セイヨウリンゴ (Malus domestica, )
セイヨウリンゴ(Malus domestica)は、果実のリンゴを収穫するために栽培されるバラ科の落葉果樹です。中央アジアの野生リンゴから長い栽培化を経て生まれ、温帯で最も広く栽培される仁果類となりました。台木に接ぎ木して育てるのが一般的で、多くは他品種の花粉による受粉を必要とし、果樹園では数千もの品種が栽培されています。
続きを読むセイヨウリンゴ, Apple, Apple tree と Cultivated apple






© 写真
Stephen James McWilliam · cc0
Alan Weakley · cc0
Robert H. Wardell · cc0
Taken May 3, 2021 by Alain Bigou (cc-by-sa)
Taken Sep 14, 2022 by Annemarie Ahrens-Stehle (cc-by-sa)
Taken Nov 12, 2022 by Dominik Muczyński (cc-by-sa)
Taken Oct 9, 2022 by Jim Knopf (cc-by-sa)
Taken Jul 29, 2021 by Alain Bigou (cc-by-sa)
© copyright of the Board of Trustees of the Royal Botanic Gardens, Kew.
世界の分布
セイヨウリンゴは、中央アジアの野生リンゴを栽培化した植物です。起源の中心はカザフスタンと周辺地域の天山山脈にあり、祖先のMalus sieversiiが今も生育しています。栽培はその後ヨーロッパへ、さらに世界各地の温帯へ広がりました。
基本情報
セイヨウリンゴ(Malus domestica (Suckow) Borkh., 1803)は、バラ科リンゴ属の果樹です。肉質のリンゴを得るために育てられ、温帯で最も広く栽培される仁果類です。中央アジアの野生リンゴから長い栽培化を経て生まれた栽培起源植物で、現在の形のまま野生に存在するわけではありません。 1 3
果樹園では、冬に葉を落とす耐寒性のある木として育てられます。よく花を咲かせるには、冬の低温による休眠が必要です。英語では果実をApple、木をApple tree、栽培リンゴをCultivated appleと呼び、観賞用のリンゴや野生種と区別します。 2 5
見分け方
横へ広がる樹形と、年を経るとはがれる灰色の樹皮が特徴です。葉は単葉で卵形をなし、縁には細かな鋸歯があり、裏面には薄く毛が生えます。春には、蕾が桃色を帯びる白い5弁花が散房状にまとまって咲きます。 3 4
食用にするリンゴは、花托が膨らんだ肉質の偽果です。中心には軟骨質の芯があり、その中に種子が入ります。果皮の色は品種によって緑、黄、赤までさまざまで、大きさにも大きな違いがあります。 5 4
栽培木を見分ける手がかりは、幹の根元に残る明瞭な接ぎ木部分です。ここで栽培品種と台木が接合されています。花や実は主に、当年の新梢より古い短果枝につきます。 2 3
分類のポイント
1803年にMalus domestica (Suckow) Borkh.として記載され、現在もPlants of the World Onlineがこの名を採用しています。栽培リンゴにはほかにも多くの学名が使われてきました。資料を読む際に知っておきたい名前は次のとおりです。
- Malus pumila Mill.:古くから使われた学名
- Malus communis Desf.:異名
- Pyrus malus L.:異名
- Malus domestica subsp. pumila:亜種としての表記
- Malus ×domestica auct.:雑種を示す表記
特にMalus pumilaは長く栽培リンゴの名として使われましたが、Plants of the World Onlineでは異名とされ、Malus domesticaが受容名です。複数の野生種の交雑に由来するため、Malus ×domesticaという表記も見られます。Golden Deliciousなどの品種名は栽培上の選抜系統を指し、別の植物種を意味しません。 1 4
生息地と分布
野生にそのまま存在する種とは異なり、セイヨウリンゴは栽培起源植物です。主な祖先はMalus sieversiiで、カザフスタンと周辺の中央アジアにまたがる天山山脈に現在も生育しています。 1 3
