シュッコンカスミソウ (Gypsophila paniculata, )
シュッコンカスミソウ(Gypsophila paniculata)は、ヨーロッパ中東部と温帯アジア原産のナデシコ科の多年草です。深い直根に支えられた丸い株を作り、無数の白い小花が全体を覆います。花束の隙間を軽やかに埋める代表的な切り花で、植物体には軽い刺激性をもつサポニンが含まれます。
続きを読むシュッコンカスミソウ, コゴメナデシコ, ハナイトナデシコ と Baby's breath




© 写真
(c) artiom_prokhorov, some rights reserved (CC BY-NC) · cc-by-nc
Wikimedia Commons · CC BY-SA or Public Domain
Taken Jun 16, 2022 by Laszlo Tosoki (cc-by-sa)
Taken Aug 1, 2021 by Jana Vovk (cc-by-sa)
Taken Feb 13, 2021 by Stevens Alana (cc-by-sa)
Taken Dec 29, 2013 by Tela Botanica − Pierre CROUZET (cc-by-sa)
© copyright of the Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew.
世界の分布
自生域はヨーロッパ中東部からモンゴル西部にかけてのステップや乾燥地です。切り花として広く栽培され、域外でも帰化しています。アメリカ北部の複数州やカナダでは侵略的植物とされます。こうした導入先と、本来のユーラシアの自生域は区別する必要があります。
基本情報
シュッコンカスミソウ(Gypsophila paniculata L.、1753)は、ナデシコ科カスミソウ属の多年草です。コゴメナデシコ、ハナイトナデシコとも呼ばれます。属名はギリシャ語のgypsos(石膏)とphilos(好む)に由来し、同属の多くが石灰質や石膏質の土に生えることを表しています。 1 4
花屋や庭では、花束の間を埋める添え花としてよく知られています。無数の小さな白花が軽いベールとなり、花束やバラの株元を彩ります。耐寒性が高く、栽培で大切なのは十分な日光と水はけのよさです。 2 3
見分け方
高さ60〜120 cmに育つ株は、枝分かれが多く、全体がほぼ球形になります。やや粉白を帯びた細い茎は折れやすく、細い披針形の灰緑色の葉が対生します。繊細な茎につく葉の数はあまり多くありません。 3 6
最も目立つのは花序です。5枚の花弁をもつ無数の白い小花が、非常に疎な円錐花序に広がり、全体に霞のような印象を与えます。英語名Baby’s breathは、息にたとえられるほど軽やかな見た目を表しています。 4 2
地下には太く深い直根が伸びます。地中深くの水を利用できる一方、この根のため移植は難しくなります。開花期は夏で、その後に小さな乾いた蒴果ができます。 5 3
分類のポイント
本種の学名Gypsophila paniculata L.は、リンネが1753年に記載したものです。カスミソウ属にはユーラシア産の多くの種があり、古い種内分類名も文献に残っています。主な異名は次のとおりです。
- Gypsophila paniculata var. adenopoda Borbás ex Hallier(古い種内分類名)
- Gypsophila paniculata subsp. bicolor Freyn & Sint.(古い種内分類名)
- Gypsophila paniculata var. effusa Fenzl(古い種内分類名)
- Gypsophila paniculata var. hirta Gruner(古い種内分類名)
- Gypsophila paniculata var. latifolia Hohen.(古い種内分類名)
同定には受容される学名Gypsophila paniculataを基準にします。Bristol FairyやSnowflakeなどは園芸的な選抜品種で、別種や独立した植物学的変種ではありません。 1 7
生息地と分布
ユーラシアのヨーロッパ中東部から、温帯アジアのモンゴル西部までが原産です。ステップや乾いた草原、砂質・礫質の斜面、日当たりと水はけのよい石灰質土壌に自生します。 1 3
ステップの植物らしく、乾燥ややせた土に耐える一方、停滞する水分を嫌います。庭でも日なたと非常に水はけのよい土が必要で、重く湿った土では育ちにくくなります。 6 2
切り花用として広く栽培され、自生域外で帰化しました。アメリカ北部の複数州やカナダでは、乾いた砂地に広がる侵略的植物とされています。フランスでは侵略的植物に分類されていません。こうした導入先の状況は、ユーラシアの原産域と区別する必要があります。 7 5
生活環と繁殖
冬に地上部が枯れ、春に深い直根をもつ株元から再び芽を出す、休眠性の多年草です。夏に開花し、早めに種をまくと1年目から咲く場合もあります。根づいた株は翌年以降も花を繰り返します。 3 5
成熟した乾いた茎が地際から離れ、風に転がりながら種子を散らすのも特徴です。原産地では、いわゆるタンブルウィードのように長い距離を移動します。乾燥地で広がりやすい理由の一つです。 4 6
