ショウブ (Acorus calamus, )
ショウブ(Acorus calamus)は、香りのある剣形の葉をもつ水辺の多年草です。ショウブ科に属し、アジア温帯と北アメリカに由来します。ヨーロッパには中世から導入され、岸辺、溝、ヨシ原に帰化しています。
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Taken Aug 15, 2010 by Photoflora - Benoit BOCK (©)
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世界の分布
アジアと北アメリカの広い温帯域に由来します。ヨーロッパには中世から導入され、水辺に広く帰化しました。ポーランドなど一部の国では、湿地の侵略的外来植物に分類されています。
基本情報
ショウブ(Acorus calamus L., 1753)は、芳香のある根茎で広がる水辺の多年草です。ショウブ科唯一のAcorus属のうち、広く栽培される種です。現代の分類ではサトイモ科から分離されました。剣形の葉という見た目だけで、科の関係は判断できません。 2 1
葉も根茎も傷つけると、香辛料を思わせる特徴的な香りを放ちます。精油に含まれるβ-アサロンは、根茎を香辛料や薬として使ってきた歴史に関わる一方、1968年からのアメリカの食品用途禁止にも関係します。 5 7
見分け方
光沢のある緑の剣形葉が基部から直立して株をつくります。同じ岸辺に生えるキショウブより葉が細いのが特徴です。栽培株は高さ60〜100 cm、幅45〜60 cmほどで、十分に定着すると根茎で広がり、群落の直径が1 mを超えることもあります。 4 3
華やかなキショウブの花とは対照的に、ショウブの花は見過ごされがちです。晩春、葉状の花茎の側方に、緑から黄色がかった円柱状の肉穂花序を出します。大きく色鮮やかな花や目立つ仏炎苞がなく、葉に紛れるため、数年育てて初めて花に気づくこともあります。 4 3
栽培される多くの株は不稔の三倍体で、発芽できる種子をつくりません。花のあとに果実がほとんど見られないのも、この性質で説明されます。 4 8
分類のポイント
受容される学名はPOWOではAcorus calamus L.です。歴史的には多くの変種や品種が記載されましたが、現在は異名として扱われます。例としてvar. angustifolius (Schott) Engl.、var. americanus Raf.、var. vulgaris L.、var. europeus Raf.、f. submersa Glück、Acorus calamus-aromaticus Clairv.があります。 1
POWOがamericanusをA. calamusの異名とする一方、北米の一部資料では実用上区別しています。北米在来の二倍体集団ではβ-アサロンを含まず、アジア由来の三倍体株とは精油成分が異なります。利用上は分類階級だけでなく実際の化学型が重要で、採取した根茎とアメリカの規制との関係にも影響します。 1 8
生息地と分布
シベリアから中国、インド亜大陸までのユーラシア温帯と、北アメリカに由来します。北米の二倍体集団は、ヨーロッパに導入された株とは区別されます。地理的な由来と倍数性を一緒に見ることが、分布を理解する助けになります。 2 8
中世にはヨーロッパに持ち込まれ、岸辺、溝、ヨシ原に広く帰化しました。キショウブやセイヨウナツユキソウと生育場所を共有する水辺の植物です。 5
定着の強さが問題になる地域もあります。ポーランドの国の自然保護当局は侵略的外来植物として掲載し、ヨシ原や岸辺の在来植生への影響を中程度と評価しています。各国での扱いを、別の地域へそのまま当てはめないようにします。 9
根づいた群落は、根茎の栄養成長で広がります。年を重ねて岸辺に密生すると、ほかの水辺の植物が育つ余地を狭めます。種子ができない株でも、広がらないとは限りません。 4
生活環と繁殖
肉厚の根茎は冬に休眠し、水を多く含む土や水の層に守られます。春になると再び芽を出し、剣形の葉が新しい株をつくります。十分に定着した株では晩春に目立たない花が咲きます。 4
園芸用の多くの不稔株は、根茎の株分けで増やします。繁殖能力のある北米の二倍体集団と異なり、発芽できる種子をつくらないため、分散するのは水に運ばれたり庭の廃棄物に混じったりした根茎の断片です。 4 8
