タテバテンジクアオイ (Pelargonium peltatum, )
タテバテンジクアオイ(Pelargonium peltatum)は、南アフリカ原産のフウロソウ科の小低木です。柔らかな茎が垂れ、やや盾状につく肉厚なアイビー形の葉と、夏じゅう咲く色鮮やかな散形状の花を持ちます。プランターから流れるように育つ、霜に弱い多年性の植物です。
続きを読むタテバテンジクアオイ, アイビーゼラニウム, Ivy-leaved pelargonium, Ivy geranium と Cascading geranium






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世界の分布
Pelargonium peltatumの自生域は南アフリカのケープ地方に限られます。バルコニーやプランターの植物として世界中で栽培され、地中海沿岸、オーストラリア、カリフォルニアなどの温暖な地域では局所的に帰化しています。こうした導入地と南アフリカの原産地は区別する必要があります。
基本情報
タテバテンジクアオイ(Pelargonium peltatum (L.) L'Hér., 1789)は、フウロソウ科テンジクアオイ属の垂れ下がる小低木です。園芸ではアイビーゼラニウムとして知られ、世界でも特に広く、バルコニーやテラスの彩りに栽培される観賞植物のひとつです。 1 4
園芸店でいう「ゼラニウム」は、植物学上のGeranium属とは異なります。Pelargonium属は1789年にレリチエによってフウロソウ属から分けられました。本来のフウロソウ属には花壇で育つ耐寒性の多年草が多い一方、ペラルゴニウムは南アフリカ由来の霜に弱い植物です。 2 3
栽培上は特にプランター向けの花として親しまれます。柔らかな茎が流れるように垂れ、春から霜が降りるまで花をつけるため、バルコニーのプランターや吊り鉢でよく利用されます。 2 6
見分け方
しなやかに垂れ下がる茎は40 cmから1 m以上に伸びます。葉は肉厚でなめらかな光沢があり、浅く5つに裂けた形がアイビーの葉を思わせます。アイビーゼラニウムの呼び名も、この形に由来します。 3 4
種小名peltatumの手がかりは、やや盾状の葉です。葉柄は葉の切れ込みや縁そのものではなく、葉身の縁より少し内側につきます。葉には濃い色の半円形の帯が見えることもあります。 1 3
花は2〜10輪ずつ、疎らな散形状の花序に集まります。品種によって白、ピンク、淡紫、赤などの色があります。個々の花は左右相称で、花柄と合着した蜜をためる距を持ちます。ひと目では気づきにくいものの、放射相称の花を持つフウロソウ属とは明確に異なる特徴です。 4 2
分類のポイント
最初にリンネがGeranium peltatum L.として記載し、1789年にレリチエがテンジクアオイ属へ移しました。現在の受容名はPelargonium peltatum (L.) L'Hér.です。古い文献には別名も見られ、主な植物学上の異名には次のものがあります。
- Geranium peltatum L.(異名)
- Pelargonium scutatum Sweet(異名)
- Pelargonium hederifolium Salisb.(異名)
- Geraniospermum peltatum (L.) Kuntze(異名)
- Dibrachya peltata (L.) Eckl. & Zeyh.(異名)
同定の基準になるのは受容された学名Pelargonium peltatumです。Ville de Paris、Decora、Cascadeなどの販売名は園芸上の選抜系統を指し、独立した種や植物学上の変種ではありません。園芸店のアイビーゼラニウムの多くは、この種に由来する交雑種です。 1 7
生息地と分布
南アフリカのケープ地方が原産地で、地中海性から亜熱帯の気候下の低木林、岩場の斜面、乾いた林縁に生育します。原産地ではほぼ一年中咲き、南半球の春に当たる8〜10月に花が最も多くなります。 1 3
気候は温暖で乾燥気味の条件に適し、霜は苦手ですが、暑さや短い乾燥にはよく耐えます。南向きのバルコニーで育ちやすいのもこのためです。十分な日照と水はけのよい用土が栽培の基本になります。 2 6
世界中へ観賞用に広まった結果、地中海沿岸、オーストラリア、カリフォルニアなど、温暖な地域の一部で帰化しています。こうした導入地は、野生に生育する南アフリカの自生域とは区別する必要があります。 7 5
生活環と繁殖
霜に弱い多年性植物で、温暖地では緑を保ち、ほぼ連続して開花します。寒い地域では季節の花として育て、冬は凍らない場所へ取り込みます。常緑で、冬に地上部を枯らして休眠する草本とは異なり、本来は休眠しない性質です。 3 2
散形状に集まる花は蜜を出し、原産地では長い口吻を持つ昆虫やチョウに受粉されるのに適しています。花後にはフウロソウ科に特徴的な乾いた実ができます。コウノトリのくちばしに似た長い嘴状部分が属名の由来で、ギリシャ語pelargósはコウノトリを意味します。 4 1
