ロコト (Capsicum pubescens, )
ロコト(Capsicum pubescens)はペルーとボリビアのアンデスに由来するナス科の亜低木です。他の栽培トウガラシと異なり、冷涼な高地に育ちます。細かな毛に覆われた葉、紫色の花、黒い種子が特徴です。
続きを読むロコト, Locoto, Chile manzano, Rocoto と Tree pepper






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世界の分布
原産域はペルー、ボリビア、エクアドルのアンデスで、標高約1600 m以上で栽培されます。約6000年に及ぶアンデスでの栽培化を経てメキシコに広まり、chile manzanoと呼ばれ、さらにインドネシアなどにも導入されました。
基本情報
ロコト(Capsicum pubescens Ruiz & Pav., 1799)はナス科トウガラシ属の亜低木で、locotoやchile manzanoとも呼ばれます。栽培化された5種の一つですが、C. annuum、C. baccatum、C. chinense、C. frutescensから遺伝的に最も隔たっています。 1 5
種小名pubescensは「毛のある」を意味し、柔らかな毛に覆われた葉を表します。滑らかな葉を持つ他の栽培トウガラシとは見た目から異なります。さらに、熟した種子が黒いことが有力な識別点です。他の栽培4種ではクリーム色から淡褐色で、黒くはなりません。 5 2
見分け方
花冠は薄紫色から青紫色で、中央ほど淡く、葯には紫と白の部分があります。他の栽培種は白やクリーム色の花を咲かせるため、開花すれば区別しやすくなります。 5 4
単葉は緑色で、触れるとわかる細かな毛に覆われます。低地産トウガラシの滑らかな葉とは対照的です。株元が木質化し、数年育った株は高さ4 mに達することもあり、一年草として栽培されるトウガラシより大型になります。 5 7
厚く多汁の果実は洋ナシ形や小さなリンゴのような球形で、長さは6〜7 cmです。成熟時の色は品種により赤、黄、橙、緑、褐色と異なるため、果色だけでは種を確定できません。 4 5
分類のポイント
POWOが採用する学名はCapsicum pubescens Ruiz & Pav.で、1799年に『Flora Peruviana, et Chilensis』で記載されました。C. chinenseやC. annuumと異なり、広く使われる植物学上の異名はなく、属内での強い遺伝的隔たりとも整合します。 1 2
アンデスの呼び名rocotoとlocotoは別種を意味しません。前者はペルーやエクアドルのケチュア語rukutu、後者はボリビアやアルゼンチン北部のアイマラ語luqutuに由来します。メキシコ名chile manzanoは果実がリンゴのように丸いことにちなみます。 5 4
生殖面でもロコトは他の栽培4種から隔離されています。栽培5種の中で最も普及範囲が狭く、性質の異なる種であり、通常の一年草トウガラシやハバネロとの園芸的な交配が見られない背景になっています。 5 3
生息地と分布
原産域はペルー、ボリビア、エクアドルのアンデスで、標高約1600〜3600 mの冷涼な環境です。他の栽培トウガラシが育つ熱帯低地とは気候が異なります。栽培化は紀元前6000年ごろにさかのぼるとされ、ペルーのギタレロ洞窟の遺物がその根拠となっています。 5 7 8
高地に由来するため、熱帯平原の持続的な暑さには向きません。一方で短時間の凍結なら−5 °Cまで耐えるとされます。冷涼で湿潤な気候では一株が15年ほど収穫を続けることもあり、栽培トウガラシとして長命です。 7 4
アンデス以外では、chile manzanoとしてメキシコで栽培されるほか、インドネシアにも広まっています。オランダでは加温温室で4〜11月に栽培され、スペインやイタリアでも一部で冬季栽培が行われます。 5
生活環と繁殖
発芽はゆっくりで、約20 °Cでは3〜4週間かかり、多くのトウガラシより遅れます。植え替え後は各節に花を一つずつつけ、複数の花がまとまるCapsicum chinenseとは異なります。 7 5
収穫開始は定植後3〜8か月で、開花から成熟まで少なくとも3か月必要です。一株の一回の収穫量は約0.5 kgと一年草トウガラシに比べ控えめですが、複数年にわたって生産できます。 5 4
