モウセンゴケ (Drosera rotundifolia, )
モウセンゴケ(Drosera rotundifolia)は、北半球に広く分布するモウセンゴケ科の小さな多年生食虫植物です。酸性の泥炭湿地に育ち、丸い葉のロゼットに赤い粘毛を密生させます。粘液の滴で小さな虫を捕らえて消化し、泥炭土に乏しい窒素を補います。
続きを読むモウセンゴケ, マルバモウセンゴケ, Round-leaved sundew, Roundleaf sundew と Common sundew






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Taken Jan 1, 1970 by Photoflora - L'Abbé COSTE (©)
Taken Jun 30, 1851 by Tela Botanica − Herbier PONTARLIER-MARICHAL (cc-by-sa)
Taken Jan 1, 1800 by Tela Botanica − Daniel MATHIEU (cc-by-sa)
Taken Sep 20, 1982 by Tela Botanica − Michel GELLÉ (cc-by-sa)
Taken Jul 10, 2013 by Tela Botanica − Liliane Roubaudi (cc-by-sa)
© copyright of the Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew.
世界の分布
モウセンゴケは属内でも特に広い周北分布をもちます。ヨーロッパのほぼ全域、シベリア、北米の広域(プレーリーとツンドラを除くカナダ、アラスカ南部、太平洋岸北西部、アパラチアからジョージア州・ルイジアナ州)、日本、朝鮮半島に分布します。トルコ、コーカサス、カムチャツカ、中国東部・東北部にも隔離個体群があり、例外的に南半球のニューギニアやフィリピンのミンダナオ島にも及びます。
基本情報
モウセンゴケ(Drosera rotundifolia L., 1753)はモウセンゴケ科の小さな多年生食虫植物です。1753年にカール・フォン・リンネが記載した、正式に命名された最初期の食虫植物の一つです。チャールズ・ダーウィンは1875年刊の『食虫植物』で、ハエトリグサを含む他のどの食虫植物よりも本種を多く実験に用いました。 1 3
露のように光る粘液の滴が、古代ギリシャ語で「露」を意味するdrososに由来する属名Droseraをよく表しています。滴は晴天や乾いた天候でも粘毛の先に見えます。フランス名rossolisは中世ラテン語のros solis、「太陽の露」に由来します。中世から南ヨーロッパでこの植物を使ったリキュールにも同じ名がつき、のちにイタリア語のrosolioへ変わり、植物との結びつきは失われました。 2
見分け方
地際のロゼットには、直径4〜10 mmの丸い葉身が並びます。葉柄は細く毛があり、長さ1.3〜5 cmです。葉の上面を覆う赤い粘毛の先には腺があり、甘く粘る粘液を分泌して小さな虫を誘い捕らえます。ロゼット全体の直径は通常3〜5 cmです。 3 2
花は高さ5〜25 cmの葉のない直立した花茎につきます。粘る葉から十分離れるため、花粉を運ぶ虫が同じ株の粘毛に捕まるのを防ぎます。白色または桃色の花は5枚の花弁をもち、直径は1.25 cm以下です。のちにできる種子は淡褐色で細長く、長さ1〜1.5 mmになります。 3 6
寒い季節には冬芽(hibernaculum)をつくります。地面すれすれに葉を密に巻き込んだ芽で、冬の間は夏の葉に代わって株を守ります。秋にロゼットが黒くなっても、枯れたとは限らず、休眠に入っている場合があります。 6
分類のポイント
湿地でよく似た姿を見せる3種は、花や種子より葉身の形で区別しやすくなります。150種を超えるモウセンゴケ属のうち、本種の葉身は丸形で、ヨーロッパでの分布も近縁2種を合わせた範囲より広くなります。Drosera anglica Huds.は細長い葉身、Drosera intermedia Hayneは中間的なへら形の葉身をもちます。3種の間には交雑が見られ、Drosera × obovata Mert. & W.D.J.KochはD. rotundifoliaとD. anglicaの不稔性の自然雑種です。それでも本種の受容名は、リンネが1753年に発表したDrosera rotundifoliaのままです。 1
生息地と分布
北半球を巡る周北分布は、モウセンゴケ属でも特に広いものです。ヨーロッパのほぼ全域、シベリア、北米の広域に加え、日本と朝鮮半島に及びます。北米ではプレーリーとツンドラを除くカナダ、アラスカ南部、太平洋岸北西部、アパラチアからジョージア州・ルイジアナ州まで見られます。トルコ、コーカサス、カムチャツカにも隔離個体群があり、ニューギニアやフィリピンのミンダナオ島にも達します。 6 3
生育地はほぼ酸性のミズゴケ泥炭湿地に限られます。沼や低層湿原、水浸しの砂質の岸辺、明るいクロトウヒ林の下にも育ちます。豊富な光と、窒素・リンに乏しい土を必要とし、石灰質の土や施肥された場所には適しません。 6
