セイヨウカジカエデ (Acer pseudoplatanus, L. 1753)

セイヨウカジカエデ(Acer pseudoplatanus)は、フランスを含む中央・南ヨーロッパの山地原産のムクロジ科の落葉高木です。濃緑色で5裂する掌状葉と、2個一組の翼果が特徴です。種子と若い実生にはヒポグリシンAが含まれ、馬に致死的な筋障害を起こすことがあります。

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学名Acer pseudoplatanus
属Acer
目Sapindales

セイヨウカジカエデ, シカモア, シカモアカエデ, Sycamore maple と Sycamore

基本情報
毒性
注意 : 人(子どもを含む), 猫 と 犬 · 有毒 : 馬
管理の難易度
低い
植物タイプ
葉の性質
落葉
寿命
多年草
原産国
フランスドイツスイスイタリアウクライナトルコ
自生環境
涼しく湿った山地林や谷沿いの森林、ブナ林やカエデ林。深く肥沃な適湿土の半日陰
季節性
開花期
春
収穫期
秋
生育
休眠
冬季休眠
生育速度
7/10
成熟までの期間
本来の大きさに達するまで数十年
増やし方
種子, 挿し木
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
強く、風の当たる場所や潮風に耐える
湿度
50–75 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
いいえ
用土
土壌pH
土壌タイプ
水はけのよい土, 肥沃な土, 深い土壌
塩類土壌
耐えられる
光と置き場所
日照条件
日なた〜半日陰
屋外
花壇, 地植え
形態
高さ1500–3500 cm株張り800–1500 cm
葉
緑黄紫
花
緑黄
果実
緑茶
樹形・草姿
セイヨウカジカエデ (Acer pseudoplatanus):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
緑茶

世界の分布

中央・南ヨーロッパと西アジアの山地が原産です。フランスからウクライナ、南はスペイン北部、イタリア、トルコ、コーカサスまで広がります。フランスでは涼しく湿った山地林に自生します。域外で広く植えられ帰化し、特にブリテン諸島では地域によって侵略的と評価されます。

  • 原産6
  • 移入2
  • 侵略的1
  • フランス本土
  • ドイツ
  • スイス
  • イタリア
  • ウクライナ
  • トルコ
  • アメリカ合衆国
  • ニュージーランド
  • イギリス

六角形:植物が見られる地域。緑の点:原産分布域。1

基本情報

ヨーロッパでも大型になるセイヨウカジカエデ(Acer pseudoplatanus L., 1753)は、ムクロジ科カエデ属の落葉高木です。掌状の葉と、2個ずつ対になった翼のある果実をつけます。英語のsycamoreと呼ばれる樹木の一つで、フランス語ではプラタナスに似た姿に由来する別名もあります。 1 5

フランスでは、涼しく湿り気のある山地の森林、生け垣、中標高地の植栽で親しまれています。大きな木陰をつくり、風にも比較的よく耐えます。明るい色の材は、古くから家具や楽器づくりで重用されてきました。 7 8

見分け方

対生する葉が、この木を調べる最初の手がかりです。葉は掌状に5裂し、長さは10〜16 cmほどで、縁には鋸歯があります。表面は濃緑色、裏面は淡い色です。葉柄は赤みを帯びることが多く、若い枝の葉柄を折ると乳状の汁が出ることも記されています。 4 2

春の展葉後には、小さな緑色から黄緑色の花が垂れ下がる総状花序をつくり、昆虫を引き寄せます。秋にできる翼果は2個一組で、翼の開きは鋭角です。翼が横に大きく開くノルウェーカエデと区別する目安になります。 3 5

若い幹の樹皮は灰色で滑らかですが、老木になると板状にはがれ、下から橙色がかった部分が現れます。直立する幹の上に幅広い丸い樹冠をつくり、高さは一般に20〜30 m、条件のよい老木では35 mに達します。 2 4

分類と学名

学名の記載は1753年にさかのぼり、リンネがAcer pseudoplatanus L.として発表しました。その後、種内の変異や園芸上の特徴に基づく多くの名がつけられましたが、多くは現在、同じ種の異名として整理されています。歴史的な表記には次のものがあります。

  • Acer pseudoplatanus var. fieberi Pax(歴史的な分類名)
  • Acer pseudoplatanus var. subobtusum DC.(歴史的な分類名)
  • Acer pseudoplatanus f. purpurascens (Jacob-Makoy) Pax(歴史的な分類名)
  • Acer pseudoplatanus var. dittrichii (Ortmann) Čelak.(歴史的な分類名)

同定の基準になる受容名はAcer pseudoplatanusです。AtropurpureumやBrilliantissimumのような名は、葉色などを選抜した園芸品種を示します。独立した種や、植物分類上の変種とは区別して扱います。 1 7

