ガジュマル (Ficus microcarpa, )



ガジュマル(Ficus microcarpa)は、クワ科イチジク属の大型の樹木で、熱帯・亜熱帯アジアから西太平洋にかけてが原産です。日本もその自生域に含まれます。野生では気根に覆われた高さ数十メートルの絞め殺し植物になりますが、室内向けには根元のふくらんだ盆栽仕立ての株が主に流通しています。
続きを読むChinese banyan, Indian laurel と Ginseng ficus

世界の分布
Ficus microcarpa の自生域は、インドから中国、日本にかけて広がり、東南アジアと西太平洋を経てオーストラリアのクイーンズランドにまで及びます。街路樹として広く植えられ、フロリダ、ハワイ、地中海沿岸などでは自生域の外で野生化しています。こうした導入地域は、本来の自生域とは区別して扱う必要があります。
基本情報
ガジュマル(Ficus microcarpa L.f.)は、クワ科イチジク属に属する大型のイチジクの仲間です。英語では Chinese banyan、園芸流通では人参ガジュマル(ginseng ficus)の名でもよく見かけます。種小名 microcarpa は「小さな果実の」という意味で、属のなかでも特に小さい果実にちなんでいます。1 2
日本の園芸店では主に観葉植物として扱われ、根元のふくらんだ盆栽仕立ての株がもっとも多く出回っています。小さく滑らかで光沢のある葉をつけ、強い剪定にもよく耐えるため、鉢の中で樹形を作りやすい木です。3 4
見分け方
まず目を引くのは葉です。長さ5〜12 cmの小さな楕円形の葉は革質でつやがあり、細い枝に互生します。先端は短くとがり、中央の葉脈がはっきりしていて、側脈は5〜9対です。枝や葉を切ると、イチジク属に特有の白い乳液がにじみ出ます。4 5
人参ガジュマルとして売られる株では、地上に持ち上げた根からなる、滑らかで明るい色のふくらんだ幹がいちばんの目印になります。大きく育った木は、枝から地面へ向けて細い気根を垂らします。これがバンヤン(banyan)と呼ばれる木に共通する性質です。3 2
室内で育てる場合は、高さ1〜2 mの低木か盆栽にとどまります。熱帯の自生域では高さ25 mに達するのが普通で、ときにそれを超え、横に広がる樹冠と密な気根の網をつくる本物の高木です。4 1
知っておきたい分類
本種は1782年に Ficus microcarpa L.f. として記載されました。イチジク属は非常に大きな属で、古い学名や園芸名がいまも混在しています。押さえておきたい主なシノニムと変種は次のとおりです。
- Ficus microcarpa var. microcarpa
- Ficus microcarpa var. latifolia (Miq.) Corner
- Ficus microcarpa var. crassifolia (W.C.Shieh) J.C.Liao
- Ficus microcarpa var. nitida F.C.Ho
- Ficus retusa auct.、しばしば誤って当てられる名
もっとも注意が要るのは Ficus retusa です。この名は長いあいだ microcarpa として栽培される株を指してきましたが、実際には別の種に当たります。Ginseng や Tigerbark といったラベルは仕立て方や園芸上の選抜を示すもので、植物学上の種ではありません。確かな拠りどころは受理名の Ficus microcarpa です。1 3
生育環境と分布
本来の分布は熱帯・亜熱帯アジアで、インドから中国、日本にかけて広がり、東南アジアと西太平洋を経てオーストラリアのクイーンズランドにまで達します。低地の湿潤林だけでなく、海岸や林縁、さらにはマングローブにも生え、ある程度の耐塩性をもつのはそのためです。1 2
熱帯のイチジク属の多くと同じく、半着生の状態で一生を始めることがよくあります。種子が宿主の木の股や壁、岩の上で芽を出し、若い株はそこから地面まで根を下ろします。根が太るにつれて支えを締めつけることがあり、本種が絞め殺しのイチジクに数えられるのはこのためです。4 5
街路樹として広く植えられた結果、自生域の外でも、とくにフロリダやハワイ、地中海沿岸で野生化し、地域によっては侵略的とみなされています。日本を含む本来の自生域とは違い、これらの地域の集団は人が持ち込んだものです。2 1
生活環と繁殖
花のつき方はイチジク属に共通する独特なもので、花は中空の花嚢(イチジク状花序)の内側に閉じこめられています。受粉を担うのは、Eupristina verticillata という専門の小さなハチです。自生域の外ではこの送粉者がいないため結実はまれで、こぼれ種で殖えることもほとんどありません。ただし送粉者が持ち込まれた地域もあり、そこでは本種が侵略的になっています。2 4