フランスでは地中海沿岸を除く各地に分布しますが、低地で減り続ける泥炭湿地に依存します。同国では国の保護対象で、植物の全部または一部の破壊、運搬、販売が禁じられています。排水によって泥炭の酸性基質が数年で乾くと、本種も姿を消します。世界全体ではIUCNの低懸念に分類されますが、米国のイリノイ、アイオワ、テネシーなどでは地域的に脅かされています。 7 5 8
生活環と繁殖
獲物が甘い粘液に貼り付くと、周囲の粘毛がゆっくり虫の方へ倒れ、消化酵素が数日で柔らかい組織を分解します。泥炭土では得にくいアンモニアや利用可能な窒素を、こうして吸収します。一方、栄養分が土にあれば根からも利用できることが近年の研究で示されており、食虫性は補助的な戦略で、絶対的な依存ではありません。 3
夏には直立する花茎に花をつけます。親株の近くへ散った種子は、約20 °Cの湿ったミズゴケ上で4〜8週間ほどで発芽します。栽培では育ったロゼットを株分けすると、1生育期で親と同じ性質の株が得られます。生長期には葉挿しや根挿しも可能です。 6 4
利用と注意点
小さな食虫植物としての観賞利用が中心で、人工の泥炭湿地、テラリウム、水を張った受け皿に載せた鉢などで、生きたミズゴケとともに栽培されます。本種に毒性成分は記録されておらず、家庭動物に有毒な植物のリストにも掲載されていません。 4
ヒペロシドやケルセチンなどのフラボノイドを含む抽出物は、伝統的に咳、慢性気管支炎、喘息に対する鎮痙・去痰の目的で用いられました。消化液はいぼにも使われました。この薬用の評判がヨーロッパ各地の大量採取につながり、法的な保護が始まる以前から野生個体群を衰弱させました。 4 8
品種・類似種・近縁種
専門店で扱われるCharles Darwinは、厳密な冬の休眠なしでも生長するよう選抜された品種です。野生由来の株より通年維持しやすくなっています。枝分かれした花茎と多い花数をもつforma comosaは珍しく、主に北米の愛好家の間で流通します。いずれも種の植物学的な同一性を変えるものではありません。 4
同じ泥炭湿地ではDrosera anglicaやDrosera intermediaとの混同が起こりやすく、D. rotundifoliaとの交雑も見られます。ツルコケモモ(Vaccinium oxycoccos)も同じ湿地に育ちますが、虫を捕らえず、泥炭土から直接窒素を得ます。ハエトリグサ(Dionaea muscipula)は捕虫葉の裂片を動かして獲物を捕らえるのに対し、モウセンゴケは粘液で捕らえ、素早い運動は行いません。 6
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Drosera rotundifolia L.
- Royal Horticultural Society, Drosera rotundifolia(モウセンゴケ)
- Encyclopaedia Britannica, モウセンゴケ
- Plants For A Future, Drosera rotundifolia
- IUCN Red List, Drosera rotundifoliaの評価(2016)
- US Forest Service FEIS, Drosera rotundifoliaの種別解説
- INPN / MNHN, Drosera rotundifolia(モウセンゴケ)
- Parcs nationaux de France「丸い葉のモウセンゴケ(Drosera rotundifolia)」(原ページのInternet Archiveによる2026年5月21日保存版)
よくある質問
フランスでは保護されていますか?
はい。フランス全土で国の保護対象となり、株の全部または一部の破壊、運搬、販売は禁止されています。生育できる泥炭湿地は減少しています。
冬に葉の露のような滴がなくなるのはなぜですか?
葉を密に巻いた冬芽を地表近くにつくって越冬するためです。枯死のしるしではなく、春に生長が再開すると粘る葉が再び現れます。
猫や犬に毒性はありますか?
確認された毒性成分は記録されていません。少量のプルンバギンを含みますが、人や家庭動物の中毒例は記録されていません。
ヨーロッパの近縁種とはどう区別しますか?
丸い葉身が本種の特徴です。Drosera anglicaは細長い葉、Drosera intermediaはへら形の葉をもちます。3種は同じ湿地に育つことがあり、自然雑種Drosera × obovataも見られます。
伝統的にはどのように薬用にされましたか?
ヒペロシドやケルセチンなどのフラボノイドを含む抽出物が、咳、慢性気管支炎、喘息に対して鎮痙・去痰の目的で使われました。この評判から野生株の採取が進みましたが、現在は保護個体群での採取は禁止されています。
室内では虫を与える必要がありますか?
十分な光が当たり、時々小さな虫を捕らえられるなら必要ありません。肉や液体肥料を粘毛に載せると、栄養補給になるより消化用の粘液を腐敗させるので避けます。
野生株を採って育ててもよいですか?
保護されている地域ではできません。フランスでは野生のモウセンゴケの採取は禁止されています。食虫植物専門店の株は実生や組織培養で増やしたもので、泥炭湿地から採集したものではありません。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





