ツユクサ (Commelina communis, L. 1753)

ツユクサ(Commelina communis L., 1753)は、東アジアと東南アジア北部を原産とするツユクサ科の一年草です。自生域はシベリアとロシア極東からベトナムまで広がります。一朝だけ咲く花は、立ち上がる大きな青い花弁2枚と、目立たない小さな白い花弁1枚が特徴です。中央ヨーロッパや北アメリカにも導入され、湿った攪乱地に広がっています。

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学名Commelina communis
属Commelina
目Commelinales

ツユクサ, Asiatic dayflower, Common dayflower, Dayflower と Yazhicao

基本情報
毒性
毒性は知られておらず、人や動物への危険の報告はありません。
管理の難易度
低い
植物タイプ
一年生草本 · 雑草
葉の性質
落葉
寿命
一年草
原産国
中国日本韓国ロシアベトナム
自生環境
湿った林縁、畑、果樹園、溝、道端などの開けた場所。台湾では標高2,400 mまで見られます。
季節性
開花期
夏秋
生育
休眠
休眠しない
生育速度
8/10
成熟までの期間
夏から秋に開花し、受精後数週間で蒴果が熟します。
増やし方
種子, 茎挿し
気候と水やり
耐えられる温度
耐寒性
耐風性
茎は柔軟で地面を這うため、風の影響は小さめです。
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
いいえ
用土
土壌pH
土壌タイプ
湿った土, 撹乱された土壌, 肥沃な土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

日なた

朝か夕方を中心に、1日数時間の直射日光に当てます。

日なたから半日陰。日陰になる林縁にも耐えます。
屋外
道端, 畑の縁, 水路脇, 林縁
形態
高さ20–90 cm株張り60–300 cm
葉
緑
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 葉 1
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 葉 2
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 葉 3
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 葉 4
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 葉 5
花
青白大きさ1.5–2 cm
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 花 1
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 花 2
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 花 3
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 花 4
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 花 5
果実
茶
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 果実 1
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 果実 2
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 果実 3
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 果実 4
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 果実 5
樹形・草姿
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹形・草姿 2
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹形・草姿 3
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹形・草姿 4
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹形・草姿 5
樹皮
緑
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹皮 1
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹皮 2
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹皮 3
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹皮 4
ツユクサ (Commelina communis):原産地と利用法 — 樹皮 5

世界の分布

自生域は東アジアの大部分と東南アジア北部に及び、シベリアとロシア極東からベトナムまで広がります。中央・東ヨーロッパおよび北アメリカに導入され、広く帰化しています。ただし、生育するすべての地域で強い侵略性が認められるわけではありません。

  • 原産5
  • 移入3
  • 侵略的1
  • 中国
  • 日本
  • 朝鮮半島
  • ロシア極東
  • ベトナム
  • フランス本土
  • 中央・東ヨーロッパ
  • カナダ(オンタリオ州・ケベック州)
  • アメリカ合衆国

六角形:植物が見られる地域。緑の点:原産分布域。1

基本情報

ツユクサ(Commelina communis L., 1753)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生草本です。リンネは1753年の Species Plantarum 初版で、ほかの8種の Commelina とともに記載しました。本種は属のタイプ種であり、属名を適用する分類上の基準となります。 3 1

属名はオランダの植物学者 Jan と Caspar Commelijn を記念します。リンネは、このタイプ種の大きな青い花弁2枚をこの兄弟に重ねました。英名 dayflower と中国名 yazhicao(アヒルの足の草)も、この一朝だけ開く特徴的な花を指す名前です。 3

見分け方

茎は基部で地面を這い、先端に向かって立ち上がります。湿った土に触れた節から発根するのが特徴です。葉は無柄またはごく短い葉柄を持ち、披針形から卵形で長さ3〜12 cm、基部は左右非対称です。葉の姿も野外での確認に役立ちます。 3 4

青い花をつける同属の植物と見分けるには、茎や葉より花が確かな手がかりとなります。ハート形の苞に包まれ、約1 cmの大きな青い花弁2枚が立ち上がり、その下にごく小さな白い花弁が1枚あります。朝に開いてその日のうちにしぼむことが、英名 dayflower の由来です。 3

雄しべは6本で、稔性があるのは3本です。中央の1本は黄色で葯隔が褐色、左右の2本は褐色を帯びた藍色です。残る3本は黄色で十字状をなし、花粉を持たない不稔の雄しべです。果実は長さ4.5〜8 mmの褐色の蒴果で、2室にそれぞれ2個の角張った種子を含みます。 3

分類のポイント

分類学的な再検討により、複数の名前が本種の異名として扱われています。Commelina polygama Roth, 1790、Commelina barbata、Commelina salicifolia Bojer、Commelina willdenowii Kunth, 1841、朝鮮半島の集団に基づき記載された Commelina coreana H.Lév., 1910 です。 3 1

