ベニイロリュウケツジュ (Dracaena cinnabari, Balf.f. 1882)

ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari)はアラビア海にあるイエメン領ソコトラ諸島固有の、キジカクシ科の単子葉樹木です。開花のたびに二又に枝分かれして、独特の傘状の樹冠をつくります。傷ついた樹皮から出る赤い樹脂は竜血と呼ばれ、古代から利用されてきました。

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学名Dracaena cinnabari
属Dracaena
目Asparagales

ベニイロリュウケツジュ, Socotra dragon tree と Dragon's Blood Tree

基本情報
毒性
注意 : 人 · 有毒 : 猫, 犬 と 動物 · 要確認 : 馬
管理の難易度
低い
植物タイプ
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
イエメン(ソコトラ)
自生環境
標高150〜1,600 m、とくに600 m以上の乾いた石灰岩台地と霧の多い山腹
季節性
開花期
春
収穫期
夏
生育
休眠
休眠しない
生育速度
1/10
成熟までの期間
傘状の樹冠になるまで数十年。成熟は約20〜30年
増やし方
種子
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
強いサイクロンには弱く、2015年には数千本が倒れた
湿度
30–55 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌pH
土壌タイプ
水はけのよい鉱物質土, 非常に水はけのよい土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

日なた

一日を通して強い直射日光が当たる場所に置きます。

十分な日なた
室内
明るい部屋, サンルーム
窓からの距離
若い鉢植えは南向きの大きな窓から約15 cm
屋外
霜の当たらないロックガーデン, 日なたの花壇
鉢
テラコッタ鉢, 大型コンテナ
形態
高さ300–1200 cm株張り300–1200 cm
葉
緑
ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari):原産地と利用法 — 葉 1
ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari):原産地と利用法 — 葉 2
花
白緑大きさ0.5–1.5 cm
果実
オレンジ
樹形・草姿
ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari):原産地と利用法 — 樹形・草姿 2
樹皮
茶
ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari):原産地と利用法 — 樹皮 1
ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari):原産地と利用法 — 樹皮 2

世界の分布

アラビア海のイエメン領ソコトラ諸島だけに自生します。ほかに自生個体群は知られていません。域外の記録は植物園などで栽培される個体であり、帰化個体群を示すものではありません。

  • 原産1
  • イエメン(ソコトラ)

六角形:植物が見られる地域。緑の点:原産分布域。1

基本情報

ベニイロリュウケツジュ(Dracaena cinnabari Balf.f., 1882)は、キジカクシ科ドラセナ属の単子葉樹木です。種小名cinnabariは鮮紅色の鉱物である辰砂にちなみ、傷ついた樹皮からにじむ赤い樹脂を表しています。 1 5

アラビア海のイエメン領ソコトラ諸島に固有の樹木で、同国を象徴する木です。開花の周期ごとに二又の分枝を繰り返すことで、樹木としては珍しい傘状の樹冠がつくられます。 8

見分け方

成熟した木の高さは通常6〜10 mで、最大12 mの記録があります。樹冠の直径も12 mに達し、古い個体の太い幹は人の胸の高さで直径1.5 mを超えることがあります。 2 8

細く硬い葉は長さ60 cm、幅はわずか3 cmほどです。幹にはつかず、枝先だけに密なロゼットとして集まります。常緑性で、一枚の葉は3〜4年ごとに入れ替わります。 8

原産地では3月頃、香りのある緑白色の小花が枝先の円錐花序に咲きます。続く液果は緑から黒を経て、熟すと橙赤色になります。果実には長さ4〜5 mmの種子が1〜4個入ります。 2

分類のポイント

スコットランドの植物学者Isaac Bayley Balfourがソコトラ調査で記載し、1882年に発表したDracaena cinnabari Balf.f.が受容名です。1835年にはWellsted中尉がすでに報告していましたが、当時は誤ってPterocarpus属に置いていました。認められた同タイプ異名はDraco cinnabari (Balf.f.) Kuntzeだけです。 1 8

ドラセナ属の60〜100種のうち、樹木状になるのは本種を含めて6種だけです。葉緑体ゲノムの比較では、傘状の外観が似るカナリア諸島のDracaena dracoより、アラビア半島のDracaena serrulataに遺伝的に近いことが確認されています。 9 6

生息地と分布

ソコトラ諸島の乾いた石灰岩台地や山腹だけが自生地です。標高は150〜1,600 m、とくに600 m以上に多くみられます。現地でkhareefと呼ばれるモンスーンの霧が水分をもたらし、少ない降水量を補います。 3 8

