ノルウェーカエデ (Acer platanoides, )
ノルウェーカエデ(Acer platanoides)は、葉柄を折るとにじむ乳白色の樹液が特徴のムクロジ科の落葉高木です。ヨーロッパと西アジア原産で、成木は通常15〜25 m、ときに30 mに達します。18世紀に日陰をつくる木として北米に導入されましたが、現在は複数の州で侵略的外来種とされています。
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世界の分布
自生域はヨーロッパの大部分に及び、西はスペインやフランスから、中央ヨーロッパ、バルカン半島、ロシアを経て、東はコーカサスとイラン北部に達します。18世紀に都市の日陰をつくる木として北米へ導入され、広く帰化しました。欧州の自生域では普通の森林樹木ですが、北米の複数の州では侵略的外来種とされています。
基本情報
ノルウェーカエデ(Acer platanoides L.、1753)は、ムクロジ科カエデ属の大きな落葉樹です。葉柄を折るとすぐににじむ乳白色の樹液が特徴です。通常の樹高は15〜25 m、条件のよい木では30 mに達します。自生域はスペインやフランスから中央ヨーロッパ、バルカン半島、ロシアを経て、コーカサスとイラン北部まで続きます。 1 6
種小名platanoidesは「プラタナスに似た」という意味で、掌状の葉の形に由来します。プラタナス属(Platanus)とは属も科も異なります。自生地のヨーロッパでは森林にも都市にも普通に見られ、フランスでも近縁のセイヨウカジカエデと同様になじみのある樹木です。 6 7
見分け方
折れた葉柄に白い液がにじむかどうかは、野外で有用な目印です。セイヨウカジカエデやプラタナスでは、この乳白色の樹液は見られません。対生する葉は掌状で、尖った5裂、ときに7裂の裂片をもち、幅は8〜20 cmほどです。セイヨウカジカエデと大きさは似ていますが、樹液の違いを確認できます。 4 6
春にはヨーロッパの目安で4月ごろ、葉が開く前に黄緑色の小花が立ち上がる散房花序をつくり、ハチの蜜源になります。展葉後に咲くセイヨウカジカエデとの違いです。対になった翼果は3.5〜7 cmで、翼がほぼ水平に開きます。セイヨウカジカエデの翼果は鋭角に開きます。 6 3
灰褐色の樹皮は、年を経ると縦方向に細かく裂けますが、プラタナスのように板状にはがれません。樹冠は密で丸く、左右の釣り合いがよく、通常15〜25 m、ヨーロッパのよく育った木では30 mに達します。 6 5
分類のポイント
1753年にリンネが記載しており、古くから学名が与えられたカエデの一つです。他の多くのAcerと同じく、以前のカエデ科Aceraceaeから、属全体とともにムクロジ科Sapindaceaeへ移されました。 1
受容名の解釈に大きな難点はありませんが、園芸資料には歴史的な次の名前が残っています。
- Acer platanoides f. rubrum (Herder) Pax:品種階級の歴史的名称
- Acer platanoides f. dissectum J.Jacq. ex Schwer.:品種階級の歴史的名称
- Acer platanoides var. drummondii (J.Drumm. ex Schwer.) Geerinck:変種名
- Euacer platanoides (L.) Opiz:別属に置かれた名称
これらの名前は主に葉の特徴による選抜を指し、別々の種を意味しません。基準になるのは受容名Acer platanoides L.です。 1 7
生息地と分布
ヨーロッパの大部分から西アジアまでの広い範囲が、本種の自生域です。西端はスペインやフランス、東端はコーカサスとイラン北部に及びます。IUCNは広い分布と安定した個体数を踏まえ、低懸念(LC)と評価しています。 6 9
フランスでは平地の落葉広葉樹林、生け垣、林縁に生育し、ナラ類やトネリコ類と共存します。締め固まった土や大気汚染に耐えるため、都市の並木としても広く植えられています。 8 7
18世紀半ばに都市の日陰をつくる木として北米へ導入され、広く帰化しました。速い生長、多量の翼果、林床の植物を強く抑える密な木陰が重なり、北東部や中西部の複数の州で侵略的外来種とされています。そうした州では植栽が禁止されています。 3 4
生活環と繁殖
展葉前に咲く花は、葉が開ききる前の春にハチへ蜜を供給します。受粉した花から秋に多量の翼果が実り、風によって散布されます。 6 3
発芽には冬の低温湿潤処理が必要です。秋にまいた種子は翌春に発芽します。若木の生長は速く、成熟に近づくと明らかに緩やかになります。 5 4
栽培では、実生で基本的な種の性質を保てますが、Crimson Kingのような紫葉や斑入りの品種は種から同じ性質を再現できません。これらは本種を台木にした接ぎ木で増やします。 2 4
