トックリラン (Beaucarnea recurvata, )



トックリラン(Beaucarnea recurvata)は、メキシコ東部の乾燥地を原産とするキジカクシ科の樹木状の植物です。「偽ヤシ」と呼ばれることもありますが、本当のヤシの仲間ではありません。水をたくわえてふくらんだ幹の基部(コーデックス)から、細長く垂れ下がる葉を房のように広げます。
続きを読むポニーテール, ノリナ, Ponytail palm と Elephant's foot

世界の分布
Beaucarnea recurvata の自生域はメキシコ東部に限られます。IUCN は現在の分布をベラクルス州のみとしていますが、植物学のデータベースにはオアハカ州、プエブラ州、サン・ルイス・ポトシ州、タマウリパス州も記録されています。観賞用に広く栽培されており、この狭い自生域をはるかに越えて育てられています。
基本情報
トックリラン(Beaucarnea recurvata (K.Koch & Fintelm.) Lem.)は、キジカクシ科 Beaucarnea 属の樹木状の植物です。垂れ下がる葉の房から「偽ヤシ」と呼ばれることもありますが、本当のヤシとの近縁関係はありません。1 2
日本ではトックリランのほか、ポニーテールの名でも園芸店に並ぶ、手のかからない観葉植物として親しまれています。何よりも目を引くのは、根元が大きくふくらんだ幹です。コーデックスと呼ばれる、水をたくわえるこの部分が、とっくりにたとえられる独特の姿をつくっています。3 4
見分け方
いちばんの手がかりは、ふくらんだ幹です。基部が木質の球根のように太り、樹皮は灰色で細かくひび割れ、その上に細めの幹が続きます。この貯水部は、ごく古い株では直径1 mに達することもありますが、鉢植えではずっと控えめです。4 5
頂部には、細長いリボン状の葉が冠のように集まり、滝のように垂れ下がります。葉の縁はわずかにざらつきます。成株の葉は長さ1 mほどになるのが普通で、それを超えることもありますが、幅はわずか1〜2 cmです。3 6
室内で育てると、高さ1〜2 mのコンパクトな姿にとどまり、生長はゆっくりです。メキシコの自生地では高さ9 mに達する本格的な樹木となり、数十年をかけて巨大な幹の基部を築きます。5 4
知っておきたい分類
この種は1861年に Beaucarnea recurvata (K.Koch & Fintelm.) Lem. の名で記載されました。Beaucarnea 属はノリナ属(Nolina)に近く、古い学名や流通名の多くはそのためです。ノリナ属の名で扱われていたころのものも含め、いまも見かける旧名は次の4つです。
- Nolina recurvata (Lem.) Hemsl.
- Beaucarnea tuberculata Roezl
- Pincenectia recurvata (Lem.) Lem.
- Nolina tuberculata (Roezl) hort.
拠りどころになるのは、受理名の Beaucarnea recurvata です。キジカクシ科への所属も比較的新しく、長くリュウゼツラン科やノリナ科に置かれていたものが、現在はこの大きな科にまとめられています。1 2
生育環境と分布
原産地はメキシコ東部の半乾燥地です。IUCN は現在の自生域をベラクルス州に限られるとしていますが、主要な植物学データベースにはオアハカ州、プエブラ州、サン・ルイス・ポトシ州、タマウリパス州も記録されています。乾燥林や乾いた低木林の、岩がちで水はけのよい土壌に生えます。1 4
こうした環境への適応の要が、ふくらんだ幹です。水をためておくことで、長い乾季も弱らずに乗り切れます。乾燥よりも過湿を嫌うのは、この乾燥地型の暮らし方によるものです。梅雨から夏にかけて湿度の高い日本では、とくに用土の過湿に気をつけたいところです。5 6
観賞用として広く栽培され、現在では原産地をはるかに越えて、温暖な気候では庭木として、それ以外の地域では室内の鉢植えとして育てられています。こうした栽培地域は、狭く保護の目が向けられているメキシコの自生域とは区別して考える必要があります。3 2
生活環と繁殖
トックリランは雌雄異株で、雄株と雌株が分かれています。花が咲くのは主に老株で、夏にクリーム色の小花を集めた大きな円錐花序が直立します。鉢植えでの開花はまれで、花よりも株姿を楽しむ植物として育てられています。4 5
受粉した花は、種子を含む小さな蒴果になります。もっとも確実な殖やし方は実生ですが、時間がかかり、苗の幹がはっきりふくらむまでには数年を要します。種子は暖かい場所で、水はけのごくよい用土にまき、発芽まで用土をわずかに湿らせておきます。発芽はおよそ3〜6週間後です。6 3
