クズイモ (Pachyrhizus erosus, )
クズイモ(Pachyrhizus erosus)は、メキシコと中央アメリカ原産のマメ科のつる植物で、ヒカマとも呼ばれます。大きく白い歯切れのよい塊根を食用に栽培します。一方、さやと種子にはロテノンが多く含まれ、食用の根とは対照的に強い毒性があります。
続きを読むクズイモ, ヒカマ, ヤムビーン, Jicama, Yam bean と Mexican turnip






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世界の分布
原産地はメキシコと中央アメリカです。17世紀にスペイン人によってフィリピンに持ち込まれ、そこから中国や東南アジア各地へ広まりました。現在はアジアで広く栽培され、一部では帰化しています。
基本情報
クズイモ(Pachyrhizus erosus (L.) Urb., 1905)は、マメ科クズイモ属のつる植物です。ヒカマやヤムビーンとも呼ばれます。リンネは最初にDolichos erosusとして記載し、イグナッツ・ウルバンが1905年にクズイモ属へ移しました。その学名が現在も使われています。 1 2
国際的な呼び名Jicamaはナワトル語のxīcamatlに由来し、主につる全体ではなく食用の塊根を指します。フランス語のpois patateも、地上にはマメのさや、地下にはジャガイモのように肥大する根を持つ特徴を表します。根は生でも加熱しても食べられますが、同じ株のさやや種子は天然殺虫成分のロテノンを多く含み、人に有毒です。地下の食用部と地上の有毒部をはっきり区別することが大切です。 5
見分け方
細かな毛に覆われた草質のつるは、しっかりした支えがあれば4~5 mに伸びます。支柱がないと地面をはい、細毛のある茎同士が絡まります。葉は互生し、小葉は3枚です。頂小葉は両側の小葉より明らかに大きく、縁には不規則な歯や切れ込みがあります。 3
葉腋から直立する総状花序に、約2 cmの青色、薄紫色、ときに白色の花がつきます。細長いさやは長さ14 cmほどで、赤褐色のほぼ四角い種子を含みます。花やさやだけでは他のつる性マメ科植物と見分けにくい一方、塊根には紙のような黄褐色の皮と、白く歯切れのよい肉質部があります。根の重さは最大20 kgに達することがあります。 4 3
分類のポイント
クズイモ属の分類は何度も見直され、現在の受容名Pachyrhizus erosusには多くの異名が伴います。過去の文献を読むときには、次の名前が同じ種に結びつくことを確認できます。
- Dolichos erosus L. (基礎異名)
- Cacara erosa (L.) Kuntze(異名)
- Pachyrhizus angulatus DC.(異名)
- Pachyrhizus bulbosus (L.) Kurz(異名)
- Pachyrhizus erosus var. palmatilobus (DC.) R.T.Clausen(異名)
- Stizolobium bulbosum (L.) Spreng.(異名)
同じ属には、根を食用に栽培するPachyrhizus tuberosusとPachyrhizus ahipaもあります。土地ごとの呼び名が重なるため混同されやすく、国が変わっても同じ種を確認できる基準は学名Pachyrhizus erosusです。 1 2
生息地と分布
メキシコと中央アメリカの岩がちな丘陵や熱帯落葉樹林の縁が、クズイモの原産地です。この地域ではスペイン人の到来以前から栽培されていました。 5 3
フィリピンへの伝来は17世紀で、スペイン人が持ち込みました。そこから中国や東南アジア各地へ栽培が広がり、塊根は地域の料理で身近な食材になりました。栽培地の外で帰化する場合もありますが、強い侵略性を示すまでには至っていません。 5 4
根の生長は寒さや霜で止まります。大きな塊根を収穫するには、約9か月の無霜期間が必要です。生育できる季節が短い気候でも根はできますが、収穫物は小さくなります。 4
生活環と繁殖
繁殖には種まきを用い、挿し木や株分けでは増やしません。地温が20 °Cを超えると発芽し、下から温めると発芽がかなり早くなります。 4
日が短くなることが開花のきっかけとなり、生育期の終わりごろに花をつけます。開花にはエネルギーが使われ、塊根の肥大が抑えられます。そのため生産者は、現れた花を早めに取り除き、根の肥大に養分を回します。 4
