シルバーメープル (Acer saccharinum, )
シルバーメープル(Acer saccharinum)は、カナダ南東部とアメリカ合衆国中東部原産のムクロジ科の落葉高木です。深く5裂する葉と銀白色の葉裏、速い成長が特徴です。晩冬から葉より先に花を咲かせ、春に大型の翼果をつけます。材が折れやすく、しおれた葉は馬に危険です。
続きを読むシルバーメープル, Silver maple, Creek maple, Water maple と Swamp maple






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Taken Jul 21, 2022 by Oğuzhan (cc-by-sa)
Taken Jul 22, 2022 by Oğuzhan (cc-by-sa)
Taken Jun 2, 2015 by Tela Botanica − Alessandro Bufalini (cc-by-sa)
Taken May 8, 2022 by Tristan Jaton-Maria (cc-by-sa)
Taken Oct 20, 2022 by Dominik Muczyński (cc-by-sa)
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世界の分布
自生域はカナダ南東部とアメリカ合衆国中東部で、ニューブランズウィックからフロリダ、西はグレートプレーンズに達します。ヨーロッパでは主に観賞用です。フランス、ドイツ、ベルギーの川沿いに散発的に帰化しますが、安定した個体群はまだ成立していないとされています。
基本情報
風に揺れる葉裏の銀白色が印象的なシルバーメープル(Acer saccharinum L., 1753)は、ムクロジ科カエデ属の大きな落葉樹です。カール・フォン・リンネが1753年の『Species Plantarum』に記載しました。北米東部の川沿いに多く、アメリカヤナギやアメリカクロヤマナラシとともに生育します。 1 2
英語名silver mapleも、風が葉を裏返すとよく見える銀白色の裏面を表しています。種小名saccharinumは甘い樹液を連想させますが、サトウカエデと同じ種ではありません。本種の樹液の糖分はそれよりかなり少なく、商業的なシロップ生産には収量が低いとされています。 3 4
見分け方
深い切れ込みのある5裂の葉が、最も分かりやすい特徴です。葉は長さ8〜16 cmで、裂片の間が鋭く切れ込み、表は明るい緑、裏ははっきりした銀白色になります。成木は一般に高さ15〜25 m、枝張り12〜20 mで、例外的に30 mの記録もあります。 2 3
花弁のない黄緑色から赤みのある花が、冬の終わりに葉より先に小さな房状に咲きます。後にできる長さ4〜7 cmの翼果は、北米産カエデの中でも大型です。翼は大きく開き、多くのカエデが秋に結実するのに対し、本種では晩春に成熟します。 3 2
若木の灰色で滑らかな樹皮は、年齢を重ねると長い帯状にはがれます。材は軟らかく、大枝の分岐部で折れやすい性質があります。風にさらされた成木で見られる枝の損傷も、外観を判断する際の手がかりになります。 2 3
分類と学名
シルバーメープルの受容名は、1753年の『Species Plantarum』に発表されたAcer saccharinum L.です。世界的に独立した植物分類上の変種は認められていません。異名は主に古い組み合わせや園芸上の形態に由来し、Acer dasycarpum Ehrh.のように、現在は同種の非合法名や古い名として扱われるものがあります。 1
所属するムクロジ科には、アメリカハナノキとサトウカエデも含まれます。特に前者とは湿った生育地や早い開花期が共通するため、混同されやすい関係です。流通名に見られるAcer x freemaniiは本種とアメリカハナノキの交雑種であり、シルバーメープルの変種ではありません。 1 5
生育環境と分布
カナダ南東部からアメリカ合衆国の中部・東部が、もともとの分布域です。ニューブランズウィックからフロリダ、西はグレートプレーンズへ続きます。川岸や氾濫原に多く、数週間続く冠水にも耐えるため、水辺で目にする機会が多い一方、乾いた丘陵では少なくなります。 1 3
国際自然保護連合(IUCN)による世界規模の保全評価は低懸念(LC)です。本来の分布域では普通に見られ、種全体として絶滅の危険が高い状況にはないとされています。 8
原産域外のヨーロッパでは、主として木陰をつくる観賞樹として栽培されます。フランス、ドイツ、ベルギーの川沿いで散発的な帰化が見られますが、孤立した個体に限られ、安定した個体群はおそらくまだ成立していないとされています。 7
生活環と繁殖
湿った地面に落ちた翼果の種子は休眠せず、数日から数週間で発芽します。多くの温帯産カエデが秋に結実し、翌春を待って発芽するのに対し、春に熟した種子がすぐ育ち始めることが、本種の生活環の特徴です。 3 4
