コケモモ (Vaccinium vitis-idaea, )
コケモモ(Vaccinium vitis-idaea L., 1753)はツツジ科の常緑小低木で、ユーラシアと北アメリカの北方林や北極圏のツンドラに自生します。地中を横に伸びる根茎で低い群落をつくり、酸味のある小さな赤い実を結びます。周北極地域では古くから果実が採集されてきました。
続きを読むコケモモ, Lingonberry, Cowberry と Preiselbeere






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Taken Feb 21, 2017 by Yoan MARTIN (cc-by-sa)
Taken Sep 8, 2021 by Sylvain Piry (cc-by-sa)
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世界の分布
POWOとIUCNは、ユーラシアの寒冷地から北アメリカの北方林や北極圏ツンドラまでを含む周北極分布を記録しています。フランスでは分布南限の一部山地に限られ、導入種や侵略的な種という扱いではなく、県単位の保護規制の対象となっています。
基本情報
コケモモ(Vaccinium vitis-idaea L., 1753)はツツジ科スノキ属の受容種です。リンネが『Species Plantarum』第1巻で公表しました。 1 2
種小名vitis-idaeaは「イダ山のブドウ」を意味し、リンネが古代の呼称を採用したものですが、その山との実際の関係はありません。フランス語のairelle vigne du mont Idaやvigne du mont Idaにもこの名が残ります。英語文献ではLingonberryとCowberryが有用な手がかりです。中部ヨーロッパの文献のPreiselbeereも同じ種を指し、イダ山に由来する植物という意味ではありません。 7 4
フランス語のairelleは複数のスノキ属植物を含む呼び名です。コケモモの赤い実は、同属で同じ酸性土壌に育つビルベリー(Vaccinium myrtillus)の青黒い実と区別できます。
見分け方
地面を覆う常緑小低木のコケモモは、高さ10–40 cmになり、地中を横に伸びる根茎で連続した群落を広げます。細い木質の枝に、卵形で革質、光沢のある葉をつけ、葉の上面は濃緑色です。 4 5
葉を光に透かして裏面を見ると、小さな暗色の腺点を確認できます。同じような酸性土壌で低い群落をつくり、最も混同されやすいウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)には、この点がありません。 4
白から淡桃色の釣鐘形の花は3–8 mmで、3–10個ずつまとまります。多くの花をつけるのは5–10年を経た株です。鮮紅色の丸い果実は6–10 mm。完熟時にも酸味があり、霜に当たると甘みがかなり増します。 1 3
分類のポイント
地理的な変異についてPOWOは、ユーラシアの大葉の変種vitis-idaeaと、北アメリカの小葉の変種minusを区別しています。後者を狭い意味でlingonberryと呼ぶこともあります。 1
両亜種の近年のゲノム解読では、分岐はおよそ500万年前と推定されました。これは単なる地理的変種より、別種のスノキ属植物間に近い隔たりです。研究者自身も両型の分類階級を検討課題としています。 8
ただし両亜種はいずれも二倍体で染色体数が等しく、大規模なゲノム再編は認められません。違いは分岐からの時間にあり、明瞭な構造的不適合が示されたわけではありません。 8
生息地と分布
北半球の寒冷地を取り巻く周北極分布が特徴です。ユーラシアの冷涼な針葉樹林と北極圏ツンドラから、北アメリカのカナダ、アラスカ、アメリカ合衆国北部へ広がります。IUCNの世界評価は低懸念です。 1 6
分布南限に当たるフランスでは、いくつかの山地だけに残る寒冷期の遺存植物です。複数の県で法的な保護対象となり、導入種や侵略的な種とは異なる保全上の位置づけを持ちます。 7
北アメリカでも分布の縁では脆弱で、中心域では豊富なのに、ミシガン州では絶滅危惧、コネチカット州では特別な配慮を要する種とされています。土壌はpH 4.5–6の酸性を保つ必要があり、石灰質の土では急速に黄化し、群落が定着しません。 5
生活環と繁殖
新しい場所での定着は、酸性土壌でゆっくり育つ実生、または既存の株から採った根茎の断片で始まります。若い株は長く小さいままですが、やがて活発に横走する根茎を伸ばして群落を広げます。 3 5
