アメリカグリ (Castanea dentata, (Marshall) Borkh. 1800)

アメリカグリ(Castanea dentata)は、かつて北米東部の森林で優占したブナ科の大型落葉樹です。生長が速く、腐りにくい木材とクリ属でも特に甘い実をもたらしましたが、20世紀にアジア由来の菌が起こす胴枯病で激減しました。

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学名Castanea dentata
属Castanea
目Fagales

アメリカグリ と American chestnut

基本情報
毒性
ASPCAではネコ・イヌ・ウマに無毒
管理の難易度
低い
植物タイプ
葉の性質
落葉
寿命
多年草
原産国
アメリカ合衆国カナダ
自生環境
適湿から乾燥した落葉広葉樹林。かつてアパラチアのオーク・クリ林で優占し、水はけのよい酸性土壌に生育
季節性
開花期
夏
収穫期
秋
生育
休眠
冬季休眠
生育速度
7/10
成熟までの期間
開花は7–10年から、胴枯病がなければ樹冠の成熟は20–40年
増やし方
種子, 接ぎ木
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
胴枯病で成木が激減しており、十分な記録がない
湿度
40–80 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌pH
土壌タイプ
水はけのよい土, 弱酸性〜中性の水はけのよい土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

日なた

十分な日当たりから軽い半日陰
屋外
地植え, 果樹園
形態
高さ1500–2300 cm株張り1500–2300 cm
葉
緑黄
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 葉 1
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 葉 2
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 葉 3
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 葉 4
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 葉 5
花
白黄
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 花 1
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 花 2
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 花 3
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 花 4
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 花 5
果実
緑茶
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 果実 1
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 果実 2
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 果実 3
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 果実 4
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 果実 5
樹形・草姿
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 2
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 3
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 4
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹形・草姿 5
樹皮
茶
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹皮 1
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹皮 2
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹皮 3
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹皮 4
アメリカグリ (Castanea dentata):原産地と利用法 — 樹皮 5

世界の分布

Castanea dentataは、北米東部のメイン州とオンタリオ州南部からミシシッピ州、大西洋岸からアパラチア山脈とオハイオ川流域に分布していました。分布域の中部・南部では広くオーク・クリ林を優占していましたが、胴枯病により点在する切り株からの萌芽を残す姿へ変わりました。

  • 原産2
  • アメリカ合衆国
  • カナダ

六角形:植物が見られる地域。緑の点:原産分布域。1

基本情報

アメリカグリ(Castanea dentata (Marshall) Borkh., 1800)は、ブナ科クリ属の大型落葉樹で、オークやブナに近い植物です。ラテン語の種小名dentataは「歯のある」という意味で、葉の縁に規則正しく並ぶ鋭い鋸歯を表しています。 1 2

北米東部では、20世紀以前に約40億本が生育し、最も多い落葉広葉樹の一つでした。しかしアジア由来の菌によるクリ胴枯病が広がり、1904年の発見から20世紀半ばまでの約50年間で、そのほぼすべてが失われました。 6

見分け方

成木の一般的な高さは15–23 mで、枝張りも同程度です。幼木や切り株からの萌芽は速く生長します。披針形から長楕円形の葉は長さ10–23 cm、幅4–7.5 cmで、表は濃緑色です。葉縁には先が細く曲がった鋭い歯が規則正しく並びます。 2

樹皮は明るい灰色で、幅広く平らな隆起があり、幹の周りを緩く螺旋状に走ることがあります。褐色から赤褐色の若枝には白い皮目が目立ちます。ほかのクリ類との識別に役立つのは、葉裏と若枝が無毛である点です。ヨーロッパグリでは同じ部分に薄い毛が見られます。 2

淡黄色で直立する雄花の尾状花序は長さ10–20 cmとなり、6–7月に開花します。小さな雌花は同じ枝の基部にできます。幅5–6.5 cmのとげのあるいがには、通常2–3個の光沢のある褐色の実が入り、クリ属の中でも特に甘いものです。 2 3

分類のポイント

POWO/WCVPが受容するCastanea dentata (Marshall) Borkh.は、Fagus castanea var. dentata Marshall, 1785を基礎異名として1800年に発表された組み合わせです。同じ種を表した次の古い名称も、異名として見かけることがあります。

  • Castanea americana (Michx.) Raf.(異名)
  • Castanea sativa var. americana (Michx.) Sarg.(異名)
  • Castanea vesca var. americana Michx.(異名)
  • Castanea vulgaris var. americana (Michx.) A.DC.(異名)

クリ属には、ヨーロッパと西アジア原産のヨーロッパグリ(Castanea sativa)や、チュウゴクグリ(Castanea mollissima)も含まれます。後者は胴枯病に対する耐性が自然に高く、アメリカグリとの交雑育種で広く利用されています。 1

生息地と分布

もとの分布域は北米東部で、メイン州とオンタリオ州南部からミシシッピ州まで、大西洋岸からアパラチア山脈、オハイオ川流域へ広がっていました。適湿から乾燥した落葉広葉樹林を好み、pH 6未満の水はけのよい酸性土壌に生えます。 2 1

