ローズマリー (Salvia rosmarinus, )



ローズマリー(Salvia rosmarinus)は、かつて Rosmarinus officinalis と呼ばれていたシソ科の常緑亜低木で、地中海沿岸が原産です。細く硬い葉は強い香りをもち、四角い茎はやがて木質化します。乾いた庭の植栽としても、料理用のハーブとしても重宝されるのはこの性質のためです。
続きを読むマンネンロウ と Rosemary
一日を通して強い直射日光が当たる場所に置きます。

世界の分布
POWO は Salvia rosmarinus の自生域を地中海沿岸としています。フランスでの分布は地中海地方に限った在来のもので、国全体に野生化しているという意味ではありません。
基本情報
ローズマリーの受理名は Salvia rosmarinus Spenn. で、シソ科アキギリ属(Salvia)に属します。料理書や園芸店、古い植物図鑑では今も Rosmarinus officinalis の名をよく見かけますが、POWO はこれを受理名の同基準異名(ホモタイプシノニム)として扱っています。1 2
姿は常緑の低木または亜低木で、香りが強く、地中海性気候に適応しています。日本ではカタカナのローズマリーが一般的な呼び名で、和名のマンネンロウは図鑑などで目にする程度です。アキギリ属への移行を意識するなら学名を添えておくと確実ですが、料理の場面でそこまで気にする人は多くありません。2 3
ですから、二つの学名はどちらも覚えておく価値があります。現在の分類には Salvia rosmarinus、歴史的な文献や料理、園芸の情報を探すときには Rosmarinus officinalis です。この二つを別々の植物として紹介するのは誤りです。1 4
見分け方
株の形は品種によってまちまちで、直立するもの、弓なりに枝垂れるもの、こんもり丸くなるもの、地を這うものがあります。RHS が示す園芸上の幅はかなり広く、高さ15 cmほどの低いタイプから2 m近い低木まであり、成株の横幅は1.5〜2.5 mに達することがあります。5
若い茎は断面が四角く、これはシソ科によく見られる特徴です。やがて木質化します。葉は対生する単葉で、線形の細い革質、香りが非常に強く、表は濃い緑、裏は白い毛に覆われています。縁が裏側へ巻き込むため、小さな針のように見えます。6 5
花は小さな唇形花で、ふつうは淡い青から紫、品種によっては白や淡いピンクになります。咲くのは主に春から夏で、条件がよければ秋にも返り咲きます。乾いた果実は褐色の小さな分果に分かれますが、日常の同定にはあまり役立ちません。5 6
知っておきたい分類
受理名 Salvia rosmarinus は Spenner が1835年に発表したもので、POWO はこの扱いを支える文献として Drew らの研究を挙げています。2017年のこの論文は、Rosmarinus を含むいくつかの小さな属を、広義の Salvia にまとめるよう提案しました。1 7
文献やカタログ、ラベルで出会う可能性のある主な名前は次のとおりです。
- Rosmarinus officinalis L.
- Rosmarinus angustifolius Mill.
- Rosmarinus officinalis var. angustifolius (Mill.) DC.
- Rosmarinus laxiflorus de Noé
- Rosmarinus prostratus H.J.Veitch
- Salvia fasciculata Fernald
いちばん紛らわしいのは名前の似かたです。Salvia rosmarinus はローズマリー、Salvia officinalis はセージ(薬用サルビア)で、別の種です。どちらも香りのよいシソ科ですが、性質も使い方も注意点も、そのまま置き換えられるものではありません。1 2
生育環境と分布
POWO が示す自生域は地中海沿岸で、フランス、スペイン、イタリア、ギリシャ、北アフリカ、トルコ、地中海の島々などに在来分布します。NC State もおおむね同じ見方をとり、イギリスやアメリカ合衆国などを導入地域として区別しています。1 6
フランスで「在来」といっても、国じゅうに自生しているわけではありません。ガリーグと呼ばれる低木林、乾いた斜面、岩場、海辺、水はけのよい庭といった地中海地方の環境に生える植物で、それ以外の地域では主に鉢植えや低い生け垣、ロックガーデン、日なたのコンテナで栽培されています。3 5
育て方もこの生育環境から考えるとわかりやすくなります。日なた、やせ気味からほどほどの肥沃さの用土、徹底した水はけ、よい風通しです。ローズマリーは乾燥や潮風には比較的強い一方、冷たく水の抜けない土を苦手とし、冬に鉢が水浸しになるほうが、乾いた土での短い寒さより危険なことが少なくありません。梅雨どきや高温多湿の夏に蒸れやすい地域では、鉢を雨の当たらない場所へ移し、風通しを確保しておくと安心です。5 6
侵略的とする評価を裏づける資料は、参照したなかには見当たりません。フランスでも、地中海地方では在来種、それ以外の地域では栽培植物という位置づけです。1 6
生活環と栽培
ローズマリーは木質の常緑多年生植物です。生長は中程度で、RHS によれば成木の大きさになるまで5〜10年かかります。NC State は、栽培下では高さ1.2〜1.5 mほどの、直立して丸くまとまる低木になるのが一般的だとしています。5 6
開花は春に始まり、夏まで続くことが多い植物です。ミツバチやチョウなどがよく訪れるため、料理用としてだけでなく、乾いた庭や送粉者を呼ぶ庭の植栽としても評価されています。5 6
種子からも殖やせますが、発芽は遅く、品種の性質がそのまま受け継がれるとは限りません。特定のタイプを残したい場合、園芸の資料が勧めるのは主に半熟枝挿し、取り木、すでに根づいた株の株分けです。5 6
