マレーヤマバショウ (Musa acuminata, Colla 1820)

マレーヤマバショウ(Musa acuminata)は、インド亜大陸からニューギニアにかけての南アジア・東南アジアに自生するバショウ科の多年草です。およそ7000年前に栽培化が始まり、キャベンディッシュから小型の二倍体品種まで、世界で栽培されるデザート用バナナのほぼすべてが、この種を直接または部分的な祖先としています。

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学名Musa acuminata
属Musa
科Musaceae
目Zingiberales

バナナ, Edible banana と Wild banana

基本情報
毒性
無毒人(子どもを含む), 猫, 犬 と 馬
管理の難易度
中程度
植物タイプ
宿根草
葉の性質
常緑
寿命
多年草
原産国
インドマレーシアインドネシアフィリピンパプアニューギニア
自生環境
熱帯林の湿った谷、林縁、湿地、樹林に覆われた斜面。海抜0 mから1200 mまで
季節性
開花期
夏
収穫期
夏秋
生育
生活環
多年草
休眠
休眠しない
生育速度
8/10
成熟までの期間
果房は約4か月で実る。その後偽茎は枯れ、吸芽から再び伸びる
増やし方
ひこばえ分け, 種子
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
弱い。大きな葉が風で裂けるため、風の当たらない場所を選ぶ
湿度
60–85 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
いいえ
用土
土壌pH
土壌タイプ
肥沃な土, 水はけのよい土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

朝か夕方を中心に、1日数時間の直射日光に当てます。

光について
日なた。軽い半日陰にも耐える
室内
サンルーム, 加温温室
窓からの距離
南向きの大きな窓から30〜50 cm、または温室やサンルーム
屋外
日なたの花壇, 風よけのあるバルコニー
鉢
大型コンテナ, 底穴のある重量鉢
形態
高さ2–8 m株張り1.5–3 m
葉
緑
花
白クリーム
果実
緑黄
樹形・草姿
マレーヤマバショウ(Musa acuminata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
緑

世界の分布

Musa acuminata の自生域は南アジアと東南アジアで、インド亜大陸からマレー地域(マレーシア、インドネシア、フィリピン)に広がり、ニューギニアにも個体群があります。各地で栽培化されたのち、人の手で世界中の熱帯地域に広まりました。フランス領アンティル諸島もそのひとつで、商業生産ではキャベンディッシュが主流です。

  • 原産5
  • 移入2
  • インド
  • マレーシア
  • インドネシア
  • フィリピン
  • パプアニューギニア
  • オーストラリア
  • 東アフリカ

六角形:資料に基づく地域。緑の点:原産分布域。分布状況の出典 POWO(キュー王立植物園).

基本情報

マレーヤマバショウ(Musa acuminata Colla, 1820)は、バショウ科の多年生草本で、野生のバナナにあたります。高く伸びる偽茎は木材ではなく、葉鞘が幾重にも固く巻き重なってできたものです。そのため植物学的には樹木ではなく、世界最大級の草のひとつに数えられます。1 2

イタリアの植物学者ルイージ・アロイジオ・コッラが1820年に記載しました。現在では、栽培されるデザート用バナナのほぼすべてが本種を直接または部分的な祖先としていることがわかっています。1950年代から世界の店頭を占めてきたキャベンディッシュ群も、その例外ではありません。3 4

見分け方

偽茎の高さは亜種や栽培条件によって2〜8 m、株張りは1.5〜3 mほどになります。櫂のような葉は長さ数メートルに及ぶことも多く、風を受けると中肋に沿って簡単に裂けます。硬い葉で風に耐える樹木とは、この点で見分けがつきます。5 6

花序は花茎の先から垂れ下がります。紫色の苞がクリーム色がかった白い花の列を包み、基部寄りの雌花が果実になり、先端のつぼみには雄花が集まります。野生型の果実には長さ5〜6 mmの硬い種子がぎっしり入っていますが、店で買うバナナに種は見当たりません。不稔の三倍体クローンで、発芽できる種子をつくれないためです。5 4

知っておきたい分類

本種には野生の亜種がいくつかあり、インド亜大陸からニューギニア、クイーンズランド北部にかけて地理的な連なりをなしています。

  • Musa acuminata subsp. banksii:ニューギニア
  • Musa acuminata subsp. errans:フィリピン
  • Musa acuminata subsp. malaccensis:マレーシアとスマトラ
  • Musa acuminata subsp. microcarpa:ボルネオ
  • Musa acuminata subsp. siamea:カンボジア、ラオス、タイ
  • Musa acuminata subsp. zebrina:ジャワ

これらの野生個体群、とくに errans と zebrina は、二倍体AA品種の直接の親にあたります。その交雑に不稔性と単為結果を重視した選抜が加わって、デザート用バナナの三倍体AAA群が生まれました。さらに Musa balbisiana の関与によって、プランテンのAAB群とABB群ができています。7 3

生育環境と分布

南アジアと東南アジアが本来の生育域で、インドやスリランカからミャンマー、タイ、ベトナム、マレーシア、インドネシア、フィリピンへと続き、ニューギニアにも個体群があります。標高に応じて、湿った谷、林縁、湿地、樹林の斜面に生え、海抜0 mから1200 mまで見られます。4 1

