クロミグワ (Morus nigra, )
クロミグワ(Morus nigra)は、南西アジア由来のクワ科の落葉果樹です。栽培の歴史が長く、正確な野生の自生域は分からなくなっています。晩夏に暗赤色から黒色の肉厚で甘酸っぱい複合果をつけ、マグワやキイチゴとは異なる、果樹園や庭で育てられる樹木です。
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Taken May 12, 2016 by Tela Botanica − Liliane ROUBAUDI (cc-by-sa)
Taken May 30, 2015 by Tela Botanica − Liliane ROUBAUDI (cc-by-sa)
Taken Feb 8, 2021 by Martinez leti (cc-by-sa)
Taken May 29, 2021 by Martins Helder (cc-by-sa)
Taken Jul 21, 2022 by Oğuzhan (cc-by-sa)
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世界の分布
南西アジアに由来する古い栽培植物で、長年の栽培により元の野生分布域は不明瞭です。古代から西へ広がり、現在は世界の温暖な温帯各地で植えられます。分布記録の中心は植栽木で、明確な野生群落を示すものではありません。
基本情報
クロミグワ(Morus nigra L., 1753)はクワ科クワ属の落葉果樹です。南西アジアでの栽培史が非常に長く、厳密な野生の自生域は区切れなくなっています。晩夏に熟す暗赤色から黒色の食用果実は肉厚で甘酸っぱく、その収穫のために植えられます。 1 3
果樹園でも庭でも、低く横に広がる樹形と曲がりくねった幹を見せ、古木になるほど観賞上の風格が増します。黒いクワ、ペルシャのクワを意味する外国語名も、果実の色や西アジア由来という背景を伝えます。 2 4
見分け方
心形で縁に明瞭な鋸歯があり、触るとざらつく葉が特徴です。表はつやの少ない緑、裏は淡色で少し毛があり、秋に黄色くなります。太く節くれだった幹の上で樹冠が低く広がり、橙褐色の樹皮には亀裂が入ります。 2 4
特に目を引く果実は、多数の小さな要素が一体となった長さ2~3 cmの肉質の複合果です。緑から赤を経て、完熟時には黒に近い暗赤色になり、甘酸っぱく多汁の果肉の赤紫色の汁が指を染めます。ほかのクワ科と同じく、枝や葉の小さな傷からも乳液がにじみます。 3 4
成木は普通8~12 mの高さで同程度に横に広がり、古木ではさらに大きくなります。春には風で受粉する小さな緑がかった尾状花序をつけますが、花はあまり目立ちません。 2 3
分類のポイント
1753年にリンネがMorus nigra L.として記載しました。クワ属は地方ごとの名や園芸型が多く、分類が長く混乱したため、次のような古い異名も残っています。
- Morus laciniata Mill.(異名)
- Morus siciliana Mill.(異名)
- Morus petiolaris Raf.(異名)
- Morus nigra var. laciniata (Mill.) Moretti(変種としての旧名)
- Morus cretica Raf.(異名)
生物学的には、著しい倍数性により種子植物の中でも染色体数が非常に多い点が、同属のほかの種と異なります。分類の基準は受容名Morus nigraであり、ChelseaやJerusalemは別種ではなく園芸選抜系統の名です。 1 5
生息地と分布
由来は南西アジア、イラン西部・南西部や小アジアの地域とされ、古代から栽培されてきました。栽培化の歴史があまりに長いため、元の野生分布域を確実に特定することはできません。 1 3
この西アジアの中心地から古代に西へ広まり、地中海沿岸を経て温暖な温帯各地へ伝わりました。特にイタリアでは養蚕のために栽培されましたが、後にはカイコにより適したマグワに置き換わりました。 3 6
現在見られるのは主に植栽された木で、暖かな場所の深く水はけのよい土壌にある果樹園、庭、並木や公園に生えます。帰化はごく限られ、目立つ野生群落を作ることはほとんどありません。 2 4