利用と注意点
伝統的な用途は幅広く、根茎の砂糖漬けや乾燥した香辛料、葉を使う編み物、精油の香料利用があります。乾燥根茎は貯蔵穀物のゾウムシ対策にも使われました。アーユルヴェーダでは消化や神経系に関わる民間薬として用いられましたが、現代の食用推奨とは別の歴史的利用です。 5
精油のβ-アサロンは、高用量の動物試験で発がん性が懸念される成分です。含有量は化学型により大きく異なり、北米の二倍体ではほぼなく、一部のアジア系三倍体では多くなります。FDAは1968年以降、アメリカ合衆国でショウブ、精油、抽出物を食品添加物として用いることを禁止しています。 7 8
ペットについては、一般的な分類ではショウブは有毒とされていません。それでも根茎や精油の大量摂取には注意が必要です。動物種ごとの十分なデータがあるわけではなく、非有毒という分類だけで無制限に食べられるとは判断できません。 5
品種・類似種・近縁種
Argenteostriatusは葉に縦方向のクリーム白色の縞が入り、RHSのAward of Garden Meritを受賞しています。Variegatusも流通で同じ斑入りを指すことが多く、購入前に実物を確認する必要があります。 6
混同しやすいのは、同じ岸辺に生えるキショウブ(Iris pseudacorus)です。剣形の葉は似ていますが、キショウブは大きな黄色い花で区別できます。開花前には、ショウブの傷ついた根茎の香辛料に似た香りが、葉の形だけより確かな手掛かりです。キショウブには同じ香りがありません。 4
同属のセキショウ(Acorus gramineus)はショウブよりかなり小型で、広い岸辺より鉢や小さな水鉢で栽培されることが多い種です。
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Acorus calamus L.
- ITIS, Acorus calamus L., TSN 564989
- Missouri Botanical Garden Plant Finder, Acorus calamus
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox, Acorus calamus
- Plants For A Future, Acorus calamus
- Royal Horticultural Society, Acorus calamus Argenteostriatus (v)
- US FDA, 21 CFR 189.110, ショウブとその誘導体
- Washington State University LCME, Acorusの研究対象(倍数性とβ-アサロン)
- Generalna Dyrekcja Ochrony Środowiska (ポーランド), ポーランドの外来植物
よくある質問
猫や犬に毒がありますか?
一般的な資料ではAcorus calamusは通常のペットに非有毒とされています。ただし根茎の精油には注意が必要で、FDAはβ-アサロンを理由に1968年から人の食品用途を禁止しています。
キショウブと間違えることがありますか?
開花前は間違えることがあります。どちらも岸辺に剣形の葉を出しますが、キショウブは大きな黄色い花、ショウブは葉に見紛う目立たない円柱状の肉穂花序をつけます。
花が見当たらないのはなぜですか?
ヨーロッパや北アメリカで栽培される多くの株は、アジア由来の不稔の三倍体です。花は目立ちにくく、発芽できる種子もつくりません。北アメリカの二倍体集団には繁殖能力があります。
ショウブの精油は食品に使えますか?
アメリカ合衆国では認められていません。FDAは、一部のアジア系化学型に含まれるβ-アサロンの発がん性の懸念から、1968年以降ショウブ、精油、抽出物の食品への添加を禁止しています。
侵略的に広がる心配はありますか?
一部の国では問題になります。ポーランドでは湿地の侵略的外来植物とされ、在来のヨシ原植生への中程度の影響が報告されています。
どうやって増やしますか?
多くの園芸用の不稔株では春の根茎の株分けで増やします。断片は庭の中で管理し、河川や自然の湿地に流出させないでください。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。




