アフリカナガバノモウセンゴケ (Drosera capensis, )
アフリカナガバノモウセンゴケ(Drosera capensis)は、南アフリカのケープ地方の湿地を原産とするモウセンゴケ科の多年生食虫植物です。細長く立ち上がる葉には、捕らえた虫に向かって曲がる粘毛があります。育てやすく、こぼれ種でもよく増えるため、食虫植物の栽培を始める人に広く親しまれています。
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Taken Jul 9, 2022 by Věra Sychrová (cc-by-sa)
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世界の分布
南アフリカのケープ地方に固有で、特に西ケープ州南西部の温暖で湿潤な地域に分布します。栽培の容易さと多量の種子生産により、園芸を通じて広く導入されました。ニュージーランドなど、原産域外で帰化した個体群も報告されています。
基本情報
アフリカナガバノモウセンゴケ(Drosera capensis L., 1753)は、モウセンゴケ科の多年生食虫植物です。カール・フォン・リンネが1753年に記載しました。同年に命名された歴史の長いモウセンゴケ属の一種ですが、自生域は南アフリカに限られます。現在はハエトリグサやモウセンゴケ以上に、初心者の愛好家が広く栽培する食虫植物です。 1
粘毛の先で光る粘液の滴は、属名Droseraの由来です。古代ギリシャ語のdrososは「露」を意味し、晴れて乾燥した日にも見える滴を表しています。英名Cape sundewのCapeは南アフリカのケープ地方を指し、園芸で世界に広がる前の唯一の原産地に結びついています。 2
見分け方
細長い葉が緩やかなロゼットをつくり、斜め上に伸びます。葉身と区別できる明瞭な葉柄があり、葉はほぼ線形です。株全体の高さは通常8〜30 cm、花茎は45 cmに達することがあります。この立ち上がる姿は、平たく丸いロゼットをつくるモウセンゴケとよく異なります。 2
虫を捕らえたあとの動きも目印です。赤い粘毛が数分のうちに獲物へ向かって曲がります。モウセンゴケ属でも目立つ性質で、ダーウィン以来の食虫植物研究でよく記録されてきました。葉が巻き込まない場合でも、光や獲物が足りないだけのことがあり、必ずしも病気とは限りません。 1
開花時には枝分かれした花茎が粘る葉より高く伸び、直径1.5〜2 cmの小さな桃色の花を複数つけます。花は通常午前の遅い時間に開き、自家受粉しやすいため、親株の周囲には継続して種子が供給されます。 3
分類のポイント
モウセンゴケ属は150種を超え、ほぼ全大陸に分布します。栽培しやすい3種は特に混同されがちです。本種の葉は細長く立ち上がるのに対し、Drosera aliciae Hametは短いさじ形の葉でロゼットをつくり、Drosera spatulata Labill.は地面に近い、さらに小さく平らな姿になります。 1
同じ種の中にも園芸で区別される型があります。narrow-leavedは基本型より細葉で、albinoは赤い色素を欠き、粘毛と花が淡緑色から白色のままです。これらは独立した分類群ではなく、受容名Drosera capensisの中の園芸的な呼称です。 2 3 7
生息地と分布
ケープ地方、とりわけ西ケープ州南西部の温暖で湿潤な場所が本来の生息地です。常に湿った沼や溝、海岸の泥炭湿地、川岸に育ちます。日なたから明るい半日陰を好み、人の活動で攪乱された湿った土地にも見られます。 1
園芸での扱いやすさと、自家受粉による豊富な種子が原産域外への広がりを支えました。ニュージーランドでは帰化個体群が記録され、湿地で侵略性を示す可能性のある植物として監視されています。ただし、同国の規制対象有害生物のリストには含まれていません。 4 5
種子の散布を調べた研究では、微小な種子が風や水に運ばれることが示されています。導入先に湿った溝があれば、こうした散布が新しい場所への素早い定着につながります。 6
生活環と繁殖
甘い粘液に誘われた虫が粘毛に付くと、周囲の粘毛が数分で獲物へ向かって曲がります。多くの近縁種より速く、はっきりした動きです。その後、消化酵素が虫の柔らかい組織を分解し、自生する湿地の土に乏しい窒素を補います。 1
