シログワイ (Eleocharis dulcis, )
シログワイ(Eleocharis dulcis)は、熱帯・亜熱帯アジア、熱帯アフリカ、オセアニア原産のカヤツリグサ科の多年生水生植物です。通常の葉を持たず、鮮緑色の筒状の茎を伸ばし、泥の下に白く歯ごたえのある丸い球茎を作ります。古くから水生野菜として栽培されています。
続きを読むシログワイ, Chinese water chestnut, Water chestnut, Bíqí と Mǎtí






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世界の分布
原産域は熱帯・亜熱帯アジア、熱帯アフリカ、オセアニアに広がり、オーストラリア北部まで分布が確認されています。現在は東アジアと東南アジアで広く栽培され、ほかの温暖な地域にも商業作物として導入されています。
基本情報
シログワイ(Eleocharis dulcis (Burm.f.) Trin. ex Hensch., 1833)はカヤツリグサ科の多年生水生植物です。英語などでは「水のクリ」と呼ばれますが、クリ属Castaneaとは関係ありません。その呼び名は、唯一の食用部である地下の球茎の形と歯ごたえに由来します。 3 1
食用の球茎に毒性はありませんが、生のまま皮をむかず、洗わずに食べると肥大吸虫症を引き起こすことがあります。止水域で育った表皮に、後述する腸内寄生虫Fasciolopsis buskiが付着するためです。皮をむくか加熱することで除去できます。
中国ではbíqí(荸荠)やmǎtí(马蹄)と呼ばれます。後者は「馬のひづめ」を意味し、平たく丸い球茎の姿を表します。英語のChinese water chestnutは、同じくwater chestnutと呼ばれる、まったく別の植物Trapa natansと区別する名前です。 2
見分け方
光合成を担うのは、通常の葉ではなく鮮緑色の筒状の茎です。直立する茎の内部には規則的な間隔で隔壁があり、浅い水中で光を受けるため高さ1〜1.5 mまで伸びます。先端には黄褐色の小穂が一つつき、花弁や目立つ花色はありません。 2 3
泥の下では一株に一つ以上の直径2.5〜4 cmの丸い球茎ができます。鱗片状の皮は暗褐色から黒褐色で、中は白く、歯ごたえがあり、約80 %の水分を含みます。食用にするのはこの球茎だけで、地上の茎は食べません。 3 4
分類のポイント
ブルマンは1768年に、イネ科の植物としてAndropogon dulcis Burm.f., 1768の名で記載しました。1833年にトリニウスとヘンシェルがカヤツリグサ科のEleocharis属へ移しました。葉のない筒状の茎は、一見するとイネ科にも見えるものです。受容名Eleocharis dulcis (Burm.f.) Trin. ex Hensch.の著者表記に、この命名と組み替えの経緯が残っています。 1
同じ植物には、次の異名も使われてきました。
- Eleocharis tuberosa Schult.(異名)
- Eleocharis plantaginea (Retz.) Roem. & Schult.(異名)
- Scirpus tuberosus Roxb.(異名)
- Scirpus plantagineus Retz.(異名)
大きな球茎を持つ栽培型はEleocharis dulcis var. tuberosa (Schult.) T.Koyamaとされ、小さな球茎を持つ野生型と区別されます。 1 7
生息地と分布
自生の分布は熱帯・亜熱帯アジア、熱帯アフリカ、オセアニアに及び、オーストラリア北部でも確認されています。そこではカササギガンが球茎を食べ、雨季に筒状の茎葉を使って浮巣を作ります。 2 1
根を張る場所は泥底で、水深約10 cmの浅い止水域を好みます。十分な大きさの球茎を作るには日なたが必要です。中国南部、タイ、台湾、フィリピン、インドで大規模に栽培され、米国やオーストラリア南西部にも商業作物として導入されています。 2 6
生活環と繁殖
栽培には約7か月の無霜期間が必要です。地温が約13.6 °Cに達すると球茎が芽を出し、30〜35 °Cで茎葉の生長が速まります。その後の球茎形成には5 °Cほど低い温度が適し、日長12時間未満になると肥大が大きく促されます。茎が黄変して乾き始める晩夏から秋が収穫期になるのはこのためです。 2 5
水辺の害虫では、トビケラの幼虫、チョウやガの幼虫、ヨコバイ、カイガラムシが茎を加害します。高温多湿の条件ではUromycesによるさび病やCylindrosporium eleocharidisによる茎の病害が発生し、土壌線虫は形成中の球茎を直接加害します。 5 2
