ペカン (Carya illinoinensis, )
ペカン(Carya illinoinensis)は、米国中南部とメキシコ北東部原産のクルミ科の大きな落葉樹です。薄い殻の実を採るため世界各地で栽培され、長い複葉、裂け目のある樹皮、熟すと外皮が4つに開く果実が特徴です。
続きを読むペカン, Pecan と Sweet pecan






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世界の分布
米国中南部のミシシッピ川流域、アイオワ州南部とイリノイ州からテキサス州、ケンタッキー州西部に自生し、メキシコ北東部のコアウイラからハリスコ、ベラクルスまで続きます。1880年ごろに始まった商業栽培は自生域を大きく越えて広がりました。
基本情報
ペカン(Carya illinoinensis (Wangenh.) K.Koch, 1869)は、成木で高さ20–40 mになるクルミ科の大きな落葉樹です。Wangenheimが1787年にJuglans illinoinensisとして記載し、Karl Kochが1869年にCarya属へ移したことで現在の学名になりました。 1
果実の呼び名pecanは、殻を割るのに石が必要なクルミ類を指したアルゴンキン諸語の語に由来します。指す木の範囲は地域によって異なりました。フランス語では木と実を別の語で呼びますが、英語のpecanは両方に使われます。 7
ペカンを含むCarya属は約20種からなり、主に北米と東アジアに分布します。ペカンはその中で最も大きくなり、果実のために最も広く栽培される種です。 8
見分け方
成木の樹高は通常20–40 m、枝張りは12–23 mに達し、非常に古い木では幹の直径が1 mを超えることもあります。灰色から淡褐色の樹皮には、加齢とともに規則的な長方形の裂け目が現れます。葉のない冬にも役立つ手がかりです。 2 3
互生する 奇数羽状複葉 は全長30–70 cmで、鋸歯のある披針形の小葉を9–17枚つけます。緑の葉は秋に黄色くなってから落葉します。 2
果実の肉質の外皮は緑から褐色に変わり、熟すと4つに裂けて長さ3–6 cmの細長い堅果を出します。殻が薄く先端がとがるのが特徴です。中にはしわのある甘い仁があり、他のCarya属植物より 薄い殻 と合わせて識別点になります。 3
分類のポイント
1787年にFriedrich Adam Julius von WangenheimがJuglans illinoinensisとして記載した後、1869年にKarl Kochが現在の組み合わせを確立するまで複数の学名が使われました。古い文献で見かける主な異名は次のとおりです。
- Juglans illinoinensis Wangenh., 基礎異名、1787年
- Juglans pecan Marshall:異名、1785年
- Carya pecan (Marshall) Nutt.:異名、1842年
- Carya oliviformis (F.Michx.) Nutt.:異名、1818年
- Hicorius pecan (Marshall) Britton:異名、1888年
購入時の基準になるのは受容名のCarya illinoinensisです。これらの異名は古い本や苗木カタログにも現れるため、違う種と取り違えないよう学名を照合します。 1 8
生息地と分布
北米での自生域は米国中南部に広がり、ミシシッピ川流域からテキサス州、ケンタッキー州西部に及びます。さらにメキシコ北東部のコアウイラからハリスコ、ベラクルスへ続きます。氾濫原の深い沖積土や川沿いの林に生える木です。 1 7
実が充実するには長く暑い夏が必要です。夏が涼しすぎたり短すぎたりすると、殻だけの実や仁の育ちが悪い実になります。商業栽培は1880年ごろに始まり、自生域を大きく越えて拡大しました。メキシコは世界生産のほぼ半分を担い、米国とおおむね並んでいます。 2
国際自然保護連合(IUCN)はペカンを 低懸念(LC) と評価しています。自生域が広く世界各地で栽培されることが、種の消失リスクを低く保つ背景です。 5
生活環と繁殖
雄花と雌花を同じ木に別々につける雌雄同株の植物です。雄花は長く垂れる尾状花序、雌花は小さな穂にまとまり、北米の自生域では4–5月に風によって受粉します。 3