温帯のカエデでも特に成長が速く、よく根づいた若木ではしばしば年間1 m以上伸びます。短期間で木陰を得られるため、都市で大量に植えられてきました。しかし材の折れやすさから、自治体ではフリーマンカエデなど別の樹木が選ばれるようになりました。 2 3
この成長を支える根は浅く広く広がります。歩道や園路を持ち上げ、ときには埋設管に亀裂を生じさせることもあります。都市で植える場合には、建物の基礎や舗装に近づけすぎない配置が必要になります。 3
利用と注意点
短期間で木陰をつくり、やせた都市土壌や湿った土にも耐える点が、主な植栽理由です。秋の葉色はほかのカエデほど鮮やかではありません。樹液を採って煮詰めればシロップになりますが、糖度がサトウカエデより低く、商業生産より家庭的な利用にとどまります。 4 2
葉、材、樹液は猫、犬、人には非有毒とされています。一方、馬では、しおれた葉や枯れた葉のタンニンや没食子酸がピロガロールへ代謝され、ヘモグロビンの酸化と赤血球の破壊を起こします。近年の臨床報告では、しおれた葉を食べた雌馬の重度中毒が記録され、血液透析による治療が行われました。 6
人の生活する場所では、軟らかく折れやすい材が実用上の大きな問題です。大枝は強風や着氷の重みで折れやすいため、都市の成木では定期的な枝透かしが必要とされます。成長の速さだけで植栽を決めず、枝を管理できる場所を選ぶことが大切です。 2
品種と似た植物
植物分類上の変種が認められなくても、園芸では複数の選抜型が流通します。1966年に導入されたSilver Queenは、直立的な樹形と結実の少なさが特徴です。PyramidaleやSkinneriは円柱形またはしだれる樹形を示し、Laciniatumは深く細かく切れ込む葉をもつ園芸型のグループ名です。 3
比較されることが多いアメリカハナノキ(Acer rubrum)は、生育地と開花期が似ています。シルバーメープルでは葉が深く5裂し、裏が銀白色になるのに対し、アメリカハナノキでは切れ込みが浅く、葉裏の銀色も明瞭ではありません。サトウカエデ(Acer saccharum)は学名が似ていますが、葉裏は銀白色ではなく、成長もずっと遅い木です。 3 5
流通する交雑種Acer x freemaniiにも注意が必要です。シルバーメープルとアメリカハナノキの交配に由来し、Autumn Blazeなどの品種名で販売されます。葉が両親の中間的な姿でも、Acer saccharinumそのものではありません。 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Acer saccharinum L.
- Missouri Botanical Garden Plant Finder, Acer saccharinum
- North Carolina Extension Gardener Plant Toolbox, Acer saccharinum
- Plants For A Future, Acer saccharinum
- INPN / MNHN, Acer saccharinum
- Pinnell et al., 2024, Journal of Veterinary Internal Medicine, 馬におけるシルバーメープルの葉の毒性
- Manual of the Alien Plants of Belgium, Acer saccharinum
- IUCN Red List, Acer saccharinumの評価
よくある質問
シルバーメープルは動物に有毒ですか?
葉や材は猫、犬、人には非有毒とされています。一方、馬ではしおれた葉や枯れた葉が重い溶血を起こす可能性があり、近年の雌馬の中毒例でも記録されています。
樹液からシロップをつくれますか?
採取して煮詰められますが、糖度はサトウカエデより低いです。Acer saccharinumという似た学名で混同されやすいものの、両者は別種です。
枝が折れやすいのはなぜですか?
材が軟らかく成長も速いため、機械的な強さが低くなりがちです。葉の重い大枝は強風や着氷の重みで折れやすくなります。
アメリカハナノキとの見分け方は?
本種は深く5裂する葉と明瞭な銀白色の葉裏が目安です。Acer rubrumは切れ込みが浅く、裏面の銀色も明瞭ではありません。湿った生育地と早い開花期は共通します。
フランスでは侵略的ですか?
厳密にはそうされていません。フランス、ドイツ、ベルギーの川沿いで散発的な帰化は見られますが、ほかの導入カエデのような安定した個体群には至っていないとされています。
なぜ成長が速いのですか?
温帯産カエデでも特に旺盛な種で、よく根づいた若木は年間1 m以上伸びることがあります。そのため、短期間で木陰を得る都市樹として広く使われました。
どの植物と混同しやすいですか?
アメリカハナノキ(Acer rubrum)と、両種の交雑種Acer x freemaniiです。後者はAutumn Blazeなどの名で販売され、材が比較的折れにくいとされています。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。







