セイヨウカキドオシ (Glechoma hederacea, )
セイヨウカキドオシ(Glechoma hederacea)は、ヨーロッパから西シベリアにかけて自生する、香りのあるシソ科の多年草です。縁に丸い鋸歯のある葉と青紫色の花をもち、低く広がって地面を覆います。四角い茎が節ごとに根を出す点で、ゼニアオイの仲間やオドリコソウ属と見分けられます。
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葉に直射日光が当たらない、明るい場所に置きます。
半日陰〜穏やかな日なたで、適度に湿った土が適します




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世界の分布
POWOによる原産域はヨーロッパから西シベリア、新疆までです。ヨーロッパからの移住者によって導入され、北アメリカやニュージーランドに広く帰化しました。これらの地域では、芝生や林床に広がる侵略的な雑草とされる場合があります。
基本情報
セイヨウカキドオシ(Glechoma hederacea L., 1753)はシソ科の受容種で、リンネがSpecies Plantarumに記載しました。POWOとフランスのINPNもこの名を認め、大きな異名上の争点はありません。 1 2
地面をはう姿はツタを思わせますが、ウコギ科のHedera属とは近縁ではありません。種小名hederaceaもツタに似るという意味で、分類上の関係ではなく姿の比較を示します。 5
ユーラシア産の数種からなるGlechoma属には、南東ヨーロッパのGlechoma hirsutaなどが含まれます。G. hederaceaは高さが通常20 cmを超えない低い群落をつくり、毛が短く肉眼では目立ちません。葉に明瞭な毛があるG. hirsutaとは、分布が重なる場所でもこの特徴で区別できます。 5
見分け方
地表に広がる四角い茎は節ごとに根を出し、低く地面を覆います。葉は円形から腎形で、縁に丸い鋸歯があり、対生します。長さ2〜3 cmの葉に3〜6 cmの葉柄がつき、もむとミントに似たはっきりした香りがします。 4 6
青紫色から淡紫色の筒状の花は左右相称で、葉腋に2〜3個ずつまとまります。気候により4〜7月に開花し、春に最も多く咲きます。 4
茎の長さは環境によって5〜50 cmと大きく変わりますが、立ち上がる部分の高さは20 cm未満のことが多くあります。匍匐茎や節からの根がない孤立した株は若い実生です。特徴的な密な群落になるまでには、栄養繁殖で広がる数か月が必要です。 4
Malva neglecta、Lamium amplexicaule、Lamium purpureumは同じ環境に生え、野外で間違えやすい植物です。Malva neglectaも葉が丸いものの、茎は四角くなく丸く、毛の生え方も異なります。後の2種は同じシソ科ですが、節で同じようには発根せず、葉をもんだときのミントに似た香りも目立ちません。 6 7
分類のポイント
ミントやサルビアとともに、シソ科のNepetoideae亜科、Mentheae連に属します。二倍体化した四倍体で、染色体数は2n = 36(x = 9)です。北・中央ヨーロッパの集団を対象とした酵素分析でも確認されています。 5 9
二倍体化とは、四倍体に由来しながら、遺伝的には二倍体のように振る舞うことを指します。酵素遺伝子座は通常の二染色体性の分離を示し、新しく成立した倍数体に多い複雑さがありません。 9
花の性には雌性両全性異株という特徴もあります。雌花だけをつける株と、両性花をつける株があり、雌花は両性花の花粉に依存します。そのため、孤立した群落では花が咲いても種子があまりできない場合があります。 4
生息地と分布
自生する範囲をPOWOはヨーロッパから西シベリア、新疆までとしています。明るい林床、適度に湿る草地、土手、芝生に生え、土の湿り気が保たれれば日陰にも穏やかな日なたにも耐えます。定着した群落は冬の約-25 °Cの寒さにも耐えます。 1 6
ヨーロッパからの移住者により、複数の大陸へ運ばれました。導入先のアメリカやカナダでは、定期的な刈り込みにも耐え、芝生や林の縁に密な群落をつくります。地面に残った茎の断片が数日で根づくため、手で抜くだけでは確実な除去が難しくなります。 4 7
在来種として生育するフランスでは、監視対象の侵略的な種には含まれません。林床や芝生での生育は、その地域の植物相の通常の一部と見なされています。 2
生活環と繁殖
種子による繁殖では、受粉した花一つから最大4個の種子ができます。茎が曲がって成熟種子を親株の近くへ落とし、アリがさらに遠くへ運ぶ場合もあります。湿り気を得ると数日で発芽し、約1か月の乾燥保存は発芽率を高めます。 4
