サイザルアサ (Agave sisalana, )
サイザルアサ(Agave sisalana)はキジカクシ科の一回結実性の多肉植物で、葉から採れる繊維を目的に世界各地で栽培されています。確実な野生集団は知られておらず、メキシコ南部で栽培化された交雑由来の植物という説が有力です。数年間の葉の収穫を経て、一度だけ伸びる花茎に珠芽をつけ、親のロゼットは枯れます。
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葉子 · cc0
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Taken Sep 14, 2022 by Emi Gio (cc-by-sa)
Taken Jun 6, 2020 by mal Kelly (cc-by-sa)
Taken Feb 20, 2022 by Renaud Brochiero (cc-by-sa)
Taken Dec 12, 2020 by Gemma Schaap (cc-by-sa)
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世界の分布
サイザルアサの正確な原産地は不明で、確実な野生集団は確認されていません。メキシコ南部のチアパスからユカタン半島の間で栽培化された交雑植物という説が有力です。名は19世紀に繊維を輸出したユカタンのシサル港に由来しますが、現地で現在主に栽培されるのはAgave fourcroydesです。1830年代にHenry Perrineがフロリダへ導入し、繊維生産のためブラジルや東アフリカへ広まりました。
基本情報
サイザルアサ (Agave sisalana Perrine, 1838)は、キジカクシ科の一回結実性の多肉植物です。 Sisal や Sisal hemp とも呼ばれ、19世紀から繊維用に栽培されてきました。多くのリュウゼツラン属と異なり、確実な野生集団は知られていません。栽培株や、推定原産地から離れた場所で帰化した株が見られます。 2 3
繊維の呼び名はユカタン沿岸の シサル港 に由来します。19世紀、米国の植物学者Henry Perrineの働きかけで、ここから米国へ繊維が輸出されました。ただしユカタンでは主にヘネケン(Agave fourcroydes)が栽培されます。二つの繊維が同じ商品名で売られた歴史が、今も続く混同につながっています。 5
見分け方
外観の特徴は、目立つ茎のない密なロゼットです。灰緑色から緑色の肉厚の葉は 長さ1〜1.6m になり、葉縁は滑らかか、ほぼ滑らかです。明瞭な鉤状の歯がない点は、園芸店で並ぶことの多いAgave americanaとの区別に役立ちます。 3
生産に利用するロゼットでは、繊維を採れる葉は一般に 200〜250枚 に及び、下側から順次収穫します。中心部の生長は続きますが、利用できる繊維は葉の重さの約 4% です。残る葉肉と水分は剥皮処理で取り除きます。 5
葉を収穫する期間を通じて、花茎が伸びるまでは茎が目立たない 無茎状 です。茎がなく葉縁が滑らかという組み合わせで、同じ乾燥した庭に植えられるAgave americanaやAgave angustifoliaなどの棘の多い種と見分けられます。 4
分類のポイント
POWO/WCVPの採用する学名はAgave sisalana Perrineです。関連する異名や種内分類名には、次のものがあります。
- Agave sisalana var. armata Trel.
- Agave sisalana f. armata (Trel.) Trel.
- Agave rigida var. sisalana (Perrine) Engelm.(いずれも異名)
この植物の由来には未解決の点があります。植物学者 H. S. Gentry はユカタン半島よりも チアパス に起源を求め、Agave angustifoliaとAgave kewensisの古い交雑に由来する可能性を示しました。在来の繊維栽培で固定されて広がったという見方ですが、調査できる野生集団がなく、結論は出ていません。 1 5
分類上は、ヘネケンを指すAgave fourcroydesの単なる異名として扱わないことが大切です。POWOは両者を別種として認めています。商取引の歴史が密接に結びついていたため、流通や園芸の場では今も混同されます。 1 8
生息地と分布
自然の野生生育地が確認されていない点は、分布を考える際の前提です。生育する各地で非在来として報告され、フロリダでも栽培された後に、道端などで逸出株が見つかっています。 4
1830年代のフロリダへの導入後、繊維作物として大規模に広まりました。ブラジルは2020年に約 8万6000トン を生産する世界最大の生産国となりました。東アフリカでは植物学者Richard Hindorfが1893年ごろに現在のタンザニアへ導入しました。マダガスカル、中国、メキシコも主要な生産地です。 5 6
導入先では繁殖力にも注意が必要です。フロリダでは侵略性を持つ可能性があるとされ、ハワイでは帰化しています。放棄された農園を起点に、道端や以前の農地に密な集団をつくることがあります。 4 5
生活環と繁殖