果実はごく小さく、柄がなく葉腋に集まってつきます。直径はおよそ1 cmで、熟すにつれて緑からピンク、紫へと色を変え、鳥やコウモリの餌になります。室内での開花は目立たず、栽培の目的になることはありません。5 3
家庭でガジュマルを増やす方法は、節のついた茎挿しと取り木が中心です。取り木は、背が伸びすぎた株を仕立て直したいときにとりわけ役立ちます。どちらの方法でも、植えつける前に切り口の乳液を乾かしておくことが大切で、そうしないと切り口から液がにじみ続け、傷がふさがりにくくなります。節のすぐ下で切った挿し穂を暖かく明るい間接光の当たる場所に置けば、4〜8週間で最初の根が出ます。市販の人参ガジュマルはもっと手間のかかる仕立て方によるもので、土の中で太らせた根を地上に持ち上げ、枝分かれした穂木を接いで、あのふくらんだ姿をつくります。3 4
利用と注意点
現在の主な用途は観賞です。室内では大型の観葉植物や盆栽として、熱帯では緑陰樹や街路樹として植えられています。強い剪定に耐え、古い枝からもよく芽吹くため、盆栽の素材として特に好まれます。耐寒性の目安はUSDAゾーン10〜12で、冬の最低気温がこれを下回る地域では、寒い季節は室内で管理するのが無難です。アジアのいくつかの国では、樹皮や葉、気根が伝統医療の調合にも使われてきましたが、臨床的な裏づけは確立していません。2 5
白い乳液には軽い刺激性があります。肌の弱い人が触れると赤みやかゆみが出ることがあり、口にすると口の中の刺激や軽い消化器の不調を起こすことがあります。ASPCA はイチジク属を猫と犬に有毒と分類しており、症状は一般に中程度です。動物や小さな子どもの手の届かない場所に置き、剪定の際は手袋を着けると安心です。6 7
品種・混同しやすい種・近縁の植物
店頭に並ぶさまざまな姿は、別々の種ではありません。Ginseng はもっとも一般的な根元のふくらんだ仕立て、Tigerbark は明るい色のまだらな樹皮が特徴です。Moclame と Green Island は葉が密でコンパクトにまとまる選抜品種、Hawaii は斑入りで、ほかより多くの光を必要とします。購入の前に、品種名、根の状態、葉の密度を確かめておくと安心です。3
よく取り違えられるのは、次の植物です。
- Ficus benjamina:ベンジャミン。枝先が垂れ下がる
- Ficus retusa:長く microcarpa の栽培株に誤って当てられてきた名
- Ficus elastica:インドゴムノキ。葉がずっと大きく厚い
小さく強い光沢のある葉、人参仕立ての株に見られる明るい色のふくらんだ幹、白い乳液、ごく小さな果実。ガジュマルとして売られている株が本当に Ficus microcarpa かどうかを確かめるには、これらがもっとも信頼できる手がかりです。4 1
主な参考文献
よくある質問
ガジュマルには毒性がありますか?
白い乳液は、皮膚や目、消化管に対して軽い刺激性があります。ASPCA はイチジク属を猫と犬に有毒と分類していますが、症状はたいてい軽いものです。動物や小さな子どもの手の届かない場所に置き、剪定のときは手袋を着けると安心です。
人参ガジュマルは別の種ですか?
いいえ。人参ガジュマルは、土の中で太らせた根を地上に持ち上げ、枝分かれした穂木を接いだ Ficus microcarpa です。園芸上の仕立て方であり、独立した種や植物学上の変種ではありません。
ガジュマルの葉が落ちるのはなぜですか?
急な落葉は、置き場所の移動、冷たいすきま風、水の与えすぎや不足をきっかけに起こることがほとんどです。購入直後や引っ越しのあとによく見られるストレスで、温度と水やりを安定させると落ち着きやすくなります。
ガジュマルと間違えやすい植物はどれですか?
よく混同されるのは、枝が垂れる Ficus benjamina と、長くこの種に誤って当てられてきた Ficus retusa です。小さく光沢のある葉、白い乳液、ごく小さな果実がよい手がかりになります。
ガジュマルにはどのくらいの光が必要ですか?
明るい間接光で、もっとも葉の状態がよくなります。朝のやわらかな日差しなら数時間は耐えますが、強い直射日光は葉を傷め、落葉を招きます。
ガジュマルはどのくらいの大きさになりますか?
鉢植えや盆栽では1〜2 mほどにとどまります。熱帯の自生域では大きな絞め殺しの木となり、高さ25 mに達することも珍しくなく、多数の気根を伸ばします。
ガジュマルは侵略的になりますか?
自生域の外では、フロリダ、ハワイ、地中海沿岸などで野生化し、地域によっては侵略的とみなされています。日本は本来の自生域に含まれます。フランス本土では栽培植物にとどまり、侵略性は報告されていません。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。