生活環と繁殖
落葉樹として季節の変化が明瞭で、春の芽吹きと開花、夏の結実、秋の黄葉と落葉という周期をたどります。小さな緑色の尾状花序は風で受粉し、昆虫の関与はほとんどありません。 2 4
受粉後は雌花序が膨らんで複合果となり、熟すにつれて赤黒くなります。熟果は非常に傷みやすく、軽く触れただけでも落ち、保存性も低いため早めに食べます。収穫期は晩夏を中心に続き、気候によっては初秋まで及びます。 3 2
栽培では、果実品質を保つため枝の挿し木が主に用いられます。低温で層積処理した種子の種まきも可能ですが、時間がかかり性質もばらつきます。生長は遅めから中程度で、実生が安定して実るまでにはしばしば8~15年を要し、選抜系統の挿し木苗なら早まります。一方で寿命は長く、何十年も収穫を続けられます。 4 5
利用と注意点
主な用途は食用です。熟果を生食するほか、加熱、ジャム、シロップ、菓子作りに利用します。甘さと穏やかな酸味があり、果樹として好まれるクワの一つです。導入先の地中海地域では歴史的に養蚕にも使われましたが、カイコの飼育には後にマグワが用いられるようになりました。 3 4
十分に熟した実は人が食べられますが、緑の未熟果や葉・枝の生の乳液は軽い消化器症状や一時的な刺激を起こすことがあります。濃色で柔らかくなった実だけを収穫します。ASPCAにも、クワの未熟な部分を食べるとペットが体調を崩すことがあるという情報があります。庭での実用上の注意は、熟果が地面、テラス、衣服に落ちると染みが残ることです。通路から離した植栽が適しています。 7 2
品種・類似種・近縁種
苗木として売られる型は別種ではなく、果実用の選抜系統です。ChelseaとJerusalemは大きな実をよくつけ、風味と比較的早い結実を理由に選ばれています。King Jamesは17世紀の植栽と関連づけられる古い英国の系統です。購入時には品種名、耐寒性、自分の地域での結実適性を確認します。
特に次の植物と混同されやすくなります。
- Morus albaはマグワで、葉はより滑らか、果実は淡色のことが多く、養蚕用に栽培されます。
- Rubus fruticosusはバラ科のとげのある低木で、ブラックベリーは樹木ではなくその枝につきます。
- Morus rubraは北米原産のアカグワで、似た果実をつける同属の別種です。
赤黒い複合果、ざらつく心形の葉、乳液という特徴の組み合わせが、クロミグワを確かめる頼りになる手がかりです。 1 3
主な参考文献
よくある質問
クロミグワには毒がありますか?
熟した果実は人が食べられます。一方、緑の未熟果や生の乳液は軽い消化器症状を起こすことがあります。十分に熟した実だけを食べ、葉はペットや幼い子どもの手の届かないようにします。
マグワとは何が違いますか?
クロミグワは低く広がる樹形とざらつく葉をもち、暗赤色から黒色の肉厚で酸味のある実をつけます。マグワは葉がより滑らかで、果実は淡色で淡泊なことが多く、カイコの餌として栽培されます。
キイチゴの実と同じものですか?
異なります。ブラックベリーはバラ科キイチゴ属Rubusのとげのある低木につきます。クロミグワの実はクワ科の樹木につく複合果で、見かけは似ても植物学的な成り立ちが違います。
実がなるまで何年かかりますか?
通常は数年を要し、実生では8~15年ほどかかることが多く、選抜品種の挿し木苗ならより早く実ります。生長は遅めですが寿命が長い樹木です。
どのような場所に植えますか?
よい収穫には十分な日照が必要です。暖かく風を避けられ、土が深く水はけのよい場所を選びます。熟果の汁が落ちると染みが残るため、テラスからは離して植えます。
剪定後に樹液が流れるのはなぜですか?
ほかのクワ科と同じく傷口から乳液が流れます。樹液が盛んに動く時期の剪定では流出が多く傷も治りにくいため、冬の休眠期に軽く剪定するのが適切です。
どれくらい大きくなりますか?
通常は高さ8~12 mで、同じくらい横に広がり、古木ではさらに大きくなることもあります。広がった樹冠と曲がりくねった幹が、古い庭での特徴的な姿を作ります。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





