ラベンダー (Lavandula angustifolia, Mill. 1768)

ラベンダー(Lavandula angustifolia Mill.)は、POWO が受理名として扱うシソ科の芳香性の小低木で、フランス、イタリア、スペインに自生します。灰緑色の細い葉、断面が四角い茎、夏に咲く香り高い花穂が目印ですが、ラバンジンやほかのラベンダー属の種と取り違えないよう注意が必要です。

続きを読む
学名Lavandula angustifolia
属Lavandula
科Lamiaceae
目Lamiales

イングリッシュラベンダー, コモンラベンダー, English lavender, Common lavender, Narrow-leaved lavender と Spike-oil plant

基本情報
毒性
ASPCA によれば猫・犬・馬に有毒。口に入れないよう注意注意 : 人(子どもを含む) · 有毒 : 猫, 犬 と 馬
管理の難易度
中程度
植物タイプ
芳香性亜低木 · 常緑低木
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
フランススペインイタリア
自生環境
温帯の開けた乾燥地で、水はけのきわめてよい場所。石の多い斜面、やせた石灰質または中性の土壌、日当たりのよい環境
季節性
開花期
夏
収穫期
夏
生育
生活環
多年草
休眠
休眠しない
生育速度
5/10
成熟までの期間
本格的に咲くのは2年目以降
樹冠径
60–150 cm
増やし方
挿し木, 種子
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
中程度。若い株は冷たく湿った風から守る
湿度
30–60 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌pH
土壌タイプ
鉱物質土, 非常に水はけのよい土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

一日を通して強い直射日光が当たる場所に置きます。

室内
保護環境での播種, 温室
屋外
日なたの花壇, 地植え, コンテナ, 花壇
鉢
底穴のある鉢, 深鉢, テラコッタ鉢
形態
高さ0.3–1 m株張り0.6–1.5 m
葉
緑青
花
紫青ピンク白
果実
茶
樹形・草姿
ラベンダー(Lavandula angustifolia):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
緑茶

世界の分布

POWO によれば、自生域はスペイン北東部からイタリアにかけてで、フランス、スペイン、イタリアが自生地です。イギリスなどの記録は導入や栽培によるもので、英名の由来となった原産地を示すものではありません。

  • 同定記録5.2万
  • 原産分布域3
  • フランス原産
  • スペイン原産
  • イタリア原産

黄〜オレンジの点:国別に記録された同定情報の集中度。緑の国:資料に基づく原産分布域。 GBIF出典 · 原産分布域の出典 POWO(キュー王立植物園).

基本情報

ラベンダー(Lavandula angustifolia Mill.)は、シソ科ラベンダー属の受理された種です。POWO はこの学名を1768年刊行の『Gardener's Dictionary』第8版に結びつけており、IPNI も同じ省略著者名 Mill. を記録しています。1 2

イングリッシュラベンダー、コモンラベンダー、English lavender といった呼び名は、あくまで通称です。「English」とあってもイングランド原産という意味ではありません。POWO はイギリスを導入された地域に含めており、RHS もイギリスとアイルランドの自生種ではないと述べています。1 3

香りや花色、商品名よりも、同定の拠りどころとして確かなのは学名です。栽培されるラベンダー類は多くの特徴を共有していますが、そのすべてが L. angustifolia にあたるわけではありません。4

見分け方

こんもりと茂る常緑の小低木で、株全体に香りがあります。RHS によれば、樹形はコンパクトな低木状で高さおよそ0.5〜1 mになり、灰緑色の細い葉をつけ、夏に淡い紫から濃い紫の花が短い穂になって咲きます。3

生きた株で役立つ特徴は NC State が整理しています。葉は対生、単葉で線形から披針形、全縁、灰緑色から青みを帯び、もむと香ります。茎は断面が四角く、細かい毛があり、花は茎の先の穂につきます。5

花は紫から青紫のことが多いものの、園芸品種にはピンクや白もあります。色だけでは決め手にならないため、木質化する株姿、細い葉、花穂、香り、学名入りのラベルを合わせて確かめることが大切です。5 6

知っておきたい分類

POWO、IPNI、GBIF はいずれも Lavandula angustifolia Mill. を基準となる学名としています。Lavandula officinalis や Lavandula vera といった古い名前は園芸関係の資料に今も見られますが、別種ではなくシノニムや旧名です。1 3 4

  • Lavandula officinalis
  • Lavandula vera DC.
  • Lavandula spica:資料によって正しくも誤ってもあてられるため、扱いには注意が必要

精油や市販の原料では、この点が特に重要になります。「ラベンダー」という表示が指すのは、一つの種のこともあれば、園芸品種、交雑種、香料原料のこともあります。製品の香りの成分を通称だけから推し量ることはできません。1 7

生育環境と分布

POWO によれば、自生域はスペイン北東部からイタリアにかけてで、フランス、スペイン、イタリアが自生地にあたります。同じ資料は、イギリス、ドイツ、オーストリアなど、導入された地域もいくつか挙げています。1