分布域の中部・南部の広い範囲では、かつてアパラチアのオーク・クリ林を優占していました。ところがクリ胴枯病により、林床の低木のような姿へ追いやられました。アジアの苗木に付いて入った菌Cryphonectria parasiticaは、1904年にニューヨークの動物園で初めて確認され、約50年間に40億本近い木を枯らしました。 6

国際自然保護連合(IUCN)は、アメリカグリを深刻な絶滅危機(CR)に分類しています。原産地全体で、繁殖できる成木の個体群がほぼ失われたことを受けた評価です。 5

生活環と繁殖

花の仕組みは雌雄同株で自家不和合性です。同じ木に雄花と雌花が付いても、自分だけでは受精できません。6–7月に咲く雄花序は蜜を出し、主に訪花昆虫を引き寄せます。通常は風で受粉するブナ科の中では、あまり多くない繁殖様式です。 2

秋にいがが成熟し、9–10月に実が放出されます。自然な繁殖方法は実生で、冬の低温湿潤処理を経た種子には深い休眠はありません。接ぎ木は主に保全計画で使われ、部分的な耐病性があると判断された生存木を増やすのに役立ちます。 3

感染すると地上部は枯れますが、根系は生き残ります。北米の大型落葉広葉樹では珍しい生存の仕組みで、同じ木が何十年も切り株から萌芽を出せます。ただし萌芽は伸びても、繁殖年齢に達する前に再感染し、結実せずに枯れることを繰り返します。そのため、アパラチアの林床には残っていても、胴枯病から逃れられなければ高木層へ戻ることができません。 6

利用と注意点

腐りにくく木目がまっすぐな材は、小屋の土台、柵、屋根板、床材、鉄道の枕木、電信柱などに長く使われました。タンニンの多い樹皮は皮なめしにも利用されました。特に甘い実は、胴枯病が広がる前には野生動物とアパラチアの農村経済の両方を支えていました。 6 3

ASPCAでは、本種はネコ・イヌ・ウマに対して無毒とされています。記録されている危険は物理的なもので、鋭いいがのとげが、地面に落ちた実を拾う際に手や動物の足を傷つけることがあります。 4

品種・類似種・近縁種

胴枯病に弱すぎるため、一般的な観賞用に安定して使われる品種はありません。注目されるのは森林回復の系統です。歴史的な生存木ClapperとGravesは部分的な耐病性を持つ交配親として使われ、チュウゴクグリとの戻し交雑系統も育成されています。遺伝子組換え系統Darling 58は、胴枯病菌が分泌するシュウ酸を分解するコムギの遺伝子を持ちます。 6

比較しておきたいのは、次の2種です。

  • ヨーロッパグリ(Castanea sativa)は若枝と葉裏に薄い毛があり、無毛のアメリカグリと異なります。
  • チュウゴクグリ(Castanea mollissima)は樹形がより小さく横に広がり、胴枯病への自然な耐性が高いため、育種の親としてよく使われます。

この3種はいずれも葉に鋸歯があるため、それだけでは十分に見分けられません。より頼りになるのは毛の有無で、アメリカグリは無毛、ヨーロッパグリとチュウゴクグリには薄い毛があります。 2

主な参考文献

よくある質問

アメリカグリには毒性がありますか?

いいえ。ASPCAではCastanea dentataはネコ、イヌ、ウマに無毒と分類されています。主な危険は、実を包むいがの鋭いとげによるけがです。

アメリカグリは絶滅したのですか?

完全に絶滅したわけではありません。胴枯病で地上部が枯れても根は残り、切り株から萌芽を出し続けます。IUCNでは深刻な絶滅危機にあるとされ、完全な消失というより機能的絶滅の状態です。

ヨーロッパグリとどう見分けますか?

最も頼りになるのは毛の有無です。アメリカグリの若枝と葉裏は無毛ですが、ヨーロッパグリには枝先や葉裏に薄い毛があります。

クリ胴枯病とはどのような病気ですか?

アジア原産の菌Cryphonectria parasiticaによる病気で、1904年にアメリカで確認されました。約50年間でおよそ40億本のアメリカグリを枯らしました。

胴枯病に強いアメリカグリはありますか?

チュウゴクグリとの戻し交雑や、コムギの遺伝子を持つDarling 58という遺伝子組換え系統の開発が進められています。アメリカグリの特徴を保ちながら病気に強い木を得ることが目標です。

アメリカグリの実は食べられますか?

はい。クリ属でも特に甘い実で、脂肪を約7%、タンパク質を約11%含みます。かつては野生動物の餌となり、アパラチアの農村経済も支えていました。

庭木としてあまり植えられないのはなぜですか?

胴枯病に極めて弱いため、一般的な観賞用の庭木には向きません。現在は主に保全や森林回復の計画で、木を離して植える形で利用されています。

似ている植物

植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。