パキラ (Pachira aquatica, )



パキラ(Pachira aquatica)は、中央アメリカから南アメリカの湿地に自生するアオイ科の熱帯樹です。幹を編み込んだ姿で売られることが多く、光沢のある掌状の葉を楽しむ観葉植物として室内で育てられています。種子は炒れば食べられ、ペットに対する毒性は知られていません。
続きを読むMoney tree, Guiana chestnut と Malabar chestnut

世界の分布
Pachira aquatica の自生域は、メキシコから中央アメリカ、アマゾン川流域、ギアナ地方を経て南アメリカ北部に及びます。観葉植物として広く栽培され、熱帯アジアにも導入されていますが、こうした栽培地域はアメリカ大陸の原産地とは区別して扱う必要があります。
基本情報
パキラ(Pachira aquatica Aubl., 1775)は、アオイ科パキラ属の熱帯樹です。英語圏では Guiana chestnut とも呼ばれます。流通名の money tree は、アジアでこの木に託されてきた繁栄の象徴に由来し、縁起物として売られることも少なくありません。1 2
日本でなじみがあるのは、幹を編み込んだ鉢植えの観葉植物としての姿でしょう。光沢のある掌状の葉は見間違えにくく、ペットに対して毒性がないという、大型の観葉植物には珍しい利点もあります。3 4
見分け方
まず目を引くのは掌状複葉です。長い葉柄の先に、倒卵形から楕円形の濃い緑でつやのある小葉が5〜9枚、手の指のように放射状に並びます。葉全体の差し渡しは30 cm前後になります。2 5
大きな株なら、花が決め手になります。細い花弁と、先端が赤く染まる白い雄しべの長い束が目立ち、雄しべの長さは7〜10 cm、開いた花は直径およそ20 cmに達します。果実は褐色の大きな木質のさく果で、長さは30 cmほどまでになり、5つに裂けて丸い種子を現します。5 6
室内で育てた株は高さ2〜3 mの直立した低木にとどまり、若い株では幹の根もとが緑色にふくらんでいることがよくあります。熱帯の自生地では湿地に生える本格的な樹木で、高さおよそ18 mに達します。2 3
知っておきたい分類
1775年に Pachira aquatica Aubl. として記載されました。属の範囲はたびたび見直され、古い学名がいまも出回っています。Bombax 属や Carolinea 属に置かれていた時期の名も、文献にはまだ残っています。
- Bombax aquaticum (Aubl.) K.Schum.
- Carolinea princeps L.f.
- Pachira macrocarpa (Schltdl. & Cham.) Walp.
- Pachira longifolia Hook.
- Pachira aquatica var. surinamensis Decne.
英語の money tree のような販売名は仕立て方を指すもので、独立した種や植物学上の変種を意味するわけではありません。確かな拠りどころは受理名の Pachira aquatica です。1 7
生育環境と分布
故郷は熱帯アメリカの湿地と冠水林で、メキシコから中央アメリカ、アマゾン川流域、ギアナ地方を経て南アメリカ北部にまで広がります。一年のうちある時期は水に浸かった土にも耐える、湿った土地の植物です。1 2
川岸や冠水する土地に適応したこの木は、幹の根もとがふくらみ、一時的な過湿に耐える根をもっています。鉢植えでたっぷりの水やりを受け入れるのもこの性質によるものですが、編み込んだ幹の中心に水がたまらないようにすることが条件です。5 3
観賞用や縁起物として盛んに栽培され、台湾や日本を含む熱帯・東アジア、さらにフロリダにも広まりました。こうした栽培地域は、アメリカ大陸の原産地とは分けて考える必要があります。8 2
生活環と繁殖
開花は主に暖かい季節で、北半球の熱帯では12月から3月にかけてです。夜に開く大きな花は蜜が豊富で、原産地ではコウモリやガが訪れて受粉を担います。室内で花が咲くことはまれで、栽培の目的にもなりません。5 2
受粉後は大きな木質のさく果ができ、5つに裂けて直径およそ1.3 cmの丸い種子を放ちます。自然界ではこの種子が水に浮いて運ばれ、冠水する環境への適応をさらに後押ししています。5 6
栽培下でいちばん手軽なのは、新鮮な大粒の種子を実生で育てる方法です。湿った用土で暖かく保てばすぐに発芽し、根もとのふくらんだ特徴的な株になります。節のついた茎挿しも、暖かさと明るい間接光があれば可能ですが、根もとはふくらみません。幹がまだ柔らかい若い時期に数本を編み合わせることで、店頭でおなじみのパキラの樹形ができあがります。実生や挿し木に必要な暖かさは、関東のような地域では梅雨から夏にかけて得やすくなります。3 5