庭では基本種を主に春の種まきで増やします。八重咲き品種は実生で性質を保てないため、挿し木を使います。直根は切断に弱く、根づいた成株の移植も難しいため、株分けは避け、可能なら最初から植える場所にまきます。 2 5
利用と注意点
現在の中心的な用途は観賞用です。花壇やロックガーデンに植える多年草であるとともに、世界でもよく利用される切り花の一つです。白い小花のベールが花束を軽やかに埋め、バラやカーネーションとよく組み合わされます。 4 2
根にとくに多く、栄養器官にも含まれる成分がサポニンで、その一つにギポセニンがあります。ASPCAはbaby’s breath(Gypsophila)を猫と犬に有毒としています。摂取すると、消化管刺激、流涎、嘔吐、軽い下痢など、多くは軽症の症状が出ます。花束も株も、動物の手が届かない場所に置くのが安心です。 8 5
環境への影響にも注意が必要です。原産域外では侵略的に広がることがあり、アメリカ北部の複数州やカナダでは、乾燥地の雑草として規制されています。フランスでは侵略性の指定がない庭の植物ですが、植栽前に地域による扱いの違いを知っておく必要があります。 7 6
品種・類似種・近縁種
切り花の定番であるBristol Fairyは、白い八重咲きの園芸品種です。Snowflake、Compacta Plena、Perfektaも八重花や花もちで選抜され、Flamingoは淡いピンク色が特徴です。いずれも別々の種ではありません。購入時には品種名、株の勢い、根の状態を確かめます。 2
よく似た近縁種との違いは、次のとおりです。
- Gypsophila elegansは一年草で、花がより大きく、まばらにつきます。
- Gypsophila repensはロックガーデン向けの低い種類で、地面を覆います。
- Gypsophila muralisは小さなピンク色の花をつける矮性の種です。
丸く茂る株、多く枝分かれする細い茎、霞状に広がる小さな白花を組み合わせて見ると、カスミソウとして流通する植物がGypsophila paniculataかどうかを判断しやすくなります。 3 1
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Gypsophila paniculata L.
- Royal Horticultural Society, Gypsophila paniculata, baby's breath
- Missouri Botanical Garden, Gypsophila paniculata
- Encyclopaedia Britannica, baby's breath(カスミソウ類)
- Plants For A Future, Gypsophila paniculata
- NC State Extension, Gypsophila paniculata
- USDA PLANTS Database, Gypsophila paniculata L.
- ASPCA, Baby's Breath(Gypsophila)の毒性情報
よくある質問
シュッコンカスミソウには毒性がありますか?
主に根に、ギポセニンなどのサポニンが含まれます。ASPCAはbaby’s breath(Gypsophila)を猫と犬に有毒とし、通常は軽い消化管刺激が起こるとしています。花束や鉢は動物の手が届かない場所に置いてください。
株元が腐るのはなぜですか?
多くは土が湿りすぎているためです。非常に水はけのよい土を必要とし、重い土や水浸しの場所では直根や株元が腐ります。砂質土か、排水をよくした盛り土に植えます。
どうやって増やしますか?
基本種は春の種まきが最も簡単です。八重咲き品種は種子で同じ性質を保てないため、挿し木で増やします。直根を切ることに弱いので、株分けは勧められません。
侵略的に広がることがありますか?
フランスでは侵略的植物に分類されていません。一方、アメリカ北部の複数州やカナダでは規制対象の雑草とされ、乾いた砂地に広がります。地域によって扱いが異なります。
どのような日当たりが必要ですか?
十分な日なたが必要です。日陰では茎が徒長して花が少なくなります。水はけのよい土で十分な光を受けると、小さな白花が密な霞のようになります。
Gypsophila elegansとはどう違いますか?
Gypsophila paniculataは枝分かれが多く、微小な花をつける多年草です。Gypsophila elegansは一年草で、花がより大きく、まばらにつきます。どちらも英語でbaby’s breathと呼ばれ、花束に使われます。
鉢でも育てられますか?
直根を収める深い容器と、非常に水はけのよい用土があれば可能です。日なたに置き、株元の腐敗を防ぐため水は控えめに与えます。
八重咲きは別の種ですか?
いいえ。Bristol Fairy、Snowflake、Perfektaなどは、八重咲きに選抜された園芸品種です。別種ではなく、種子で同じ性質を保てないため、挿し木で増やします。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。