栽培化はおよそ7000年前、ニューギニアとウォーレシア地域で始まりました。知られている限り最も古い栽培植物のひとつで、種なし果実が選ばれるより前は、繊維と食用の雄花を目的に利用されていたと考えられています。7 4

原産地の外では、人の手によって熱帯の全域に栽培が広がりました。カリブ海のフランス領アンティル諸島もそのひとつで、マルティニークとグアドループの商業生産では、本種のみに由来するキャベンディッシュ系品種が大半を占めています。6 8

生活環と繁殖

開花するのは成熟した偽茎で、多くは9〜15か月の生長を経てからです。その後、果房が4か月ほどで実ります。収穫が終わると偽茎は枯れますが、同じ地下の根茎から伸びた吸芽がすぐに後を継ぐため、新たに発芽しなくても株立ちは途切れません。5 4

地植えの株を殖やすなら、春に根茎の一部と活きた根をつけて吸芽を切り分ける方法が、実生よりも親株の形質をよく保ちます。温暖な条件なら2〜4週間で根づきます。稔性のある野生型なら実生も可能ですが、硬い種子は発芽に時間がかかり、不稔の品種はそもそも種子をつくりません。4

自生地では、熟した果実に果実食のコウモリ、鳥、リス、ジャコウネコ、霊長類が集まり、種子を運びます。こうして野生のマレーヤマバショウは、森林の林冠にできた空き地にいち早く入り込む先駆種となっています。3

利用と注意点

熟した果実は、稔性のある野生型でも不稔の栽培品種でも食べられ、未熟なうちの渋い果肉が甘くなります。雄花は生のまま、あるいは焼いてアーティチョークのように食べられ、偽茎の柔らかい芯はタケノコと同じように調理されます。4

熱帯原産の観葉植物の多くとは異なり、猫、犬、馬に対して知られている毒性はありません。ASPCA も、中毒の心配がない食用植物として分類しています。9

警戒すべきは毒性よりも病害虫です。バナナゾウムシ(Cosmopolites sordidus)は偽茎に食害の坑道を掘ります。黒シガトカ病とパナマ病(フザリウム萎凋病)は、どの大陸でも遺伝的に均一なキャベンディッシュの商業栽培にとって、いまや深刻な脅威です。6 5

品種・混同しやすい種・近縁の植物

本種のみに由来する品種は、染色体のセット数によっていくつかの群に分けられます。二倍体のAA群には 'Pisang Mas' などの早生のデザート用バナナが含まれ、三倍体のAAA群にはキャベンディッシュとその矮性選抜系が入ります。RHSの賞を受けた**'Dwarf Cavendish'**は、温帯では温室やサンルームで育てられています。6 4

観賞用の亜種 Musa acuminata subsp. zebrina は、果実の質よりも、紫の斑が大理石模様のように入る葉で知られています。7

混同されやすい近縁種は次の3つです。

  • Musa balbisiana:栽培バナナのもう一方の野生の親で、Bゲノムをもち、角ばった果実をつける
  • Musa x paradisiaca:両種の雑種で、プランテンのもとになった
  • Ensete ventricosum(アビシニアバショウ):姿は似ているが、利用できる吸芽を根元から出さない

見分けるうえで頼りになるのは、熟した果実に長さ5〜6 mmの硬い種子があるかどうかです。園芸ラベルから品種の遺伝的な出自を読み取れることはまれですが、キャベンディッシュを含め、商業品種で種子をつくるものはありません。

主な参考文献

よくある質問

バナナは木ですか?

いいえ。Musa acuminata は多年生の草本です。偽茎は葉鞘が巻き重なってできたもので木質部をもたないため、植物学的には樹木ではなく、世界最大級の草といえます。

市販のバナナに種がないのはなぜですか?

キャベンディッシュなど店頭に並ぶ品種は、人の選抜によって得られた不稔の三倍体クローンです。一方、野生の Musa acuminata の果実には、長さ5〜6 mmの硬い種子が数多く入っています。

Musa acuminata は動物にとって有毒ですか?

いいえ。ASPCA はバナナを猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。熱帯原産の観葉植物の多くとは異なり、食用植物です。

日本でバナナを屋外で育てられますか?

バショウ属でも寒さに強いのは一部の種に限られます。Musa acuminata は10 °Cを下回ると傷みやすく、耐寒性の目安はUSDAゾーン10〜12です。関東のように冬がこれより冷え込む地域では、大きな鉢で育て、冬は明るい室内や加温した温室に取り込むのが現実的です。

Musa acuminata と Musa balbisiana はどう違いますか?

Musa acuminata はデザート用バナナのもとになったAゲノムをもちます。Musa balbisiana はBゲノムをもち、交雑を通じてプランテンや一部の料理用バナナに受け継がれ、乾燥への強さをもたらしました。

バナナが最初に栽培化されたのはどこですか?

考古学と遺伝学のデータは、最も古い栽培化をおよそ7000年前のニューギニアとウォーレシア地域に位置づけています。種なし果実の選抜が進む前は、繊維や雄花を目的に利用されていたと考えられています。

似ている植物

植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。