主要な生育地の一つであるフィルミヒン台地は、潜在的な生育域の約2%にすぎませんが、生存個体の40%以上が集中するとされます。この森の平均樹齢は約300年です。 8

島外で知られる個体は、植物園や個人のコレクションで栽培されたものです。ほかの地域に帰化した個体群は記録されておらず、各地へ導入された多くの観賞植物とは分布上の状況が異なります。 6

生活環と繁殖

一本の未分枝の幹で数十年の幼木期を過ごしてから、気候に応じて通常3月頃に開花します。花が咲くと頂芽の成長が終わり、その後2本の新しい枝が生じます。この繰り返しが傘状の樹冠を組み立てます。 2

野生個体群の更新を最も妨げるのはヤギの採食です。幼苗や若い枝が家畜の届かない高さになる前に食べられるため、多くの森では老木に偏った構成になっています。 3

園芸ではほぼ種まきによって増やします。暖かく水はけのよい用土で数週間のうちに発芽しますが、その後の成長は数十年にわたって極めて遅く、原産地以外で成木が珍しい理由になっています。 2

利用と注意点

幹から採る赤い樹脂竜血は、古代から染料、ニス、消化器症状や発熱、傷に対する伝統薬として使われてきました。ソコトラでは羊毛の着色、陶器の接着、手製の口紅にも利用されます。 7 8

ドラセナ属は葉、茎、樹皮に刺激性のサポニンを含み、猫や犬に有毒です。食べると時に血を伴う嘔吐、流涎、元気消失を起こします。これは室内栽培の少ない本種だけの試験ではなく、属全体について記録された情報です。 4

IUCNは2004年から本種を危急種としています。ヤギの過放牧、進行する乾燥化、持続性を欠く樹脂採取に、強いサイクロンが重なって更新を脅かします。2015年には数千本が根こそぎ倒れました。 3

品種・類似種・近縁種

確立した園芸品種はなく、コレクションの少数の個体も野生由来の実生か生息域外保全の苗です。庭向けの選抜品種よりも、ソコトラの特定の個体群に由来する植物として位置づけられます。 8

外観が似るカナリア諸島のDracaena draco (L.) L.とは、分布が3,000 km以上離れ、自然の遺伝的交流はありません。ゲノム研究は、本種がオマーンとサウジアラビアのDracaena serrulata Bakerにいっそう近いことを示しています。さらに商品名「竜血」は、東南アジアのトウ類Daemonoropsや南米の一部のCrotonの赤い樹脂も指します。これらはドラセナ属とは分類上異なる植物です。 9 7

主な参考文献

よくある質問

カナリア諸島のリュウケツジュと同じ木ですか?

いいえ。Dracaena dracoと同じ傘状の姿ですが、同属の別種で、分布は3,000 km以上離れています。ゲノム研究では、ベニイロリュウケツジュはDracaena dracoよりもアラビア半島のDracaena serrulataに近いことが示されています。

樹冠が傘の形になるのはなぜですか?

開花のたびに二又の分枝を繰り返し、平らで密な樹冠になります。この形は地表の蒸発を抑え、成木の陰で芽生える幼苗を守るため、乾燥した気候で有利です。

竜血は必ずこの木から採れますか?

いいえ。竜血という商品名には、東南アジアのトウ類Daemonoropsや南米の一部のCrotonがつくる赤い樹脂も含まれます。これらはベニイロリュウケツジュとは分類上異なる植物です。

動物に毒がありますか?

ほかのDracaena属と同様に、猫や犬に有毒なサポニンを含みます。食べると嘔吐、流涎、元気消失などを起こします。ただし毒性の資料は属全体に関するもので、この種だけを対象としたものではありません。

絶滅危惧種とされるのはなぜですか?

IUCNは2004年から危急種と評価しています。ヤギの過放牧で幼苗が育ちにくくなり、乾燥化で適地が縮小しています。2015年のような強いサイクロンでは数千本の成木が倒れました。

寿命はどれくらいですか?

フィルミヒンの森では平均樹齢が約300年で、500年を超える個体もあります。ただし単子葉植物には珍しい幹の二次成長をするため、正確な樹齢の推定は難しい面があります。

ソコトラ以外でも育てられますか?

可能ですが、栽培例は少なく成長も遅い木です。温帯では凍らない温室やサンルーム、十分な日照、水はけの非常によい用土が必要です。成木の傘状の姿に近づくまで数十年かかります。

似ている植物

植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。