サトウカエデ (Acer saccharum, Marshall 1785)

サトウカエデ(Acer saccharum)は、カナダ東部と米国北東部を原産とするムクロジ科の落葉高木です。丸い切れ込みをもつ5裂の葉、メープルシロップの原料となる春の甘い樹液、大型の温帯広葉樹の中でも強い耐陰性が特徴です。

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学名Acer saccharum
属Acer
目Sapindales

サトウカエデ, Sugar maple, Rock maple と Hard maple

基本情報
毒性
無毒 : 人(子どもを含む), 猫, 犬 と 動物 · 要確認 : 馬
管理の難易度
低い
植物タイプ
葉の性質
落葉
寿命
多年草
原産国
カナダアメリカ合衆国
自生環境
深く水はけのよい冷涼な土壌の落葉広葉樹林、谷、斜面、日陰の林床
季節性
開花期
春
収穫期
冬秋
生育
休眠
冬季休眠
生育速度
4/10
成熟までの期間
初結実は約30年後。樹液採取は30〜40年後から可能です
増やし方
種子, 挿し木, 接ぎ木
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
中程度です。着氷を伴う嵐では枝が折れることがあります
湿度
40–80 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
いいえ
用土
土壌pH
土壌タイプ
弱酸性〜中性の水はけのよい土, 深い土壌
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

日なた

日なた〜明るい半日陰
屋外
花壇, 地植え
形態
高さ2000–3500 cm株張り900–1800 cm
葉
緑黄オレンジ赤
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 葉 1
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 葉 2
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 葉 3
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 葉 4
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 葉 5
花
黄緑大きさ0.5–1 cm
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 花 1
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 花 2
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 花 3
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 花 4
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 花 5
果実
緑茶大きさ2–3 cm
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 果実 1
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 果実 2
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 果実 3
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 果実 4
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 果実 5
樹形・草姿
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 2
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 3
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 4
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹形・草姿 5
樹皮
緑茶
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹皮 1
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹皮 2
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹皮 3
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹皮 4
サトウカエデ(Acer saccharum):原産地と利用法 — 樹皮 5

世界の分布

自生域はカナダ南東部のマニトバ州からノバスコシア州、米国の北東部と中東部に広がり、ミネソタ州からアパラチア山脈沿いのジョージア州北部に達します。北緯42度より南では少なくなり、冷涼な谷などに限られます。

  • 原産2
  • カナダ
  • 米国

六角形:植物が見られる地域。緑の点:原産分布域。1

基本情報

甘い樹液を蓄えるサトウカエデ(Acer saccharum Marshall, 1785)は、ムクロジ科トチノキ亜科の大型の落葉樹です。カナダ東部から米国の北東部・中東部に自生します。 1 2

温帯の落葉広葉樹林では大きな群落の優占種となります。樹齢が200年を超え、ときには300年に達しても、春には甘い樹液を生み出し続けます。 7

米国の博物学者Humphry Marshallは、北米の樹木を扱った著書で本種を1785年に記載しました。名前は、糖分を含む春の樹液を濃縮してシロップにする利用に由来します。モヒガンなどの先住民は、ヨーロッパから金属製の鍋が持ち込まれるより前から、この樹液を利用していました。 7 6

カナダ国旗の図案はカエデの葉を様式化したもので、特定の植物種を厳密に示すものではありません。ただし本種と近縁のクロカエデは、その象徴と強く結びついています。本種はケベック州、オンタリオ州や米国の複数の州で州の木にも指定されています。 7

見分け方

樹高は通常20〜35 mで、密な丸い樹冠をつくり、老木では例外的に45 mに達します。対生する葉は普通5裂、ときに3裂し、裂片の間は丸いU字形で、縁には鋸歯がありません。アメリカハナノキ(Acer rubrum)の葉は、鋸歯が明瞭で切れ込みがV字形です。 7 3

葉柄を折ったときに見える透明な樹液は、ノルウェーカエデ(Acer platanoides)の白い樹液との区別に役立ちます。冬芽も尖った暗褐色で、ノルウェーカエデの先が丸い緑色または紫色の芽と異なります。都市の植栽で両種を見分ける際は、葉色以外も確かめると判断しやすくなります。 7

秋の葉は個体によって黄色、橙色、鮮紅色に変わるため、紅葉の色だけでは確実に同定できません。若木の樹皮は灰色で滑らかですが、年齢とともに不規則な板状に裂けます。 5 4

分類と学名

文献に現れる主な異名・歴史的な名前には、次のものがあります。

  • Saccharodendron saccharum (Marshall) Moldenke (サトウカエデの異名)
  • Acer barbatum Michx. (サトウカエデの異名)
  • Acer saccharum var. rugelii (Pax) Rehder (サトウカエデの異名)

かつてクロカエデ(Acer nigrum F.Michx.)を本種の変種や亜種とした分類もありました。現在のPOWOなどは別種として認めています。両者はよく似ており、自生地で交雑する場合もあるため、学名の確認が重要です。本種の受容名はAcer saccharumです。 1 7

