ヤネバンダイソウ (Sempervivum tectorum, L. 1753)

ヤネバンダイソウ (Sempervivum tectorum) はピレネー山脈からバルカン半島南西部の山地に自生するベンケイソウ科の多年生多肉植物です。古代から屋根や壁に植えられ、落雷を防ぐという言い伝えもありました。肉厚な葉が密なロゼットをつくり、開花したロゼットは枯れますが、子株が後を継ぎます。

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学名Sempervivum tectorum
属Sempervivum
目Saxifragales

ヤネバンダイソウ, Common houseleek, Hens and chicks と Dach-Hauswurz

基本情報
毒性
ASPCAでは猫・犬・馬に無毒
管理の難易度
低い
植物タイプ
多肉植物 · ロゼット
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
フランスイタリアクロアチア
自生環境
岩場、石灰岩の崖錐、古い壁や屋根。日当たりがよく、やせた無機質の非常に水はけのよい場所に生育します。
季節性
開花期
夏
生育
休眠
休眠しない
生育速度
2/10
成熟までの期間
ロゼットは1〜3年で成熟し、一度開花すると枯れます
増やし方
ひこばえ分け, 種子
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
風に強く、低く密なロゼットは風を受けにくい
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌タイプ
軽い砂質土, 水はけのよい鉱物質土, 非常に水はけのよい土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

日なた

朝か夕方を中心に、1日数時間の直射日光に当てます。

日なたを好み、軽い半日陰にも耐えます
屋外
霜の当たらないロックガーデン, 日なたの花壇, コンテナ
鉢
テラコッタ鉢, 底穴のある鉢
形態
高さ5–20 cm株張り20–50 cm
葉
緑紫
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 葉 1
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 葉 2
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 葉 3
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 葉 4
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 葉 5
花
紫ピンク
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 花 1
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 花 2
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 花 3
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 花 4
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 花 5
果実
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 果実 1
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 果実 2
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 果実 3
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 果実 4
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 果実 5
樹形・草姿
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 2
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 3
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 4
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 5
樹皮
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹皮 1
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹皮 2
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹皮 3
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹皮 4
ヤネバンダイソウ(Sempervivum tectorum):原産地と利用法 — 樹皮 5

世界の分布

本来の自生域は、ピレネー山脈からバルカン半島南西部にかけての南ヨーロッパの山地です。古代から屋根や壁に植えられ、イギリスや中央ヨーロッパなど、自生域を大きく超えた地域で帰化しています。

  • 原産3
  • 移入1
  • ピレネー山脈(フランス、スペイン)
  • アルプス山脈(フランス、イタリア、スイス)
  • バルカン半島西部
  • イギリス

六角形:植物が見られる地域。緑の点:原産分布域。1

基本情報

ヤネバンダイソウ (Sempervivum tectorum L., 1753)はベンケイソウ科センペルビブム属の多年生多肉植物です。英語では Common houseleek や Hens and chicks と呼ばれます。属名はラテン語のsemper vivum、「常に生きている」に由来します。真冬にも葉が肉厚で緑を保つ、常緑の性質を表した名前です。 1 2

屋根との結びつきは種小名tectorumにも残っています。ラテン語で屋根を意味するtectumの複数属格で、かつては茅葺き屋根や壁に意図的に植えられました。根が屋根材を留めるとともに、落雷を防ぐと信じられていたためです。フランス語のjoubarbeも、雷の神ユピテルのひげを意味するJovis barbaに由来します。ドイツ語では Dach-Hauswurz と呼ばれます。 5

見分け方

灰緑色の肉厚な葉が50〜60枚ほど集まり、直径 4〜10 cm のロゼットをつくります。葉柄はなく、葉先はしばしば 赤紫色 を帯び、縁には細い毛が並びます。ロゼットは低いクッション状に密集し、年数を経た株では幅 20〜50 cm ほどに広がります。植えたばかりの単独の株とは、広がり方が大きく異なります。 5 4

十分に育ったロゼットは 一回結実性 で、一度だけ花を咲かせると枯れます。開花時には高さ約 20 cm の毛のある花茎が立ち上がり、平たい花序に8〜16個の赤紫色の星形花をつけます。先のとがった花弁をもち、夏の6〜7月に咲いて、花粉を運ぶ昆虫を引き寄せます。 4 5

開花後にロゼットが枯れても、病気とは限りません。一回結実性の植物が生活環を終えた自然な姿です。親株が咲く前から周囲に根づいていた子株が、株全体の命をつなぎます。子株が先に育っていなければ、親ロゼットが枯れた後には株が更新されず、空いた場所が残ります。 5

分類のポイント

Plants of the World Onlineが受容する学名はSempervivum tectorum L.で、1753年の『Species Plantarum』に公表されました。変異の多い種のため、著者によって変種、亜種、異名として扱われた歴史的な名前がいくつもあります。

  • Sempervivum calcareum Jord.、歴史的な学名
  • Sempervivum atlanticum Ball ex Hook.f.、歴史的な学名
  • Sempervivum montanum (L.) Bonnier & Layens、歴史的な学名

