ナツボダイジュ (Tilia platyphyllos, )
ナツボダイジュ(Tilia platyphyllos Scop., 1771)はアオイ科の落葉高木で、ヨーロッパからイラン北部に自生します。大きな心形の葉と、葉裏全体を覆う白い毛、厚い殻に五つの目立つ稜を持つ果実でフユボダイジュと区別できます。
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Taken Apr 6, 2020 by laetitia vallee (cc-by-sa)
Taken Jun 2, 2021 by Ifrah Tabassum (cc-by-sa)
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世界の分布
POWO/WCVPはヨーロッパからイラン北部を自生域とし、主に葉の毛で区別される五亜種を認めています。グレートブリテン南西部には自生しますが、スコットランドとアイルランドには自然分布せず、帰化しているだけです。フランスでは主に東半分、ピレネー、コルシカ島に分布し、地中海沿岸の南部には自生しません。
基本情報
イタリアの植物学者ジョヴァンニ・アントニオ・スコポリは1771年、現在のスロベニアに当たるクライン地方から ナツボダイジュ(Tilia platyphyllos Scop.)を記載しました。アオイ科シナノキ属の受容種で、フランス語では大きな葉、または幅広い葉のシナノキを意味する名で呼ばれます。 1 6
庭で手早く見分ける目印は、近縁のフユボダイジュ Tilia cordata より大きな葉と、目立つ稜のある果実です。種小名 platyphyllos も、ギリシア語の platys(広い)と phyllon(葉)に由来し、葉の大きさの違いを直接示します。ドイツ語では Sommerlinde(夏のシナノキ)と呼び、花期が遅い Winterlinde と区別します。 2 5
見分け方
狭いドーム形の樹冠をつくる大きな落葉樹で、単植では通常 20–25 m、特によく育つと40 mに達する記録もあります。Tilia cordata は通常20–30 mです。若枝は赤みを帯びて薄い毛があり、年齢とともに無毛になります。若木の樹皮は滑らかな灰色ですが、後には暗褐色で、隆起が交差する網状の割れ目を持つ外樹皮になります。 6 2
左右非対称の心形の葉は 6–9 cm、例外的に15 cmに達します。葉裏全体を覆う白っぽい毛 が、確実に本種を見分ける最も信頼できる特徴です。Tilia cordata では、脈の分岐部だけに赤褐色または赤茶色の毛束があります。 8 6
淡緑色の長楕円形の苞を伴う下垂した集散花序に、強く香る淡黄色の花が 2–5個 つきます。Tilia cordata より1–2週間早く咲き、蜜も多く、ニレに関わるシジミチョウの仲間など、一部のチョウも訪れます。続く丸い果実は殻が厚く木質で、五つの非常に目立つ稜 を持ちます。薄く稜が目立たない Tilia cordata の果実との違いは、花後長く残ります。 6 2
分類と名称
学名 Tilia platyphyllos Scop. の下で、POWO/WCVPは主に葉身の毛によって五亜種を区別します。基本亜種 platyphyllos、より北方の subsp. cordifolia、バルカン半島とトルコの subsp. corinthiaca、両面無毛の subsp. pseudorubra、スロバキア固有の subsp. sitnensis です。 1
旧来の書籍や園芸カタログに現れる Tilia grandifolia と Tilia officinarum は同じ種を指し、受容名 Tilia platyphyllos を変えるものではありません。かつてのシナノキ科という園芸上の扱いに代わり、現在はアオイ科に置かれます。 4 6
容易に交雑する属の中で、Tilia platyphyllos と Tilia cordata は Tilia × europaea を生じます。この雑種は親種のいずれかの純粋な個体よりも、都市の並木にはるかに多く植えられます。アブラムシの豊富な甘露と幹の根元の多数の萌芽が目印で、街路のシナノキの多くが厳密にはどちらの親種でもない理由です。 6 2
生息地と分布
ヨーロッパ温帯からイラン北部までが、POWO/WCVPの示す分布域です。グレートブリテン南西部では石灰岩由来の土に自生しますが、スコットランドとアイルランドには自然分布せず、帰化しているだけです。 1
フランスでの主な分布は東半分、ピレネー、コルシカ島で、石灰質の山地林や峡谷では標高 1800 m に達します。地中海沿岸の南部には自生せず、見られるのは植栽個体です。石灰質の土が分布を左右し、酸性の岩盤では他の広葉樹に置き換わり、自然には定着しません。野生の群落は比較的珍しい一方、生垣や並木には非常によく植えられます。 8 5
原産域を離れても、温帯の公園樹や並木として大規模に植えられています。北米もその一つで、そこでは本種は自然には生育しません。石灰質の土の野生個体と都市の植栽個体という二つの姿が、Tilia cordata や、都市の締め固まった土により強い雑種 Tilia × europaea との混同につながります。 6 2