雄花と雌花の成熟時期がずれる 雌雄異熟 があります。雄花が先に花粉を放出するI型(雄性先熟)と、雌花が先に受粉できる状態になるII型(雌性先熟)があり、品種によって異なります。補い合う型の2品種を植えると、1本だけの場合より 他家受粉 が安定します。 3
種から育てたペカンでまとまった初収穫を得るまでには一般に8–10年かかり、本格的な収穫には気候によってさらに時間が必要です。選抜品種の接ぎ木苗はより早く実をつけますが、幼木のうちから直根が深く伸びるため後からの移植は難しくなります。 3 4
利用と注意点
収穫した実は生やローストで食べ、菓子にも使います。米国南部のペカンパイは代表的な料理です。脂質の多い仁からは食用油も採れ、硬く木目のある材は家具や肉の燻製に使われます。 4
人にもペットにも、この種自体に固有の毒性は記録されていません。ただし、ほかのナッツと同様、 かびた実 や酸敗した実は除きます。かびがマイコトキシンを作る場合があり、これは保存に伴うリスクです。 4
テキサス州は1919年にペカンを州の木に、1982年にはその実を州のナッツに指定しました。その後、米国のほかの4州でも同様の象徴的な選定が行われています。 6
品種・類似種・近縁種
商業栽培の開始以来、多数の接ぎ木品種が生まれました。19世紀に選抜された「Stuart」は米国南東部に広く普及した歴史的品種です。「Desirable」は商業栽培の代表格ですが、多湿条件では黒星病に弱い面があります。「Pawnee」と「Kanza」は早熟性や耐寒性を高めた品種で、従来の栽培地域の外でも利用されます。 2
近縁のCarya ovataやCarya cordiformisは、より丸く厚い殻の果実をつけます。ペカンは長さ3–6 cmの細長い先のとがった実と薄い殻で区別できます。また、同じクルミ科でもJuglans属のクルミは、丸くしわのある殻を持ち属も異なります。 3
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Carya illinoinensis (Wangenh.) K.Koch
- NC State Extension, Carya illinoinensis (ペカン)
- Missouri Botanical Garden, Carya illinoinensis
- Plants For A Future, Carya illinoinensis
- IUCN Red List of Threatened Species, Carya illinoinensisの評価
- Texas State Library and Archives Commission, テキサス州の象徴(ペカン)
- USDA PLANTS Database, Carya illinoinensisの種情報(CAIL2)
- GBIF Backbone Taxonomy, Carya illinoinensis
よくある質問
ペカンはクルミの仲間ですか?
同じクルミ科ですが、厳密にはクルミ属Juglansとは別のCarya属です。フランス語などの「ペカンのクルミ」に相当する呼び名は、分類上の同一性を意味しません。
実がつかないのはなぜですか?
他家受粉ができていないことがよくあります。1品種だけでは雄花と雌花の時期が合わないことがあるため、開花の型が補い合う別品種を植えると改善できます。
実は犬や猫に有毒ですか?
この種に固有の毒性は記録されていません。ただし、かびた実や酸敗した実は除きます。かびがマイコトキシンを作る場合があります。
収穫できるまで何年かかりますか?
実生ではまとまった初収穫まで一般に8–10年、本格的な収穫にはさらに時間がかかります。選抜品種の接ぎ木苗はより早く実をつけます。
成木を移植できますか?
難しい作業です。幼木のころから深い直根を伸ばし、掘り上げると傷めやすいため、若い苗を最終的に育てる場所へ直接植えることが勧められます。
侵略的な植物ですか?
侵略的な植物としての記録はありません。国際自然保護連合では低懸念と評価され、自生域の外でも広く栽培されています。
ほかのCarya属の木とはどう違いますか?
Carya ovataやCarya cordiformisより殻がはるかに薄く、果実は丸形というより細長く、先端がはっきりとがります。
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。