生育環境と分布

中央・南ヨーロッパの山地と西アジアが、本来の分布域です。フランスから東はウクライナへ、南側ではスペイン北部、イタリア、トルコ、コーカサスの山地へと続きます。フランスでは涼しく湿った山地林や谷沿いの森林に自生します。 8 7

深く肥沃で、適度な水分のある土壌と半日陰を好みます。風や海からの潮風にも比較的強く、露出した海岸でも利用されます。若木は明るい林床で育ち、林冠にすき間が生じると成長して上層へ伸びていきます。 4 3

観賞用や造林用に広く植えられた結果、原産域の外でも帰化しています。特に導入先のブリテン諸島ではよく実生が生じ、地域によって侵略的とみなされます。こうした導入地での評価は、ヨーロッパの本来の自生域とは分けて考える必要があります。 2 5

生活環と繁殖

葉が開いた後の春の花は昆虫に訪問され、秋には多数の翼果へと育ちます。果実は回転しながら落下し、風で運ばれます。冬の低温湿潤処理を経ると発芽しやすく、親木の周囲にも自然に多くの実生が現れます。 3 5

若い時期の成長は速く、特に深く適湿な土では早く大きくなります。そのため植栽後の効果を得やすい一方、庭内外に生える実生の管理も必要です。寿命は長く、適地では200年を超え、さらに長く生きる個体もあります。 2 4

栽培では秋に採った翼果の実生が基本種を増やす簡便な方法です。紫葉や斑入りの園芸品種は種子から同じ特徴が再現されないため、形質を保つには挿し木や同種の台木への接ぎ木が用いられます。 6 2

利用と注意点

街路、木陰づくり、造林に利用されるのは、旺盛な生育と耐寒性、風や潮風への耐性によります。白く均質で光沢のある木材は家具づくりに加え、弦楽器の材料として知られます。クレモナの名器を含む多くのバイオリンでは、波状の木目をもつ材が裏板や側板に使われてきました。 5 6

特に重大なのは馬への毒性です。種子と若い実生に含まれるヒポグリシンAは、重い筋障害である非定型ミオパチーを起こし、死亡につながることがあります。馬は主に秋や春、放牧中に翼果や実生を食べて中毒になります。樹下での放牧を避け、落ちた種子を取り除く配慮が必要です。人、犬、猫に対するリスクは低いとされています。 2 4

品種と似た植物

紫色の葉裏をもつAtropurpureumとSpaethii、春の新葉がサーモンピンクになるBrilliantissimum、クリーム色や黄色、桃色の斑が入るLeopoldiiとSimon-Louis Frèresなどが流通します。いずれも別種ではなく、特徴を保つため接ぎ木や挿し木で増やす園芸品種です。 2

似た葉をもつ樹木との区別には、果実や葉の切れ込みも役立ちます。

  • ノルウェーカエデ(Acer platanoides)は翼果の翼がほぼ水平に開き、葉色もより明るく見えます。
  • スズカケノキ属(Platanus)は掌状葉が似ていますが、球形の果実をつけます。
  • Acer campestreはより小型で、葉の裂片が丸みを帯びます。

濃い色の掌状葉、鋭角に開く翼果、板状にはがれる樹皮を合わせて観察すると、セイヨウカジカエデであるかを確かめやすくなります。 4 1

主な参考文献

よくある質問

セイヨウカジカエデに毒性はありますか?

種子と若い実生のヒポグリシンAが、馬にしばしば致死的な非定型ミオパチーを起こします。人、犬、猫のリスクは低いとされますが、樹下で馬を放牧しないようにします。

ノルウェーカエデとの見分け方は?

本種の翼果は鋭角に開き、ほぼ平行に見えることもあります。ノルウェーカエデ(Acer platanoides)では水平に開きます。葉は本種の方が濃色で、裏面の光沢も弱く見えます。

葉に黒い斑点ができるのはなぜですか?

Rhytisma属の菌によるタール斑病です。目立ちますが木への深刻な害は少なく、落ち葉を集めると翌年の発生を抑えやすくなります。

庭木に向いていますか?

丈夫で耐寒性があり、風や潮風にも耐えますが、大きくなり実生も多く生じます。広い敷地で木陰をつくる木や並木として利用します。

材が珍重される理由は?

白く均質で光沢があり、家具や弦楽器づくりに使われます。クレモナの楽器を含む多くのバイオリンの裏板や側板には、波状の木目をもつ材が使われます。

侵略的な樹木ですか?

フランスを含む原産域では森林の構成種です。導入先、特にブリテン諸島では多数の実生を生じ、地域によって侵略的とされています。

どのくらい大きくなりますか?

ヨーロッパでも大型のカエデで、通常は高さ20〜30 m、ときに35 mになります。幅広い樹冠の枝張りは15 mを超えることもあります。

紫葉の品種は別の種ですか?

いいえ。Atropurpureum、Brilliantissimum、Leopoldiiなどは葉の特徴を選抜した園芸品種です。性質を保つため、接ぎ木や挿し木で増やします。

似ている植物

植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。