増殖は夏の終わりの節を含む茎の挿し木が中心です。8〜15 cmの茎を切り、切り口を数時間乾かして、わずかに湿った排水のよい用土へ挿します。暖かい環境では2〜4週間で発根します。種まきも可能ですが、交雑種の種子は親株の性質を忠実に再現しないため、主に新しい品種を得る際に使われます。挿し木の容易さも、バルコニー向け品種の普及を支えています。 2 5
利用と注意点
主な利用は観賞です。鉢、プランター、吊り鉢から夏の花を流れるように咲かせる、バルコニーの定番となっています。長く豊かに咲く花、耐暑性、挿し木のしやすさが、テラスやバルコニーで広く使われる理由です。 2 6
動物への安全性には注意が必要です。ASPCAは園芸のゼラニウムに当たるPelargoniumをネコとイヌに有毒としています。葉の精油に含まれるゲラニオールやリナロールは、消化器症状、元気消失、接触性皮膚炎を引き起こす可能性があります。人には危険な植物とはみなされていませんが、プランターはネコやイヌの届かない場所に置くと安心です。 8 5
品種・類似種・近縁種
販売される多様な姿は、独立した種ではなく、この種に由来する栽培品種や交雑種です。Ville de Parisは定番のピンク花、DecoraとCascadeは勢いよく垂れるシリーズです。TornadoとGreat Balls of Fireは、よりコンパクトで花がらの落ちやすい現代の選抜系統です。購入時は茎の元気さ、葉裏のさび病の有無、樹形の整い方を確かめます。 2
混同しやすい植物と、それぞれの違いは次のとおりです。
- Pelargonium x hortorum(ゾナル系ゼラニウム)。直立し、ビロード状の葉に濃い帯があります。
- Geranium属(フウロソウ属)。花壇で育つ耐寒性の多年草で、花は放射相称です。
- Pelargonium grandiflorum(大輪系)。フローリスト系と呼ばれるゼラニウムのもとになる種です。
確認の決め手は、垂れる茎、肉厚のアイビー形の葉、花柄と合着した距です。これらを合わせて見ると、アイビーゼラニウムとして売られる植物がPelargonium peltatumの特徴を持つかどうかを判断できます。 3 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Pelargonium peltatum (L.) L'Hér.
- Royal Horticultural Society, Pelargonium peltatum(アイビーゼラニウム)
- Missouri Botanical Garden, Pelargonium peltatum
- Encyclopaedia Britannica, ゼラニウム(Pelargonium属)
- Plants For A Future, Pelargonium peltatum
- NC State Extension, Pelargonium peltatum
- USDA PLANTS Database, Pelargonium peltatum (L.) L'Hér.
- ASPCA, ゼラニウム(Pelargonium)のネコ・イヌへの毒性
よくある質問
タテバテンジクアオイはネコやイヌに有毒ですか?
はい、注意が必要です。ASPCAは園芸のゼラニウムに当たるPelargoniumを、ネコとイヌに有毒としています。葉の精油に含まれるゲラニオールやリナロールは、消化器症状、元気消失、接触性皮膚炎を起こす可能性があります。プランターは動物の届かない場所に置きます。
バルコニーのゼラニウムはフウロソウ属ですか?
いいえ。庭やバルコニーのゼラニウムは、1789年にGeranium属から分けられたPelargonium属に属します。Geranium属には花壇で育つ耐寒性の多年草が多い一方、ペラルゴニウムは南アフリカ由来の霜に弱い植物です。
タテバテンジクアオイは冬の寒さに耐えますか?
霜に弱く、凍結すると枯れます。温暖な地域(USDA 9〜11)では屋外で育てられますが、それ以外では凍らない明るく涼しい場所へ取り込み、春の再生に備えます。
タテバテンジクアオイに花が咲かないのはなぜですか?
よくある原因は日照不足や窒素過多です。1日6時間以上の日照がある場所に置き、窒素の少ないゼラニウム用肥料を使います。花がらを取り除くと次の開花を促せます。
タテバテンジクアオイはどう挿し木しますか?
夏の終わりに少なくとも1節ある8〜15 cmの茎を切り、切り口を乾かしてから、水はけがよくわずかに湿った用土へ挿します。暖かく明るい環境では2〜4週間で発根します。
ゾナル系ゼラニウムとは何が違いますか?
タテバテンジクアオイ(Pelargonium peltatum)は茎が垂れ、肉厚でアイビー形の葉を持ち、吊り鉢に適します。ゾナル系(Pelargonium x hortorum)は直立し、ビロード状の葉に濃色の帯が見られます。
バルコニーではどのくらい水やりしますか?
真夏は週2〜3回を目安に、用土の表面が乾いてから次の水やりを行います。短い乾燥には耐えますが、水がたまると株元が腐ります。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。