いずれも歴史的に使われた学名です。

名前をたどる際の基準は、二名法によるSempervivum tectorumです。 1 3

自然界にある変異を生かし、園芸ではロゼットの色や形を選抜した 何百もの品種 が生まれました。選抜の歴史は200年以上に及びます。売り場のラベルや流通名だけで正確な分類を判断するのは難しく、耐寒性を確認する際も、まずラテン語の学名を確かめることが役立ちます。 3

生息地と分布

ピレネー山脈からバルカン半島南西部までの、南ヨーロッパの山地が本来の自生域です。岩場、石灰岩の崖錐、古い壁など、やせた無機質の土があり、水はけの非常によい場所で育ちます。数日でも水がたまると根腐れを起こすため、こうした生息地の排水のよさが大切です。 1

古代から屋根を守るために植えられ、自生域の外にも広く定着してきました。特にイギリスや中央ヨーロッパでは、近年植えた株から離れた古い壁や茅葺き屋根に、昔の実生に由来する株が今も残っています。栽培の歴史と現在の分布を分けて考える必要があります。 6

生活環と繁殖

栽培で中心となるのは、子株を利用する 栄養繁殖 です。春に生じる側方の子株は、無機質の用土に触れると自力で根づきます。切り離した子株は2〜4週間で活着する一方、種から成株のロゼットになるには数か月かかります。春から初夏の株分けでは、親株一株から通常 4〜10株 を得られます。 5

種子をまく場合は、約 10 °C で 2〜6週間 ほどで発芽します。子株が手に入らないときには、コレクションに新しい遺伝的な変異を取り入れる方法です。親株と同じ特徴を早く引き継ぎたい場合は、数か月を要する種まきより、2〜4週間で根づく子株の利用が適しています。 6

利用と注意点

ロックガーデン、低い石垣、薄い植栽の緑化屋根、縁取り、水はけの非常によい鉢などで観賞します。ほかの岩場向きの多肉植物と組み合わせることもあります。Royal Horticultural Societyは、庭での信頼性を評価する Award of Garden Merit を本種に授与しています。 4

若葉は生でサラダに使われます。また、葉の汁は古代から、やけど、虫刺され、小さな皮膚の傷を和らげる外用の民間利用が伝えられてきました。ここで述べるのは歴史的な使い方です。 6

ペットとの暮らしでは、ASPCAがSempervivumのグループを、英名hens and chickensのもとで 猫、犬、馬に無毒 としています。犬が興味をもってロゼットをかじった場合にも参考となる分類ですが、日常の餌として与える意味ではありません。主な用途はあくまで観賞です。 7

品種・類似種・近縁種

同じ岩場の植栽に使うロゼット形の多肉植物とは、見分けが必要です。Echeveriaも英語でhens and chicksと呼ばれますが、強い寒さでは凍害を受けます。対してヤネバンダイソウは −20 °Cを下回る冬 にも保護なしで耐え、RHSの区分ではH7です。SedumやJovibarbaも一緒に植えられますが、主に花の形や子株の離れ方が異なります。Jovibarbaの子株は軽く触れるだけで外れますが、Sempervivumの子株は親ロゼットにしっかりつながっています。 4 5

購入する株は、正確な 学名 、親ロゼットの周囲にある健康な子株、葉の張りを確かめます。ロゼットが柔らかく水浸しなら、重い病気というよりも冬の過湿が原因であることが多く、選ぶ際の注意点になります。 4

主な参考文献

よくある質問

花が咲いたロゼットが枯れるのはなぜですか?

正常な生活環です。ヤネバンダイソウは一回結実性で、各ロゼットは一度だけ咲いて枯れます。親株の周りに根づいた子株が残るため、株全体は存続します。

ヤネバンダイソウは猫や犬に有毒ですか?

いいえ。ASPCAではSempervivum tectorumを含むSempervivumのグループを、猫、犬、馬に無毒としています。

ヤネバンダイソウはどのくらい寒さに耐えますか?

耐寒性は非常に強く、Royal Horticultural Societyの区分ではH7です。水はけがよければ、−20 °Cを下回るヨーロッパ大陸の厳しい冬にも耐えます。

屋根にちなんだ名前にはどんな由来がありますか?

種小名tectorumはラテン語で「屋根の」を意味します。フランス語名の由来はJovis barba、つまり雷の神ユピテルのひげです。根が屋根を安定させ、落雷を防ぐとの言い伝えから、古くは屋根に植えられました。

ヤネバンダイソウはどう増やしますか?

春から初夏に子株を分ける方法が最も簡単です。種まきでも増やせ、約10 °Cで2〜6週間ほどで発芽しますが、育つまでにはより時間がかかります。

エケベリアと間違えることはありますか?

はい。どちらもロゼット形で、英語の愛称hens and chicksも共通します。ただしヤネバンダイソウは耐寒性がはるかに強く、多くのEcheveriaと違って厳しい凍結に耐えます。

似ている植物

植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。