資料に照らして起こりやすい病気は、湿気に関係するものです。うどんこ病、灰色かび病、株元や根の腐敗が挙げられます。室内ではアブラムシ、カイガラムシ、コナジラミ、ハダニにも気を配りたいところです。屋外について RHS は、ローズマリーハムシ、セージヨコバイ、カイガラムシを挙げています。5 6
利用と注意点
もっとも確かな用途は料理です。葉は肉や野菜、パン、ビネガー、ハーブティー、ミックスハーブの香りづけに使われます。NC State は花も食べられるとしていますが、料理で主に使うのはやはり葉です。6
観賞面では、乾いた庭や縁取り、コンテナ、低い生け垣、ロックガーデン、海辺の庭に向きます。枝はドライフラワーやポプリ、香り袋にも使えます。化粧品や精油としての利用もありますが、料理に使う葉とは濃度がまったく異なります。5 6 3
ペットについてもっとも直接的な資料は ASPCA です。旧学名 Rosmarinus officinalis で掲載されている Rosemary の項では、犬、猫、馬に対して無毒と分類されています。とはいえ、大量に食べさせてよいという意味ではなく、どんな植物でもかじれば消化器の不調を起こすことはあります。8
精油は別に考える必要があります。Merck Veterinary Manual によれば、精油は揮発性成分を濃縮した抽出物で、口、皮膚、呼吸のいずれからも吸収されることがあり、猫はある種の曝露にとくに弱いとされています。獣医師に相談せずに、動物のいる場所でローズマリーの精油を塗ったり拡散させたりするのは避けたほうがよいでしょう。9
また RHS は、皮膚にアレルギーを起こす可能性を指摘し、扱うときに手袋などで保護するよう勧めています。これは普段の食用を否定するものではなく、剪定や大量の収穫、濃縮した形での利用に限った注意です。5
品種・混同しやすい種・近縁の植物
品種の違いは、主に株の形、比較的な耐寒性、花色に表れます。NC State が例に挙げるのは 'Arp'、'Prostratus'、'Tuscan Blue'、'Albus'、'Irene'、'Majorca Pink'、'Salem'、'Severn Sea' などです。いずれも園芸上の名前で、学名 Salvia rosmarinus に代わるものではありません。6
取り違えに気をつけたいのは、次の植物です。
- Salvia officinalis:セージ。同じく料理に使われる別種
- Lavandula angustifolia:乾いた庭で一緒に使われるが、葉の形が異なる
- Thymus vulgaris:背が低く、葉がずっと小さい
- Santolina chamaecyparissus:灰色の香りのよい葉をもつが、花も香りも異なる
- 匍匐性のローズマリー:姿は変わっても S. rosmarinus であることに変わりはない
確実に見分けるには、常緑で木質の株姿、裏の白い線形の対生葉、樹脂のような香り、唇形花、そしてラベルの学名を組み合わせて確かめてください。5 6
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Salvia rosmarinus Spenn.
- International Plant Names Index, Salvia rosmarinus
- GBIF Backbone Taxonomy, Salvia rosmarinus Spenn.
- Drew et al. 2017, Salvia united: The greatest good for the greatest number
- Royal Horticultural Society, Salvia rosmarinus rosemary
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox, Salvia rosmarinus
- ASPCA、ローズマリーの無毒植物情報
- Merck Veterinary Manual、動物における精油中毒
- フランス国立自然史博物館(MNHN)、ローズマリー
よくある質問
Rosmarinus officinalis が Salvia rosmarinus になったのはなぜですか?
現在の分類学の資料では、Salvia rosmarinus が受理名とされています。Rosmarinus officinalis は、料理書やラベル、検索の場面で今も役に立つシノニムです。
ローズマリーは食べられますか?
はい。葉と、ときには花も料理用のハーブとして使われます。ただし、それによってローズマリーの精油が食品や動物用の製品として扱えるようになるわけではありません。
ローズマリーは猫や犬にとって有毒ですか?
ASPCA はローズマリーを犬、猫、馬に対して無毒と分類しています。それでも、普段と違う量を食べれば消化器の不調を起こすことはあります。
ペットのいる部屋でローズマリーの精油をディフューザーで使ってもよいですか?
慎重に考える必要があります。Merck によれば、精油は濃縮されたもので、吸入、皮膚、経口のいずれからも吸収されることがあり、猫はとくに影響を受けやすいとされています。
ローズマリーが冬に枯れてしまうのはなぜですか?
もっとも多い原因は、冷たく湿った用土です。ローズマリーは、水浸しの鉢よりも、水はけのよい土での適度な寒さのほうによく耐えます。
ローズマリーは侵略的な植物ですか?
いいえ。参照した資料では、フランス南部を含む地中海地方に自生する在来種として扱われており、侵略的外来種とする評価は見当たりません。
似ている植物
植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。