利用と注意点
温帯での主な用途は観賞で、幹を編み込んだ大型の観葉植物として親しまれています。耐寒性の目安はUSDAゾーン10〜12で、冬の気温がこれを下回る関東などでは屋外での越冬は難しく、室内の鉢植えとして育てるのが基本です。熱帯では日陰づくりや川岸の土留めにも使われ、種子は炒るか加熱して食用にされます。その味はクリやラッカセイにたとえられ、Guiana chestnut や Malabar chestnut という英名もここから来ています。6 5
安全面では、パキラは大型の観葉植物のなかでも特に安心できる部類です。ASPCA は Guiana chestnut の名で、猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。ペットに有害な成分は報告されておらず、動物のいる家庭でも選びやすい植物です。なお、生の種子はおいしくないため、食べる前に加熱するほうがよいでしょう。4 6
品種・混同しやすい種・近縁の植物
ほかの観葉植物のように斑入りの安定した園芸品種はなく、売られている姿の多くは仕立て方によるものです。若い幹を数本編み込むのは園芸上の工夫で、この種の植物学的な性質ではありません。購入の際は、編み込んだ幹が硬く締まっているか、根の状態、小葉がそろっているかを確かめておくと安心です。3
とくに取り違えやすいのは、同じ属の次の種です。
- Pachira glabra:Pachira aquatica の名で売られることが非常に多いが、果実が小さく、花の基部の形が異なる
- Pachira insignis:アメリカ大陸に自生する、同属のもうひとつの大型種
5〜9枚の小葉からなる掌状の葉、ふくらんだ幹の根もと、5つに裂ける大きなさく果。パキラとして売られている株が本当に Pachira aquatica かどうかを確かめるには、この3点がもっとも頼りになります。2 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Pachira aquatica Aubl.
- Royal Horticultural Society, Pachira aquatica
- Missouri Botanical Garden, Pachira aquatica
- USDA PLANTS Database, Pachira aquatica Aubl.
- Plants For A Future, Pachira aquatica
- Useful Tropical Plants, Pachira aquatica
- Tropicos / Missouri Botanical Garden, Pachira aquatica Aubl.
- ASPCA、Guiana chestnut(Pachira aquatica)の無毒植物情報
よくある質問
パキラに毒性はありますか?
いいえ。ASPCA はパキラを Guiana chestnut の名で、猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。大型の観葉植物のなかでは、ペットが口にしても危険が知られていない数少ない種類です。
パキラの幹はなぜ編み込まれているのですか?
編み込みは園芸上の仕立て方です。柔らかい若い幹を数本絡み合わせて、アジアで縁起物とされる装飾的な樹形に整えます。この種に備わった植物学的な特徴ではありません。
パキラの種子は食べられますか?
はい、炒るか加熱すれば食べられます。さく果の中の丸い種子はクリやラッカセイに似た味がし、Guiana chestnut や Malabar chestnut という英名の由来になっています。生のままではおいしくないため、加熱してから食べるのが無難です。
パキラにはどのくらいの光が必要ですか?
明るい間接光のもとで、葉がもっともきれいに育ちます。やわらかい日差しなら数時間は耐えますが、午後の強い直射日光に当たると小葉が葉焼けします。
パキラは大きくなるとどのくらいの高さになりますか?
室内では高さ2〜3 mの低木にとどまります。原産地の熱帯では湿地に生える樹木で、高さおよそ18 mに達することがあります。
パキラと間違えやすい植物はどれですか?
もっとも多いのは、同じ名で売られることの多い近縁種 Pachira glabra との混同です。果実が小さいこと、花の基部の形が違うことで見分けられます。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。