利用と注意点
日陰をつくる木や街路樹に選ばれるのは、速い生長、密な樹冠、都市のやせた土、締め固まった土、汚染への耐性のためです。明るい色で細かな木目の材は、ろくろ細工や小さな生活用品に使われます。樹液も濃縮してシロップにできますが、サトウカエデより糖分は少なめです。 5 4
種子が放牧馬に危険なセイヨウカジカエデとは異なり、参考データベースによれば本種は人や一般的な家庭動物に非毒性とされます。ただし馬での情報は未確認であり、家庭動物の記載から安全性を広げて判断できません。 1
自生域の外では、主な危険は生態系への影響です。北米では、多量の翼果と濃い木陰が在来樹種の更新を妨げ、侵略的と判断され、ときに販売も禁止されています。ヨーロッパでは長く在来の森林植物と共存してきたため、同じ樹勢をそのまま侵略性とは捉えません。 3 4
品種・類似種・近縁種
葉色や樹形で選ばれた園芸品種も、同じ種に含まれます。RHSの賞を受けたCrimson Kingは夏を通じて紫から深紅の葉を保ち、Crimson Sentryは同様の色で細い樹形になります。Globosumは接ぎ木した幹の上に小さな球形の樹冠をつくり、Drummondiiは幅広い不規則な白い縁取りをもちます。 2 4
外見が似ていても、次の特徴で区別できます。
- Acer pseudoplatanus(セイヨウカジカエデ):樹液は透明で、翼果は鋭角に開きます。
- Platanus(プラタナス属):葉は互生し、果実は球形です。葉が似ていても近縁ではありません。
- Acer campestre:葉が小さく裂片は丸みがあり、コルク質の樹皮を伴うことがあります。
セイヨウカジカエデやプラタナスとの比較では、葉柄の乳白色の樹液が手早い確認点です。翼果や樹皮を詳しく調べる前に、この特徴からAcer platanoidesを確かめられます。 4 6
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Acer platanoides L.
- Royal Horticultural Society, Acer platanoides Crimson King
- Missouri Botanical Garden, Acer platanoides
- NC State Extension, Acer platanoides (ノルウェーカエデ)
- Plants For A Future, Acer platanoides
- Trees and Shrubs Online, Acer platanoides
- Tela Botanica, Acer platanoides L.
- INPN / MNHN, Acer platanoides L., 1753 (cd_nom 79779)
- IUCN Red List, Acer platanoides:保全評価
よくある質問
ノルウェーカエデに毒性はありますか?
参考データベースでは人、犬、猫に非毒性とされます。葉柄を折ると出る乳白色の樹液にも、刺激性は報告されていません。ただし馬での安全性は資料がありません。
セイヨウカジカエデとの違いは?
本種は葉柄から乳白色の樹液を出しますが、セイヨウカジカエデにはありません。翼果はほぼ水平に開き、後者では鋭角になります。また本種は展葉前に咲き、後者は葉が出てから咲きます。
学名platanoidesにはどんな意味がありますか?
「プラタナスに似た」という意味で、掌状の葉が似ていることを表します。ただし両者は近縁ではありません。
侵略的な樹木ですか?
18世紀に導入された北米では侵略的とされ、北東部の複数の州で植栽が禁止されています。自生地のヨーロッパでは、森林や都市に普通に見られる樹木です。
どのくらい大きくなりますか?
通常は高さ15〜25 m、枝張り10〜20 mです。ヨーロッパには30 mを超える木もあります。
材や樹液は利用されますか?
明るい色のきめ細かな材は、ろくろ細工や小さな生活用品に使われます。樹液はシロップにできますが、サトウカエデより糖の収量はかなり低くなります。
Crimson Kingなどの紫葉品種は別種ですか?
いいえ。Crimson King、Crimson Sentry、Globosumは接ぎ木で増やす園芸品種で、別の種や植物分類上の変種ではありません。
注意が必要な病気はありますか?
枯死につながることも多いバーティシリウム萎凋病が主な危険です。タール斑病やうどんこ病は主に外観上の問題で、木に深刻な害を及ぼすことは少ないです。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