繁殖はほぼ実生で行い、家庭栽培で挿し木は一般的ではありません。果肉が厚く水分が多いため天日乾燥には不向きです。密閉型の乾燥トンネルでも、生果80 kgから得られる乾燥品は約6.4 kgです。 5
利用と注意点
果実は生の薬味、ソース、ペーストに使われます。代表料理は塩味の具を詰めて焼くペルーのロコト・レジェーノです。厚く多汁の果肉は長い加熱にも耐え、薄肉のトウガラシのように形が崩れにくい特徴があります。 5 7
辛さは通常10万〜20万スコヴィル単位ですが、品種や栽培条件を含めると2400〜25万の幅があります。化学的な特徴は、一般的なカプサイシンに加えてジヒドロカプサイシンの割合が高いことです。 4 5
猫や犬に対して獣医学的な意味で有毒とはされません。注意すべき成分は、果実内部の隔壁や黒い種子に多いカプサイシノイドです。触れると口、目、皮膚を刺激し、子どもが多量に食べると消化器症状を起こします。 5
品種・類似種・近縁種
ペルーでよく販売されるRocoto rojoとrocoto amarilloは、熟した果実が赤か黄橙色かで主に区別されます。メキシコのchile manzanoとchile perónは、同じ種の丸い型とやや長い型を指します。 5
ロコトはEPPOが検疫対象とするミバエAnastrepha ludensの寄主です。そのため欧州の一部市場では生果の輸入が制限され、冷凍品や加工品のみが認められます。一方、ナス科の農業に大きな損失をもたらす卵菌Phytophthora capsiciには、他のナス科植物より強い抵抗性を示します。 5
混同されやすい近縁種には次のものがあります。
- Capsicum chinense:ハバネロ。節ごとに花が複数つき、冷涼なアンデスではなく熱帯低地に育ちます。
- Capsicum annuum:白い花とクリーム色の種子を持ち、木質化するロコトより小型の草本です。
- Capsicum baccatum:南米のアヒ。斑点のある花冠が、ロコトの無地の花冠と異なります。
果実を見比べる際には、形や色より種子の色が頼りになります。ロコトでは黒色、他の栽培4種ではクリーム色から淡褐色です。ただし売り場ごとに呼び名や果実の見た目は変わるため、同じ植物か確かめるには学名の確認が欠かせません。 5 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Capsicum pubescens Ruiz & Pav.
- International Plant Names Index, Capsicum pubescens
- Wikidata, Capsicum pubescens (Q133428)
- フランス語版ウィキペディア、 Capsicum pubescens
- 英語版ウィキペディア、 Capsicum pubescens
- スペイン語版ウィキペディア、 Capsicum pubescens
- Plants For A Future, Capsicum pubescens
- USDA PLANTS Database, Capsicum pubescens (CAPU38)
よくある質問
ロコトとハバネロは同じ種ですか?
異なります。ハバネロは低地熱帯性のCapsicum chinense、ロコトは冷涼なアンデスに適応したCapsicum pubescensです。
ロコトが他のトウガラシより寒さに強いのはなぜですか?
標高1600〜3600 mのアンデスに由来し、短時間なら−5 °Cまでの凍結に耐える性質を持ちます。熱帯低地産のトウガラシとは異なります。
ロコトは猫や犬に有毒ですか?
獣医学的な意味では有毒とされていません。辛い果実は口や消化管を刺激しますが、動物の中毒を引き起こすものではありません。
他の栽培トウガラシとの見分け方は?
毛のある葉、薄紫から青紫色の花冠、熟すと黒くなる種子が手がかりです。他の栽培種は白い花とクリーム色から淡褐色の種子を持ちます。
chile manzanoとロコトは同じ植物ですか?
はい。chile manzanoは丸い果実に由来するメキシコ名です。同じ種をペルーではrocoto、ボリビアではlocotoと呼びます。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