もう一つの経路は栄養繁殖です。匍匐茎が地面へ曲がり、各節から根を出すことで、親株から独立した新しい株ができます。一つのクローンが数平方メートルを覆うこともあり、条件のよい花壇で急速に広がる理由となっています。 4
訪花する野生のハチにはAnthophora属やOsmia属などがあり、受粉を担います。Rondaniola bursariaのように虫こぶをつくる昆虫も訪れますが、群落の勢いを大きく損なうことはありません。 4
利用と注意点
15世紀末にホップが普及する前、サクソン人やイングランドの人々は、ビールを澄ませ保存するために利用しました。この歴史は英名のalehoofやgill-over-the-groundにも残っています。若葉は加熱する野菜や、呼吸器の不調に用いる浸出茶としても使われました。 4
精油の含有量は、より毒性の強い近縁のペニーロイヤルミント(Mentha pulegium)の約30分の1です。それでも、大量に食べたウマには危険が報告され、生草でも干し草でも、過剰なよだれや呼吸の困難が起こることがあります。 4 8
ネコやイヌが偶発的に食べた場合には、重い中毒よりも軽い消化器症状がみられます。人に伝統的な食用の歴史があっても、管理された調理環境の外で食べる際には、確実な同定を省けません。 8
品種・類似種・近縁種
安定した品種の記録は少なく、販売株の大半は野生型です。最も広く見られる選抜はVariegataで、葉にクリーム白色の斑が入ります。野生型より生育が穏やかなため、地植えより吊り鉢でよく栽培されます。 6
間違えやすい植物とその違いは、次のとおりです。
- Lamium purpureum:葉がよりとがり、花は青紫ではなく桃紫色です。
- Lamium amplexicaule:上部の葉が直接茎を抱きます。
- Malva neglecta:茎が四角くなく丸く、ミントに似た強い香りもありません。
同じ芝生の縁や明るい林床にこれらの植物が共存し、野外で見間違える機会が多いため、それぞれの違いを確認することが大切です。 7
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Glechoma hederacea L.
- INPN / MNHN, Glechoma hederacea L., 1753
- Wikidata, Glechoma hederacea
- Wikipedia EN, Glechoma hederacea
- Wikipedia DE, Gundermann (Glechoma hederacea)
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox, Glechoma hederacea
- bplant.org, Ground Ivy (Glechoma hederacea)
- Rutgers NJAES FS938, 馬の放牧地の有毒雑草
- Widén et al., 二倍体化した四倍体Glechoma hederacea(シソ科)の酵素変異と遺伝
- Plants For A Future, Glechoma hederacea
よくある質問
セイヨウカキドオシはツタの仲間ですか?
ツタ属Hederaのウコギ科とは異なり、ミントと同じシソ科です。英名のground-ivyは、地面をはう姿がツタを思わせることに由来します。
オドリコソウ属とはどう見分けますか?
四角い茎が節ごとに根を出し、もんだ葉からミントに似た香りがします。Lamium purpureumなどのオドリコソウ属では、このような発根や強い香りは見られません。
セイヨウカキドオシには毒性がありますか?
大量に食べたウマには危険が報告され、よだれや呼吸器症状が起こることがあります。ネコやイヌでは軽い消化器症状が起こる場合があります。人には食用の歴史がありますが、少量の利用にとどまります。
庭で広がりすぎますか?
在来種であるフランスでは侵略的とは分類されていません。原産域の外、とくに北アメリカでは、除去が難しい密な群落をつくる雑草とされています。
葉は食べられますか?
若葉をサラダや浸出茶に用い、ホップが普及する前にはビールを澄ませるためにも使ってきました。ただし、歴史的な利用例があっても、食べる前の確実な同定が必要です。
白い斑がある葉は何ですか?
クリーム白色の斑は観賞用の品種Variegataの特徴で、吊り鉢でもよく販売されます。斑入りでも種としての栽培条件は変わりません。
広がりを抑えるにはどうしますか?
花壇の縁で匍匐茎を定期的に切り、中心部が密になりすぎたら株分けします。石などの縁取りや通路も、広がりを抑える助けになります。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





