セイヨウキンミズヒキ (Agrimonia eupatoria, )
セイヨウキンミズヒキ(Agrimonia eupatoria)は、ヨーロッパ、北アフリカからアフガニスタンに至る西アジア原産のバラ科の多年草です。初夏から秋に小さな黄色い花を長い穂状につけ、その後、衣服や動物の毛に付着する鉤のある果実ができます。古代から収れん作用をもつ薬草として利用され、石灰質の草地、生け垣、土手に自生します。
続きを読むセイヨウキンミズヒキ, Agrimony と Churchsteeples






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Taken Aug 1, 2021 by Alexander Pappas (cc-by-sa)
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Taken Aug 16, 2021 by El Mojito (cc-by-sa)
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世界の分布
自生域はヨーロッパ、北アフリカ、マカロネシアから東へ西アジア、アフガニスタンまで広がります。その範囲では広く見られ、ほかの地域で顕著な侵略的植物とされる状況はありません。
基本情報
セイヨウキンミズヒキ(Agrimonia eupatoria L., 1753)は、バラ科キンミズヒキ属の多年草です。高さ30〜80 cm、条件によっては1 mになる茎に黄色い花穂を立て、その後に鉤のある果実をつけます。衣服や動物の毛に引っ掛かる果実は、フランスの草地に生えるほかのバラ科植物との違いを示す目印です。英語ではAgrimony、Churchsteeplesとも呼ばれます。 5 1
種小名のeupatoriaはギリシャ語のeupatoriosに由来し、薬物の知識で知られたミトリダテス6世エウパトルについてのディオスコリデスの記述に結びつきます。フランス語名aigremoineの背景には、中世の写本で別の薬草を指すargemoneとagrimoniaが混同された経緯があります。翻訳や転写を重ねるなかで、その呼び方が定着しました。 5
キンミズヒキ属には、およそ12〜15種の多年草が含まれます。黄色い花穂と、大きな小葉の間に小さな小葉を挟む羽状複葉が共通します。セイヨウキンミズヒキはヨーロッパで最も広く見られる種で、収れん作用のある植物として古代から栽培・採集されてきました。 6
見分け方
毛のある茎はしばしば赤みを帯び、枝分かれせずに30〜80 cm、好条件では1 mほどまで伸びます。互生する羽状複葉では、縁に鋸歯のある大きな卵形の小葉と、小さな小葉が交互に並びます。濃緑色の葉の表に対し、裏は毛で白っぽく見えます。慣れると、花のない株でもこの葉裏が見分ける手掛かりになります。 2 5
自生域での花期は主に6〜9月です。直立した長い花穂に直径12〜13 mmの黄色い花がつき、各花には5枚の花弁と約10本の雄しべがあります。下から順に開くため、同じ花穂でつぼみ、花、若い果実が同時に見られます。後にできるこま形の果実には溝と曲がった鉤があり、動物の毛に付いて運ばれます。この動物付着散布によって、単に株元へ落ちるよりも遠くへ種子が広がります。 6 5
分類のポイント
POWO/WCVPが採用する学名はAgrimonia eupatoria L.です。ヨーロッパと北アフリカの基本亜種、西・中央アジアのsubsp. asiatica、カナリア諸島のsubsp. grandisという3亜種が認められています。過去に記載された複数の変種名は、独立した分類群というよりも下位階級の異名として扱われます。 1 5
- Agrimonia eupatoria var. major Boiss.:過去の変種名
- Agrimonia eupatoria subsp. grandis (Asch. & Graebn.) Bornm.:カナリア諸島の亜種
- Agrimonia eupatoria subsp. asiatica (Juz.) Skalický:西・中央アジアの亜種
国によって通称が異なる場合も、採用された学名で同じ植物か確認できます。英語のchurchsteeplesやagrimony、ドイツ語のOdermennig、スロバキア語のrepík lekárskyはいずれもAgrimonia eupatoriaを指します。 1
生息地と分布
分布の西端はカナリア諸島やマデイラ島を含むマカロネシアです。そこからヨーロッパ、北アフリカを経て、西アジアとアフガニスタンまで自生域が続きます。 1 8
フランスを含む自生域では、塩基性の土壌にあるやせた草地、適度に湿った林縁、生け垣、土手に生育し、平地から山地中部まで見られます。成立から50年未満の比較的新しい草地を好む傾向があり、集約的ではない粗放的な農地管理の指標にもなります。 6 2