もうひとつの方法は、古い株の幹の根元にときどき出る子株を分けることです。ていねいに切り離して水はけのよい用土で根づかせれば、親株と同じ性質の株になります。どちらの方法でも、気長に待つことが大切です。トックリランは、観葉植物のなかでも生長がとりわけ穏やかな部類に入ります。5 4
利用と注意点
現在の Beaucarnea recurvata は、ほぼ観賞のためだけに育てられています。室内では手のかからない鉢植えとして、温暖で乾いた気候では印象的な姿の庭木として利用されます。耐寒性の目安はUSDAゾーン9〜11で、関東など冬に冷え込む地域では、冬は室内の明るい場所で管理するのが無難です。寿命の長さも特筆すべき点で、メキシコでは樹齢数百年に達する株も確認されています。4 2
安全面では、大型の観葉植物のなかでも安心して置ける種類です。ASPCA は猫、犬、馬に対して無毒と分類しており、中毒症状の報告もありません。この大きさの観葉植物としては珍しく、ペットと同じ空間でも心配なく育てられます。注意すべきは栽培上の問題で、用土が湿りすぎると幹が腐ります。7 5
品種・混同しやすい種・近縁の植物
流通の中心は、幹がひとつの原種の姿の株です。剪定や自然な分枝によって複数の葉の房をつけた多頭仕立ての株も見かけますが、別の種ではありません。購入する前には、幹が硬く締まっているか、柔らかい部分がないか、葉がそろっているかを確かめておくと安心です。3
よく取り違えられるのは、次の植物です。
- Beaucarnea stricta:葉がより硬く、上向きに立つ
- Beaucarnea guatemalensis:近縁だが、株姿や色合いが異なる
- Nolina 属:株姿や葉がよく似た近縁の属
灰色の樹皮に覆われたふくらんだ幹と、細く長く垂れ下がる葉が、トックリランとして売られている株が本当に Beaucarnea recurvata かを確かめる、もっとも確かな手がかりです。1 4
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Beaucarnea recurvata (K.Koch & Fintelm.) Lem.
- Royal Horticultural Society, Beaucarnea recurvata, ponytail palm
- Missouri Botanical Garden, Beaucarnea recurvata
- North Carolina State Extension, Beaucarnea recurvata
- Plants For A Future, Beaucarnea recurvata
- ASPCA、Bottle Palm(Beaucarnea recurvata)の無毒植物情報
- Wikipedia, Beaucarnea recurvata
よくある質問
トックリランに毒性はありますか?
いいえ。ASPCA はトックリランを猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。大型の観葉植物のなかでは、ペットのいる家庭でも安心して置きやすい種類のひとつです。
トックリランは本当のヤシですか?
いいえ。ポニーテールパーム(ponytail palm)という英名がありますが、キジカクシ科に属し、本当のヤシ(ヤシ科)とは近縁ではありません。垂れ下がる葉の房がヤシに似ているために混同されているだけです。
トックリランの幹の根元がふくらんでいるのはなぜですか?
このふくらみは水をたくわえる器官で、メキシコの自生地で乾季を乗り切る助けになっています。年月とともにゆっくり太り、とっくりのような独特の姿をつくります。
トックリランの水やりはどのくらいの頻度ですか?
間隔を大きくあけ、夏はおよそ2〜3週間に1回、冬は月に1回ほどを目安に、用土が完全に乾いてから与えます。水の与えすぎは幹の腐敗につながります。
トックリランは室内で花を咲かせますか?
開花はまれで、株がかなり古くなってからです。主に老株で、夏にクリーム色の小花を集めた円錐花序が直立します。室内では、もっぱら姿を楽しむ植物として育てられています。
トックリランにはどのくらいの光が必要ですか?
明るい光、できれば直射日光が理想です。南向きの窓辺に置くと葉が密に保たれます。光が弱いと葉が間延びして弱ります。
トックリランはどのくらいの大きさになりますか?
室内では、長い年月を経ても1.5〜2 mを超えることはまれです。自生地では太い幹をもつ高さ数メートルの樹木になります。
トックリランと間違えやすい植物はどれですか?
取り違えが多いのは、ほかの Beaucarnea 属の種や、姿の似たノリナ属の植物です。ふくらんだ幹と細く垂れ下がる葉が、もっとも確かな見分けどころです。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。




