種(ハス、リード、ピンカートン)とB型の品種(フェルテ、ベーコン、ズタノ)を組み合わせることで、雌雄異熟の花をもつこの種に欠かせない他家受粉が進みます。実生の木を1本だけ植えた場合、花はたくさん咲いても実がひとつもつかないことがあります。5
商業的な繁殖は実生台木への接ぎ木で行われます。品種の性質が固定され、初収穫は2〜3年目と、実生の6〜8年より早まります。果実は主に収穫後に追熟し、樹上で本当に熟すことはありません。そのため、食べる時期よりずっと前から長く収穫を続けられます。4 5
利用と注意点
脂質に富む熟した果実は、そのまま食べるほか、グアカモーレにしたり、搾って食用油にしたりします。葉はハーブティーや香りづけに使われることもあります。果実がきちんと熟していれば、まれなアレルギー反応を除き、人に対する特別な危険は知られていません。4 3
注意が必要なのは主に動物です。葉、樹皮、種子、未熟な果実にはペルシンという毒素が含まれ、馬、ヤギ、ウシ、ウサギで乳房炎、浮腫、呼吸困難を引き起こした例があり、わずか数時間で死に至ることもあります。ASPCA はとりわけ馬に対してアボカドを有毒と分類しており、飼い鳥もこの毒素に非常に敏感です。7 5 8
アボカドの木では、水はけの悪い土や水の与えすぎが、根腐れを起こす Phytophthora cinnamomi の発生を招きます。これが果樹園での最大の脅威で、炭疽病やミバエ類も身近な被害として挙げられます。根腐れが進んでから現れる葉の症状よりも、雨のあとに土が水浸しのまま残ることのほうが、早い段階の確かな警告になります。梅雨や夏の長雨が続く地域では、この点をとくに意識しておくと安心です。5
品種・混同しやすい種・近縁の植物
熟すと果皮が黒くなるざらついた肌のA型品種ハスが、現在の世界市場の主流です。果皮の薄いB型品種フェルテは、ハスの登場以前にカリフォルニアでの栽培拡大を支えました。ベーコン、ズタノ、エッティンガーは寒さに比較的強く、受粉樹としてもよく使われます。5
葉だけを見ると、樹形や質感の似たクスノキやゲッケイジュなど、ほかのクスノキ科植物と取り違えることがあります。確実に判別できるのは、大きな種子をもつ洋ナシ形の果実があるときだけです。種から育てた苗は室内で珍しい鉢植えとして楽しまれることが多いものの、もとの果実の品種の性質をそのまま受け継ぐわけではなく、実をつけるとしても通常6〜8年はかかります。2 4
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Persea americana Mill.
- Plants For A Future, Persea americana
- NC State Extension, Persea americana, Avocado
- ASPCA、アボカドの毒性情報
- Purdue University NewCROP / Julia Morton, Fruits of Warm Climates, Avocado
- Wikipedia 英語版、Avocado
- Wikipedia フランス語版、Avocatier
- Wikidata, Persea americana (Q37153)
- IUCN レッドリスト、Persea americana の評価
よくある質問
アボカドは動物にとって有毒ですか?
葉、樹皮、種子にはペルシンが含まれており、馬、ヤギ、家畜、飼い鳥での中毒が記録されています。猫や犬は比較的影響を受けにくいものの、口にすると消化器の不調を起こすことがあります。
種からアボカドを育てることはできますか?
はい、種は簡単に発芽します。ただし、育った木はもとの果実の品種の性質をそのまま受け継ぐわけではなく、実をつけるまでに6〜8年かかることが多いです。接ぎ木苗なら2〜3年で結実します。
アボカドの木に実がならないのはなぜですか?
もっとも多い原因は、相性のよい受粉樹がないことです。A型とB型の花は開く時間帯がずれているため、1本だけの木では花が咲いても実を結ばないことがあります。
A型とB型の品種とは何を指しますか?
花の開き方の順序を表しています。A型では花が1日目の朝に雌花として開き、2日目の午後に雄花として開きます。B型ではその順序が逆になります。両方の型を組み合わせると受粉がうまくいきやすくなります。
アボカドという名前の由来は?
スペイン語の aguacate を経て、ナワトル語の āhuacatl にさかのぼります。この語はもともと果実の形になぞらえて睾丸を指していました。グアカモーレも同じ語根から来ています。
未熟な緑の果実は危険ですか?
人については、まれなアレルギー反応を除けば大きな危険は報告されていません。一方、多くの動物にとっては、未熟な果実も葉や樹皮と同じくペルシンによる毒性の対象になります。
アボカドは世界のどこで育っていますか?
自生域はメキシコ中部からコスタリカまでです。現在はメキシコからペルーにかけてのほか、カリフォルニア、スペイン、イスラエル、南アフリカ、フランスの地中海沿岸の一部などで栽培されています。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。