歴史と文化
新石器時代、丈夫な縄を作る人々は、若いシナノキの根元の樹皮に切れ目を入れて引き剥がし、約一か月水に浸していました。この浸漬で丈夫な繊維がほぐれ、それを撚って縄にしました。ヨーロッパで観賞用に植えられるはるか以前の技術です。 8
ガリアでは伝統的に村の中心を示す木でした。ゲルマンの人々にはしばしばオーク以上に崇敬され、裁きのシナノキ の下で裁判の集会が開かれました。同じ木が集まる場所や踊り場も兼ねることが多く、西ドイツの850を超える地名が現在もこの裁判の習慣を伝えています。 8
利用と注意点
乾燥花のお茶は、フランスで蜂蜜や春の樹液より古くから記録された用途です。参照した植物療法の資料によると、薄い抽出液には認められた鎮静作用がありますが、濃すぎる、または抽出時間が長すぎると逆に不眠を引き起こす可能性があります。早咲きで蜜の豊富な花から得られるシナノキ蜜も、養蜂家に求められています。 8 4
若葉はわずかにぬめりのある食感を楽しんで生のサラダにし、春に採った樹液はそのまま飲むか煮詰めてシロップにします。人・猫・犬に既知の毒性は認められておらず、有毒な部分を持つ多くの観賞樹とは異なります。 4 8
明るい色で軟らかな材は加工しやすく、彫刻の材料として好まれます。ただし風雨にさらし続けると早く腐り、時間とともに折れやすくなります。屋外での弱さから、伝統的な用途は建築の構造材より室内の道具に集中していました。 8
品種・類似種・近縁種
園芸資料に挙がる 'Rubra' は冬の鮮赤色の若枝が特徴で、RHSのアワード・オブ・ガーデン・メリットを受賞しています。色づく枝を見せるため、苗木生産者はしばしば頭木仕立てにします。'Aurea' は金色を帯びる葉、'Laciniata' は深く切れ込む葉身、'Örebro' は狭い円柱形で、限られた空間の並木に適します。 3 6
比較の相手として最も多いフユボダイジュ Tilia cordata は、葉がより小さく、赤褐色の毛束が脈の分岐部に限られ、開花が遅く、果実は薄く明瞭な稜を欠きます。街路樹の多くは雑種 Tilia × europaea で、アブラムシの甘露が多く、根元に多数の萌芽を生じます。純粋な Tilia platyphyllos や Tilia cordata では、この二つの特徴がそれほど明瞭にそろうことはありません。 6 2
カナリア諸島の聖樹ガロエは、干ばつの年に水を生むとされ、民間伝承では長くシナノキとして語られてきました。しかし植物学者が同定した実体は、カナリア諸島固有のクスノキ科 Ocotea foetens です。ナツボダイジュとは近縁関係にありません。 8
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Tilia platyphyllos Scop.
- Royal Horticultural Society, Tilia platyphyllos - ナツボダイジュ
- Royal Horticultural Society, Tilia platyphyllos 'Rubra' - 赤い枝のシナノキ
- Plants For A Future, Tilia platyphyllos データベース項目
- Tela Botanica / eFlore, 植物情報 Tilia platyphyllos
- Trees and Shrubs Online, Tilia platyphyllos
- USDA GRIN Taxonomy, Tilia platyphyllos
- Wikipédia (FR), ナツボダイジュ、歴史と伝説の節
よくある質問
ナツボダイジュには毒がありますか?
いいえ。参照した資料では人・猫・犬に既知の毒性は認められていません。若葉は生で食べられ、乾燥花をお茶にする伝統的な利用も記録されています。
フユボダイジュとはどう見分けますか?
ナツボダイジュは葉がより大きく、葉裏全体に毛があり、開花が早く、果実は厚く五つの稜が目立ちます。Tilia cordata は葉が小さく、赤褐色の毛束は脈の分岐部に限られ、果実は薄く明瞭な稜がありません。
街路の木は必ず Tilia platyphyllos ですか?
必ずしもそうではありません。多くは Tilia platyphyllos と Tilia cordata の自然雑種 Tilia × europaea で、豊富な甘露と根元の多数の萌芽が特徴です。
花をお茶に使えますか?
はい。フランスで最もよく記録された伝統的な用途です。採りたてを乾燥した花から薄く抽出すると鎮静作用がありますが、濃すぎる、または長時間抽出したお茶は、逆に不眠を引き起こす可能性があります。
フランスに自生しますか?
はい。ただし地域によります。POWO/WCVPはフランスを自生域に含めますが、主に東半分、ピレネー、コルシカ島に分布します。地中海沿岸の南部には自生せず、主に植栽されています。
村の裁きと結びつくのはなぜですか?
ゲルマンの人々の間では、村の中心のシナノキの下で裁判の集会を開きました。裁きのシナノキとして記録され、集合場所や踊り場という別の地域の用途を兼ねることもよくありました。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。