一つのロゼットが生涯に一度だけ開花する 一回結実性 です。通常は 7〜10年 で、 6m を超えることもある花茎を伸ばします。この開花を終えた親ロゼットは枯れます。 3
花茎では、十分な数の発芽可能な種子に代わって、多くの 珠芽 ができます。小さな株の形になった珠芽は、地面に落ちると自ら発根します。発芽率の低い種まきよりも栽培では確実で、すばやく株数を増やす仕組みです。 5 3
開花に至る前の数年間は、葉の収穫を続けられます。 3〜4年 から下葉を定期的に採っても、中央の芽を傷つけなければ、中心部は生長し続けます。 6
利用と注意点
採取する主な製品は サイザル繊維 です。鈍い刃の機械で生葉を押しつぶし、ブラシで葉肉と樹液を除く 剥皮処理 を行います。東アフリカには水に浸す浸漬処理もあります。かつての主用途は綱やひもでしたが、現在は敷物、ジオテキスタイル、靴、ガラス繊維やゴムを含む複合材の補強にも使われます。 5
切った葉の樹液には、刺激性のある サポニン や シュウ酸カルシウム が含まれます。人や動物の皮膚につくと接触皮膚炎を起こします。誤食による重い急性毒性は知られていませんが、収穫や剪定では手袋を着けてください。 3
栽培地の造成によって、当初は各地の在来林が置き換えられました。一方、化学肥料や深耕が不要なことは、集約的な作物に比べて土壌への負荷を抑えます。主な環境リスクは、剥皮処理の排水を未処理で流すことによる河川汚染です。 5
品種・類似種・近縁種
1913年にTreleaseが記載した var. armata は、葉縁の歯が目立つ型です。商業栽培のサイザルアサはほぼすべて葉縁が滑らかです。クリーム色の覆輪を持つ 'Variegata' は観賞用で、繊維生産には用いられません。 1
比較する機会が多いのは、次の近縁種です。
- Agave fourcroydesはヘネケンで、葉はより長く棘を持つこともあり、ユカタンの同じ農園で栽培されてきました。
- Agave angustifoliaはより小型で棘が多く、Gentryの仮説では親候補です。
- Agave americanaはかなり大型で、サイザルアサにない目立つ鉤状の葉縁の歯を持ちます。
現場では、株全体の大きさや色より 葉縁 を先に確認すると見分けやすくなります。サイザルアサでは滑らかなのに対し、同じコレクションに植えられる近縁のAgave fourcroydesやAgave angustifoliaでは、ほぼ常に歯があります。 4
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Agave sisalana Perrine(サイザルアサ)
- International Plant Names Index, Agave sisalana Perrine(サイザルアサ)
- Plants For A Future, Agave sisalana(サイザルアサ)
- Atlas of Florida Plants, Agave sisalana(サイザルアサ)
- Wikipedia (EN), Sisal (Agave sisalana)(サイザルアサ)
- USDA PLANTS Database, Agave sisalana 植物情報(サイザルアサ)
- NCBI Datasets, Agave sisalana 分類記録(サイザルアサ)
- Tropicos / Missouri Botanical Garden, Agave sisalana Perrine(サイザルアサ)
よくある質問
ヘネケンと同じ植物ですか?
いいえ。サイザルアサとヘネケン(Agave fourcroydes)は別種です。ユカタンのシサル港から長年一緒に出荷され、同じ商業名で売られたため、名前の混同が残っています。
猫や犬に有毒ですか?
葉の樹液に含まれるサポニンとシュウ酸カルシウムには刺激性があり、人や動物に接触皮膚炎を起こします。誤食によって強い毒性を示す植物には分類されていません。
鉢植えで花が咲かないのはなぜですか?
珍しいことではありません。サイザルアサは一般に7〜10年後に一度だけ開花して枯れる植物です。鉢植えや冷涼な気候では、開花に至らないこともあります。
野生のサイザルアサはありますか?
確実な野生集団は知られていません。メキシコ南部で生じた、Agave angustifoliaを親に持つ可能性のある栽培化された交雑植物が、栽培によって世界へ広がったという説が有力です。
サイザル繊維はどうやって採りますか?
生の葉を押しつぶしてブラシでしごき、繊維だけを残す剥皮処理で採取します。繊維は葉の重さの約4%です。東アフリカでは水に浸して組織を分解する方法も行われます。
似ている植物との違いは何ですか?
特に混同されるのは、葉がより長く棘を持つこともあるヘネケン(Agave fourcroydes)と、親候補に挙げられる、小型で棘の多いAgave angustifoliaです。
温帯でも栽培できますか?
冬に屋内へ取り込む鉢植え、または特に温暖な地域の地植えで栽培できます。気温が−5℃を下回らないことが目安で、十分な排水性も欠かせません。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。