定着から5–10年ほど経つと豊かに咲き、釣鐘形の花には専門的に利用するハナバチやマルハナバチが訪れます。果実は晩夏から秋に熟し、冬じゅう枝に残ることも多く、北方の野生動物に遅い時期の食物を供給します。 4
栽培で最も確実なのは、定着した根茎の株分け、または晩夏の半木質化した枝の挿し木です。種まきも可能ですが、生育は遅く、そろいにくくなります。 5
利用と注意点
完熟果は生でも加熱しても食べられ、ジャム、シロップ、コンポートに加工されます。北欧料理の付け合わせとしての利用も古くから記録され、人の食用として特別な危険はありません。 5
一方で葉にはアルブチンが含まれます。葉茶を時折飲む伝統はありますが、常用は勧められません。猫や犬に有毒と分類する獣医学資料はなく、馬についてだけは特定の情報がなく不明です。 5
枝に残る実は、北アメリカのヘラジカやカリブーにとって大切な冬の食物です。他の果実がほとんど枝に残らなくなる季節にも利用できます。 4
品種・類似種・近縁種
園芸で主に流通するのはユーラシア変種由来の果実用・観賞用の選抜品種です。RHSが記録するKoralle群は光沢葉と約10 mmの実が特徴で、ともに栽培されるRed Pearlはより大きな果実をつけます。 3
野外で特に間違いやすいのはウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)です。常緑の低い群落、赤い果実、やせた酸性土壌を好む点は共通しますが、コケモモ特有の葉裏の腺点はありません。 4
フランス語の呼び名ではビルベリー(Vaccinium myrtillus)との混同も起きます。ビルベリーは冬に落葉し青黒い実をつけますが、コケモモは常緑で実は赤くなります。どちらも通称airelleだけに頼らず、学名を確かめるのが確実です。
ルーペで葉裏を見れば、数秒で判断できます。暗色の腺点はコケモモを示し、それがなければウワウルシやビルベリーとの区別を考えます。 4 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Vaccinium vitis-idaea L.
- International Plant Names Index, Vaccinium vitis-idaea L.
- Royal Horticultural Society, Vaccinium vitis-idaea Koralle Group
- Missouri Botanical Garden Plant Finder, Vaccinium vitis-idaea
- Plants For A Future, Vaccinium vitis-idaea
- IUCN Red List, Vaccinium vitis-idaeaの評価
- INPN, Vaccinium vitis-idaea L., 1753(コケモモ)
- ヨーロッパと北アメリカのコケモモ亜種のゲノム解読, PMC10917501
よくある質問
コケモモに毒性はありますか?
ありません。果実は食用になり、葉も人、猫、犬に有毒とは分類されていません。ただしアルブチンの多い葉のお茶は、毎日ではなく時折の利用にとどめます。
コケモモとビルベリーは同じ植物ですか?
違います。コケモモ(Vaccinium vitis-idaea)は常緑で赤い実をつけ、ビルベリー(Vaccinium myrtillus)は落葉性で青黒い実をつけます。同じスノキ属に属し、どちらも酸性土壌に育ちます。
ウワウルシとはどう見分けますか?
どちらも常緑の低い群落をつくり赤い実をつけますが、コケモモの葉裏には小さな暗色の腺点があります。ウワウルシ(Arctostaphylos uva-ursi)にはありません。
フランスでは侵略的な植物ですか?
いいえ。フランスでは周北極分布の南限に当たる一部山地に自生し、侵略的な種ではなく県単位で保護される植物です。
ヨーロッパ型とアメリカ型を区別するのはなぜですか?
ゲノム解析では両者の分岐がおよそ500万年前と推定されます。現在は同一種の変種とされる一方で、その隔たりの大きさから分類上の階級が改めて議論されています。
庭ではどのような土が必要ですか?
pH 4.5–6の酸性で腐植に富み、常に適度な湿り気のある土が必要です。石灰質は避けます。日なたは結実を促し、明るい半日陰にも耐えます。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