増殖はほぼ常に球茎の分割によって行い、春に植え付けます。種まきも可能ですが、時間がかかり、主に実験的な方法です。一つの球茎から一シーズンで一株の茂みができ、中国では20〜40 t/ha、集約栽培では47〜85 t/haの収量が報告されています。 4 2
利用と注意点
甘みのある球茎は生でも加熱しても食べられます。長時間の加熱でも歯ごたえが残るのは、フェルラ酸のオリゴマーが細胞壁を強くするためで、単に鮮度がよいからではありません。生の球茎100 gは約97 kcal、炭水化物24 gを含み、カリウム、マンガン、ビタミンB6も比較的豊富です。 2 4
中国やタイの料理では炒め物や缶詰に用い、粉にして菓子を作るほか、タイのデザートthap thim kropでは甘く加工して使います。 2
人や一般的なペットに対して、球茎そのものの毒性はありません。ただし、皮付きで洗わずに生食することにはリスクがあります。止水域で育つ表面に肥大吸虫Fasciolopsis buskiのメタセルカリアが付着し、肥大吸虫症の原因になるためです。皮をむいて十分に洗うか、加熱するとこのリスクを取り除けます。 2
品種・類似種・近縁種
栽培されるvar. tuberosaは、野生型より明らかに大きな球茎を作りますが、別種ではありません。確認の基準となる受容名はEleocharis dulcisです。 1
見間違えやすい植物には、次のものがあります。
- Trapa natansは、同じく「water chestnut」と呼ばれるミソハギ科の一年生浮葉植物で、角のある果実をつけます。呼び名は共通してもシログワイの近縁種ではありません。
- Cyperus esculentusは甘い塊茎を持つ別属のカヤツリグサ科植物で、よりヘーゼルナッツに近い風味があります。
- 野生のほかのEleocharis属植物も茎葉の姿は似ていますが、商業利用できる大きさの球茎は作りません。
球茎も小穂も見えない状態では、慎重に採取して確認することが、これらを区別する手がかりになります。湿地や水田という生育場所は共通しているため、環境だけでは判別できません。 3
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Eleocharis dulcis (Burm.f.) Trin. ex Hensch.(分類)
- Wikipedia英語版, Eleocharis dulcis
- Wikipediaフランス語版, シログワイ(Eleocharis dulcis)
- Plants For A Future, Eleocharis dulcis(植物情報)
- Rural Industries Research and Development Corporation, シログワイ栽培ハンドブック
- Department of Agriculture and Food, Western Australia, 西オーストラリアのシログワイ栽培
- USDA PLANTS Database, Eleocharis dulcis(植物記録)
よくある質問
シログワイはクリの仲間ですか?
いいえ。シログワイはカヤツリグサ科で、クリ属Castaneaとは関係ありません。英語などの「水のクリ」という呼び名は、食用の球茎の形と歯ごたえに由来します。
球茎を生で食べても大丈夫ですか?
球茎自体は無毒ですが、止水域で育つ表面に肥大吸虫Fasciolopsis buskiのメタセルカリアが付着することがあります。皮をむいてよく洗うか、加熱することで肥大吸虫症のリスクを取り除きます。
Trapa natansとは何が違いますか?
Trapa natansはミソハギ科の一年生の浮葉植物で、角のある果実をつけます。シログワイとは一部の言語で呼び名が共通するだけで、植物学的な近縁関係はありません。
花や球茎がなくても見分けられますか?
直立した鮮緑色の筒状の茎が最も頼りになる特徴です。通常の葉がなく、茎の内部に隔壁があるため、小穂や球茎が見えないときにも手がかりになります。
シログワイは猫や犬に有毒ですか?
猫、犬、人に球茎の毒性は記録されていません。ただし馬については十分な資料がありません。
家庭ではどう育てますか?
春に球茎を日当たりのよい池や水を張れる大きな容器に植え、常に5〜10 cmの水深を保ちます。収穫は6〜8か月後の夏の終わりです。
加熱しても歯ごたえが残るのはなぜですか?
フェルラ酸のオリゴマーが球茎の細胞壁を強くするためです。この性質によって、炒め物や缶詰にしても歯ごたえが残ります。単に鮮度によるものではありません。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