栽培の要点も、この生態に沿っています。日なた、水はけのよい土、石灰質や中性の土への適応、そして滞水に弱い性質です。RHS は重い土では排水を改善するよう勧め、IFAS も湿った重い土、とくに冬の過湿で株が傷みやすいと指摘しています。3 6

侵略性について、フランスでは問題とされていません。POWO はフランスの自生種としており、手元の植物学・園芸学の資料にも、フランスで侵略的とする根拠は見当たりません。IFAS の「not known to be invasive」という記述は園芸面での裏づけにはなりますが、北米での状況を述べたもので、各国の法的な位置づけを示すものではありません。1 6

栽培と生活環

株元に木質の部分が残り、そこから伸びる葉のついた枝に夏の花が咲く。これが小低木としての育ち方です。剪定の考え方もこの構造から決まり、花後に切り戻して株を詰めることはできますが、RHS は古い木質部まで切り込まないよう勧めています。3

鉢植えでも花壇でも、失敗の原因で最も多いのは水のやりすぎです。IFAS の要約では、日当たりがよく、乾いてややせた土が向いており、重く湿った土では冬に傷みやすくなります。梅雨や高温多湿の夏が続く地域では、雨の当たらない場所への移動や高植えなど、過湿を避ける工夫がいっそう大切です。6

殖やし方は種まきか、夏の半熟枝挿しです。特定の園芸品種の性質を保ちたい場合は、挿し木のほうが確実です。実生の株に個体差が出るのは、選抜された園芸植物としてはごく普通のことです。3

利用・毒性・食用について

資料で裏づけのある用途は、観賞と香りに関するものです。縁取り、ロックガーデン、プランター、ドライフラワー、ポプリ、サシェ、香料、送粉者を呼ぶ庭などに使われます。RHS は、ミツバチなどの送粉昆虫に蜜と花粉を提供する植物に分類しています。3 6

NC State は花に「edible」の価値があるとしていますが、慎重さは欠かせません。量は示されておらず、家庭で口にすることが勧められているわけでもありません。食用の花、庭の植物、香り製品、濃縮された精油は、それぞれ別のものとして扱う必要があります。5

動物については、ASPCA がラベンダーを犬・猫・馬に有毒と分類しており、リナロールと酢酸リナリルを原因物質に挙げています。NC State も人に対する重症度は低いとしたうえで、同様の消化器症状を示しています。株そのもの、とりわけ濃縮された抽出物は、動物や子どもの手の届かない場所に置いてください。8 5

医療上の推奨は取り上げていません。伝統的な使い方やリラックス効果、精油にうたわれる効能を論じるには、臨床的な枠組み、処方、禁忌の情報が必要ですが、参照した園芸資料はそれを提供していません。8

品種・混同しやすい種・病害虫

RHS と IFAS は、'Hidcote'、'Munstead'、'Folgate' など、いくつかの園芸品種や選抜系統を挙げています。これらの名前は株の大きさや花色、庭での姿を選ぶ手がかりにはなりますが、種の学名に代わるものではありません。3 6

最もよく混同されるのはラバンジン(Lavandula x intermedia)です。RHS はこれを交雑種のラバンジンとして扱い、シノニムに Lavandula hybrida(angustifolia x latifolia)を明記しています。見た目は近くても、単なるラベンダーとして記録すべきではありません。7

ほかに注意したいのは、蝶の羽のような苞が目立つ Lavandula stoechas、スパイクラベンダーとして知られる Lavandula latifolia、そして同じシソ科の香草でも葉と花の形が異なるローズマリーです。迷ったときは、細い対生の葉、茎先の花穂、木質化したコンパクトな株姿、完全な学名を組み合わせて確認するのが最も確実です。5 4

栽培上の病害虫として、RHS はローズマリーハムシ、アワフキムシ、灰色かび病、まれにナラタケ病を挙げています。なかでも重要なのは、Xylella fastidiosa の高リスク宿主植物とされている点です。出どころの不確かな苗を、確認なしに感染リスクの高い地域のあいだで移動させないよう注意してください。3

主な参考文献

よくある質問

イングリッシュラベンダーはイギリス原産ですか?

いいえ。POWO はフランス、スペイン、イタリアを自生域とし、イギリスは導入された地域に分類しています。

ラベンダーが冬に枯れてしまうのはなぜですか?

最も多い原因は、乾いた寒さよりも、重い土や株元に水がたまることです。

ラベンダーは短く刈り込んでもよいですか?

いいえ。RHS は古い木質部まで切り込まないよう勧めています。生きた葉を必ず残してください。

ラベンダーは食べられますか?

NC State は花に食用価値があるとしていますが、量やレシピは示しておらず、食用の花と濃縮された精油を同じものとして扱っているわけでもありません。

ラベンダーは動物に有毒ですか?

ASPCA によれば、猫、犬、馬に有毒です。挙げられている症状は主に消化器系のもので、濃縮された精油には特に注意が必要です。

似ている植物

植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。