二つの変種には分類上の議論があります。Commelina communis var. ludens (Miq.) C.B.Clarke は日本の植物誌で山地に分布する濃色花の型とされますが、基本型から一貫して区別できないとする見解もあります。Commelina communis var. hortensis Makino は染料用に栽培される大輪の型です。斑入りの f. aureostriata MacKeever, 1961 も、分布域各地で散発的に現れます。 3

生息地と分布

シベリアとロシア極東からベトナムにかけて、東アジアの大部分と東南アジア北部に自生します。中国、朝鮮半島、日本もその自生域に含まれます。 1 2

湿り気のある開けた場所を好み、日陰の林縁、畑、果樹園、溝、道端などに生えます。台湾では標高2,400 mまで見られます。中央・東ヨーロッパや北アメリカへ導入され、主に攪乱地や畑の縁に広がりました。フランスではINPNが局所的な雑草として記録しており、強い侵略性は示されていません。 3 6

生活環と繁殖

夏から秋にかけて次々に花をつけますが、一つの花が咲くのは一朝だけです。蜜は作らず、訪花昆虫への報酬は花粉だけです。主な送粉者にはミツバチの Apis cerana、ハナアブの Episyrphus balteatus、マルハナバチの Bombus diversus が挙げられます。 7

雄しべを取り除く実験では、黄色い不稔雄しべが、花粉を持たないのに稔性雄しべをまねて訪花数を増やすことが示されました。一方、中央の稔性雄しべを除くと、柱頭へ実際に花粉が付着する訪問が減ります。誘引を担う不稔雄しべと、柱頭への接触を導く中央の雄しべという役割分担が、花粉を作るのが3本だけでも6本を保つ理由となります。 7

受精後、蒴果は数週間で熟し、1果当たり最大4個の種子を放出します。実生で盛んに増えるほか、湿った地面に触れる茎の節からも根を出します。二つの繁殖様式が、密な群落を素早く作る要因です。 3

利用と注意点

毒性は記録されておらず、若葉と若い芽は生または加熱して食用になります。食感にはぬめりがあり、中国やインドでは飼料としても利用されます。 5

中国の伝統医学では解熱・抗炎症の目的で使われ、とくにのどの痛みや扁桃炎、利尿の用途が知られます。単離されたp-ヒドロキシケイ皮酸とD-マンニトールには、実験室でそれぞれ抗菌作用と鎮咳作用が確認されています。伝統的な利用と、成分についての実験結果を区別して理解できます。 3

日本では大輪の変種hortensisの搾り汁を使い、青花紙を染めます。この変種から得られる色素コンメリニンは18〜19世紀の多くの浮世絵を彩りましたが、後に光に対してより安定なプルシアンブルーに大部分が置き換わりました。 3

北アメリカの導入先の一部では、保全当局が、ときに侵略的に広がる雑草に位置づけています。ただし、既存の生態系を持続的に大きく変えるとはされていません。原産地の中国東北部でも、果樹園での農業被害が知られています。 8 3

品種・類似種・近縁種

広く普及した本格的な観賞用栽培品種はありません。知られる変種は主に分類学的な関心や染料のためのもので、庭園観賞を目的として選抜されたものではありません。 3

青い花をつける他の Commelina 属や、Tradescantia zebrina のように這う Tradescantia 属と比べる際には、花弁の大きさと色を見ます。とくに下側の小さな白い花弁が、ツユクサを確かめる重要な特徴です。 3

植物生理学の研究にも利用されます。葉から一層の細胞からなる表皮の標本を得られるため、気孔の働きを調べる古典的なモデル植物となっています。 3

主な参考文献

よくある質問

ツユクサには毒がありますか?

毒性は記録されていません。若葉や若い芽は生でも加熱しても食用になり、アジアの一部の葉物野菜に似たぬめりがあります。

花が一日しかもたないのはなぜですか?

一つの花は朝に開き、その日のうちにしぼみます。この特徴は英名 dayflower や、露の草を意味する和名のツユクサにも表れています。

花粉を作らない雄しべは何のためにありますか?

6本のうち3本は不稔で花粉を持ちません。取り除く実験では、これらが虫を誘い、稔性のある雄しべへ導く役割を担うことが示されています。

ツユクサは侵略的な植物ですか?

導入先の北アメリカの一部では、ときに侵略的になる雑草とされますが、既存の生態系を大きく変えるとは限りません。原産地の中国東北部でも、果樹園の農業被害が知られています。

日本ではどのように利用されますか?

大きな花をつける栽培変種 hortensis の青い搾り汁で青花紙を染めます。青花紙は18〜19世紀に浮世絵の制作にも使われました。

野外ではどこを見れば識別できますか?

ハート形の苞に包まれた花が最も確かな手がかりです。上向きの大きな青い花弁2枚と、下側の目立たない小さな白い花弁1枚を確認します。

薬用に使われることもありますか?

中国の伝統医学では、解熱や抗炎症、のどの痛みなどに用いられます。p-ヒドロキシケイ皮酸などの成分には、実験で確認された抗菌活性があります。

似ている植物

植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。