自生地と分布

カナダのマニトバ州南東部からノバスコシア州にかけてと、米国のミネソタ州からアパラチア山脈沿いのジョージア州北部までが自生域です。北緯42度より南では、休眠に必要な冬の低温が得にくくなり、冷涼な谷などに生育が限られます。 1 7

アメリカブナと並ぶ強い耐陰性も、森林内での大きな特徴です。幼木は林冠に覆われた暗い場所で数年間生き延び、上に隙間ができて光が増すと成長を速めます。この性質によって、成熟林では本種がほぼ単独で優占する林分が生じます。 7 4

国際自然保護連合(IUCN)は本種を低懸念に分類しています。分布が広く個体数も多い一方、大気汚染、道路の塩、導入されたノルウェーカエデとの競争、都市土壌の締め固まりによる局地的な減少はあります。 8

生活環と繁殖

春の芽吹きの直前または同時に、目立たない黄緑色の小花を咲かせます。果実は翼の向きがほぼ平行な対の翼果で、長さは2〜3 cmです。秋に熟し、風に運ばれて散布されます。 7

種子は冬の低温を経て発芽します。種子をつくり始めるまで約30年を要し、幹の直径が25〜30 cmになるのは一般に30〜40年後です。樹液採取はこの太さを一つの目安にし、木に負担をかけすぎないよう行います。 7 4

冬の終わりに夜間の凍結と昼間の融解が繰り返されると、数週間にわたり樹液が流れます。糖度は年によって通常2〜6 %で、1 Lのシロップを得るには約32 Lの樹液が必要です。 6

利用と注意点

メープルシロップの生産は、古くからの樹液利用を受け継ぎ、現在はケベック州や米国北東部で大規模に行われています。ハードメープルと呼ばれる材は温帯広葉樹の中でも硬く、体育館などの床、家具、楽器、野球のバットに使われます。 7 6

人や家庭動物に全身性の毒性は報告されていません。馬は固有の資料が不足しており未確認です。日陰と紅葉を楽しむ都市の植栽にも用いられてきましたが、凍結防止塩に弱いことと土壌の締め固まりへの敏感さから、街路樹では都市環境に強い樹種へ置き換えられることがあります。 5 3

園芸品種と似た植物

都市向けの選抜では、暑さ、乾燥、土壌の締め固まりへの適応が重視されます。LegacyとGreen Mountainはこれらのストレスと葉の病気に比較的強く、Apolloは狭い場所に合う細い円柱形の樹形です。いずれも接ぎ木で維持される園芸品種で、独立した植物学上の変種ではありません。 7

見分ける際に比べたい近縁種は次のとおりです。

  • Acer platanoides, :樹液が白濁し、冬芽は先が丸く、緑色または紫色です。
  • Acer rubrum, :葉に鋸歯とV字形の切れ込みがあり、若枝が赤みを帯びます。
  • Acer nigrum, :クロカエデ。本種によく似ており、自生地で交雑する場合があります。
  • Acer saccharinum, :ギンヨウカエデ。葉はより深く切れ込み、角張った裂片をもちます。

特徴的な葉をまだ確認できない若木では、葉柄がある時期に樹液の色を確かめると区別の助けになります。サトウカエデでは透明、ノルウェーカエデでは白濁します。秋の色だけを見るより判断材料が増えます。 7

主な参考文献

よくある質問

猫や犬に毒性はありますか?

人や家庭動物に対する全身性の毒性は報告されていません。馬については固有の資料が足りず、状態は未確認です。

アメリカハナノキやノルウェーカエデとどう見分けますか?

折れた葉柄の樹液は透明で、ノルウェーカエデでは白濁します。冬芽は尖った褐色で、ノルウェーカエデの丸みのある緑色〜紫色の芽と異なります。アメリカハナノキは葉に鋸歯とV字の切れ込みがあり、若枝は赤みを帯びます。

樹液は何年目から採れますか?

幹の直径が25〜30 cm以上になった木が目安で、通常は30〜40年かかります。糖度によりますが、シロップ1 Lに約32 Lの樹液を使います。

なぜ日陰に強いのですか?

北米の広葉樹でも特に耐陰性が強い樹種です。幼木は閉じた林冠の下で数年間ゆっくり育ち、頭上に光の入る隙間ができると成長を速められます。

侵略的な植物ですか?

北米原産で、侵略的な樹種とは見なされていません。むしろ導入されたノルウェーカエデが多くの種子をつくり、一部地域で本種の自然更新を妨げています。

都市で衰弱しやすいのはなぜですか?

凍結防止塩、土壌の締め固まり、大気汚染への耐性が低いためです。これらが街路樹としての利用を減らし、都市環境に強い樹種への置き換えにつながっています。

寿命はどれくらいですか?

通常は約200年で、良好な森林環境では300年に達する個体も記録されています。

植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。