冬に水がたまる土では根茎が腐りやすく、栽培ではこれが主な弱点です。一方、石灰質で水はけがよければ、やせて石の多い土にも適応します。窒素が多すぎると花穂が雨風で倒れやすくなり、競争力のあるイネ科植物に押されます。肥料の少ない草地では育ちやすく、成株は幅30〜50 cmほどに広がります。同じく石灰質で排水のよい土を好むセイヨウノコギリソウやオレガノと組み合わせられます。
生活環と繁殖
気候に応じて6〜9月に花をつけ、種子は8〜9月に熟します。冬には地上の葉がなくなりますが、太く残る根茎から春に再び芽吹きます。秋に種をまいても最初の1〜2年は花をつけず、花穂を支える根茎が育つまでに2〜3年かかります。耐寒性はおよそ−20 °C、USDA 4〜9に相当し、強い寒さにも特別な保護なしで耐えます。ただし、凍結そのものより冬の過湿の方が根茎には危険です。 2
鉤付きの果実は毛皮や衣服に付着し、親株から離れた場所で落ちます。栽培下の発芽はそろいにくく、約13 °Cでは2〜6週間にわたります。確実さと速さを求める場合は、生育期の終わりに株分けする方が種まきより扱いやすい方法です。 2
利用と注意点
伝統的な利用の中心は薬草です。花のついた茎の上部には約5%のタンニンが含まれ、自生域では7〜8月に刈り取って陰干しします。直射光を避けることで、乾燥中のタンニンの分解を抑えます。収れん性のある浸出液やうがい液として、軽い下痢や喉の痛みに古くから用いられてきました。 2 5
葉と花は生でも乾燥させても茶に用いられ、フランス語で「森の茶」と呼ばれる飲み物は温かくても冷やしても飲まれます。猫、犬、馬に対する有毒植物としては挙げられていません。人ではタンニンを過剰に摂取すると、消化器の不調や一時的な便秘が起こることがあります。 2 3
歴史上は、銃創に塗る薬として用いられたeau d’arquebuseの材料にもなりました。イギリスの民間伝承では、枕の下に一枝置くと長く眠れるという言い伝えがありました。これは伝承としての記録です。 6
品種・類似種・近縁種
近縁種との区別では、葉の裏が役立ちます。ヨーロッパのAgrimonia proceraは小葉の裏に香りのある粘性の腺をもち、アジアと東ヨーロッパを中心に分布するAgrimonia pilosaも近い仲間です。A. proceraと本種を見分ける際は、香る腺があるか、それとも単に毛で白っぽいかを確認します。 6
草地のバラ科植物には、遠目では似て見えるものがあります。Potentilla erectaは掌状の葉をもち、本種の羽状複葉とは異なります。Sanguisorba minorの花穂は丸みを帯びた赤色で、セイヨウキンミズヒキの細長い黄色い花穂とは容易に区別できます。
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Agrimonia eupatoria L.
- Plants For A Future, Agrimonia eupatoria
- Tela Botanica / eFlore BDTFX, Agrimonia eupatoria
- INPN / MNHN, Agrimonia eupatoria L. (cd_nom 80410)
- フランス語版Wikipedia、セイヨウキンミズヒキ
- 英語版Wikipedia、 Agrimonia eupatoria
- GBIF, Agrimonia eupatoria L.
- USDA GRIN Global, Agrimonia eupatoria L.
よくある質問
猫や犬に有毒ですか?
セイヨウキンミズヒキは猫や犬に有毒な植物として挙げられていません。ただし、人ではタンニンの過剰摂取により消化器の不調や便秘が起こることがあります。
Agrimonia proceraとはどう見分けますか?
Agrimonia proceraの小葉の裏には粘り気と香りのある腺があります。セイヨウキンミズヒキにはそれがなく、葉裏は毛で白っぽく見えます。
ハーブティーに利用されますか?
乾燥させた開花部は収れん性のある茶として、軽い下痢や喉の痛みに伝統的に用いられます。フランス語では「森の茶」とも呼ばれ、妊娠中の利用には慎重さが必要です。
学名やフランス語名の由来は何ですか?
フランス語名は、中世に別の薬草を指すギリシャ語argemoneとagrimoniaが混同されたことに由来します。eupatoriaは、薬物の知識についてディオスコリデスが言及したミトリダテス6世エウパトルにちなみます。
果実が服にくっつくのはなぜですか?
果実には曲がった鉤があり、布や動物の毛に引っ掛かります。動物付着散布という仕組みによって、種子は親株から離れた場所まで運ばれてから落ちます。
フランスではどこに生えますか?
石灰質のやせた草地、生け垣、土手、林縁に生えます。平地から山地中部まで、フランスのほぼ全域で見られます。
絶滅が心配されている植物ですか?
いいえ。ヨーロッパ、北アフリカ、西アジアに広い自生域をもち、条件の合う草地や生け垣では今も普通に見られます。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