ジャガイモが1株に複数のいもをつけるのに対し、クズイモは通常、大きな塊根を1個形成します。早めの摘花は、この1個の根をさらに大きく育てる助けになります。 3
利用と注意点
皮をむいた塊根は、サラダや塩とレモンを添えるスティック、スープや炒め物に使えます。肉質部の約90%は水分で、ビタミンCにも富みます。水分の多さが、歯切れよくみずみずしい食感を生みます。 5 4
食用の根と異なり、成熟種子、さや、葉にはロテノンが集積します。この物質は長く殺虫剤や漁毒に利用され、人が摂取すると危険です。根が食べられることを、株全体が安全である根拠にしてはいけません。 7
塊根は乾いた状態で12.5~15 °Cに保つと、最大4か月保存できます。冷蔵ではおよそ3週間もちますが、さらに低い温度では変色し、食感も損なわれます。 6
品種・類似種・近縁種
根の汁によって区別される栽培型に、Jícama de aguaとJícama de lecheがあります。前者は透明な汁とこま形の根が特徴で、生鮮市場で好まれます。後者は乳白色の汁を含む細長い根を持ち、生鮮流通は比較的少なめです。 5
呼び名が紛らわしい植物には、次のものがあります。
- Pachyrhizus tuberosusとPachyrhizus ahipaは、同属で塊根を食用にする別種です。
- ヤーコン(Smallanthus sonchifolius)は南米のキク科植物で、エクアドルやペルーではjícamaとも呼ばれます。
種子や苗を購入する際は、学名全体のPachyrhizus erosusを確認すると種を特定できます。jícamaという一般名だけでは、国によって別の植物を指す場合があります。 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Pachyrhizus erosus (L.) Urb.
- Royal Horticultural Society, Pachyrhizus erosus - yam bean
- Missouri Botanical Garden Plant Finder, Pachyrhizus erosus
- University of California ANR Small Farm Program, Jicama
- UF/IFAS Gardening Solutions, Jicama
- National Center for Home Food Preservation (Univ. of Georgia), Using and Preserving Jicama
- Jaiswal, Chauhan & Lee, 2021, The Bioactivity and Phytochemicals of Pachyrhizus erosus (L.) Urb., Antioxidants
よくある質問
クズイモには毒がありますか?
皮をむいた塊根は食用です。一方、種子、さや、葉にはロテノンが高濃度に含まれます。これは歴史的に殺虫剤や漁毒として使われた物質です。
ヒカマの種子は食べられますか?
いいえ。成熟した種子は植物体の中で最もロテノンに富む部分で、決して食べてはいけません。食用に収穫するのは塊根だけです。
クズイモの収穫まで何か月かかりますか?
大きな塊根を得るには、霜のない期間が約9か月必要です。涼しい地域でも5か月ほどの生育期間で収穫できますが、根は小さくなります。
クズイモの花を摘むのはなぜですか?
開花やさやの形成にはエネルギーが使われます。花が現れたら摘むことで、収穫する塊根の肥大にエネルギーを回します。
クズイモはヤーコンと同じ植物ですか?
違います。エクアドルやペルーではヤーコンをjícamaと呼ぶことがありますが、これは甘い塊根を持つキク科の植物です。マメ科のPachyrhizus erosusとは別の仲間です。
Jícama de aguaとJícama de lecheはどう違いますか?
根の汁の性質が異なります。de aguaは汁が透明で根はこま形、生鮮市場で好まれます。de lecheは乳白色の汁を含み、根がより細長くなります。
現在栽培されるクズイモはどこから来たのですか?
メキシコと中央アメリカが原産です。17世紀にスペイン人がフィリピンへ持ち込み、その後中国や東南アジアに広がり、今も広く栽培されています。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。