栽培では1年目から枝分かれした花茎を出して開花することがあります。花は自家受粉しやすく、微小な種子を次々つくります。風で親株の周辺に散るため、手を加えなくても栽培容器全体が実生で埋まることがあります。 3 6
栄養繁殖には葉を丸ごと使う葉挿しが利用できます。湿った泥炭に平らに置くと、1枚から数週間で複数の子株ができることがあります。根挿しや、十分育った株の株分けも行われます。 7
利用と注意点
観賞と学習に向く性質から、最初の食虫植物として親しまれています。人工の泥炭湿地、開放型テラリウム、水を張った受け皿に載せた鉢などで、生きたミズゴケとともに育てられます。猫・犬・人に対する毒性成分は記録されていません。馬については個別の資料がなく、不明です。 2
栽培に伴う主な注意は、原産域外の湿った屋外で帰化する可能性です。ニュージーランドでは実例があり、湿地に置いた株からの逸出に気を配る必要があります。室内や閉じた温室での栽培では、この危険はありません。 5
品種・類似種・近縁種
専門店ではnarrow-leavedの細葉型と、粘毛や花に赤い色素のないalbinoがよく扱われます。強い光で葉全体が濃赤色になる選抜系統も愛好家の間で流通します。どの型も植物学上は同じ種です。 2 3
近縁種との比較では、Drosera aliciaeの短いさじ形の葉、Drosera spatulataの平たく小さなロゼットが役立ちます。ハエトリグサ(Dionaea muscipula)は数秒で捕虫葉を閉じますが、本種は数分をかけて粘毛を曲げます。同じ容器で育てられるモウセンゴケ(Drosera rotundifolia)は一定の暖かさが続く環境への耐性が低く、明瞭な冬の休眠を必要とします。 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Drosera capensis L.
- Royal Horticultural Society, Drosera capensis(細葉型)
- Royal Horticultural Society, Drosera capensis(白花型)
- New Zealand Journal of Botany, Drosera capensisの帰化記録
- New Zealand Pest Register, Drosera capensisの項目
- Global Ecology and Conservation(2020), Drosera capensisの種子散布研究
- Carnivorous Plant Newsletter, Drosera capensisの細葉型に関する報告
よくある質問
初心者にも育てられますか?
はい。アフリカナガバノモウセンゴケは幅広い温度に耐え、厳密な冬の休眠を必要としません。Drosera rotundifoliaやDionaea muscipulaより、初めての食虫植物としてよく勧められます。
鉢に小さな芽が次々出るのはなぜですか?
自家受粉しやすく、株の周りに種子を散らすためです。湿った泥炭の上では数週間で発芽し、手を加えなくても密な株群になります。
猫や犬に毒性はありますか?
猫・犬・人に対して確認された毒性成分は記録されていません。馬については種に特有の情報がなく、不明のままです。
育てやすい近縁種との違いは何ですか?
細長く立ち上がる葉と、虫を包むように曲がる粘毛が特徴です。Drosera aliciaeは短いさじ形の葉、Drosera spatulataはより小さく平らなロゼットをつくります。
室内では虫を与える必要がありますか?
十分な光が当たり、時々小さな虫を捕らえられる環境なら必要ありません。肉や液体肥料を粘毛に載せると、栄養補給になるより消化用の粘液を腐敗させるので避けます。
葉挿しで増やせますか?
はい。モウセンゴケ属の中でも確実性の高い方法です。葉を1枚丸ごと湿った泥炭の上に平らに置くと、数週間で複数の子株ができることがあります。こぼれ種や株分けでも増えます。
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。