原産の地域から、古い交易路を通じて近東、ヨーロッパへ栽培が広がり、やがて世界の温帯へ伝わりました。現在は日当たりがよく、深く、適度に湿りながらも水はけのよい果樹園や庭で栽培されています。 2 5
果樹園の木は人が植えて接ぎ木した栽培木です。一方、栽培地からこぼれた種が生け垣や農地の林縁で芽生えることもあります。こうした実生木は、元の栽培品種と同じ性質にはなりません。 4 3
生活環と繁殖
春、葉が展開した後に、白や淡い桃色の両性花を咲かせます。受粉を担うのはミツバチなどの昆虫です。大半の品種には自家不和合性があり、開花時期の重なる別品種の花粉が必要なため、近くに別のリンゴや観賞用リンゴがあると役立ちます。 2 3
受精後は花托が膨らんでリンゴになり、内部で種子が成熟します。収穫は品種と台木によって夏の終わりから秋にかけて行います。種子は低温を経験すると発芽しやすくなりますが、実生では母樹の品種を再現できないため、接ぎ木が用いられます。 5 4
苗木を増やす際には、目的の樹勢に合う台木へ品種を接ぎ木します。台木によって、ベランダ向けの矮性樹から露地の大木まで育ち方が変わります。種まきは主に台木の育成や新品種作りに使われます。接ぎ木から初結実までは、台木や仕立て方により3~8年かかります。 2 3
利用と注意点
用途の中心は果実の収穫です。果肉は人の食用になり、生食、加熱調理、ジュース、シードルなどに利用されます。世界で広く栽培される果物の一つで、生食用、調理用、醸造用など数千の品種があります。春の花はミツバチやほかの訪花昆虫にも食物を供給します。 3 4
木のすべての部分が食べられるわけではありません。種子、葉、樹皮には、消化の際にシアン化物を生じる青酸配糖体アミグダリンが含まれます。人が数粒の種を丸ごと飲み込んでも通常は問題になりませんが、ASPCAはリンゴを猫・犬・馬に有毒としています。これらの動物が葉や種子を食べると中毒を起こすおそれがあるため、剪定枝、落ち葉、食べ残しの芯を与えないようにします。 6 7
品種・類似種・近縁種
数多くの品種は別々の種ではなく、接ぎ木で維持される選抜系統です。Golden DeliciousやGranny Smithは広く普及し、Reine des ReinettesやBelle de Boskoopは家庭果樹園でも親しまれる古い品種です。購入前には耐寒性、台木、相性のよい受粉用品種の有無を確かめます。
同じバラ科の果樹や野生リンゴにも似た姿のものがあります。
- Pyrus communis:セイヨウナシ。果実が細長い仁果類です。
- Malus sylvestris:ヨーロッパの野生リンゴ。小さく酸っぱい実をつけます。
- Malus sieversii:中央アジアの野生リンゴ。栽培品種の祖先です。
幹の根元の接ぎ木部分、軟骨質の芯を持つ果実、桃色と白の花を組み合わせて確認すると、Malus domesticaを見分けやすくなります。 5 1
主な参考文献
よくある質問
リンゴには毒がありますか?
果肉は人が安全に食べられます。一方、種子、葉、樹皮には青酸配糖体が含まれます。ASPCAは、特に葉や種子を食べる場合、リンゴを猫・犬・馬に有毒としています。
リンゴはなぜ接ぎ木で増やすのですか?
リンゴは通常、ほかの品種の花粉で受粉するため、種から育てても元の品種を再現できません。同じ性質の果実を得るために接ぎ木を使います。台木は木の勢いや大きさも左右します。
実をつけるには2本必要ですか?
多くの場合、必要です。大半の品種は自家不和合性で、開花期の重なる別品種の花粉を必要とします。近所のリンゴや観賞用リンゴが、受粉樹の役割を果たすこともあります。
リンゴに向く土と日当たりは?
日当たりがよく、深く、適度に湿りながらも水はけのよい、中性に近い土壌が向きます。過湿な土では根が腐りやすく、日陰では実つきが悪くなります。
リンゴはいつ収穫しますか?
品種により、夏の終わりから秋にかけて収穫します。熟した果実は持ち上げると容易に枝から離れます。傷みのない果実が落ち始めることも、収穫時期の目安になります。
リンゴと見間違えやすい植物は?
同じバラ科の仁果類であるナシや、小さな実をつける観賞用・野生のリンゴ類がよく似ています。果実の形と幹の根元の接ぎ木部分が、見分ける手がかりになります。
栽培リンゴはどこから来たのですか?
天山山脈に生育する中央アジアの野生リンゴMalus sieversiiを栽培化したものです。そこから栽培がヨーロッパへ、さらに世界の温帯へ広がりました。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。







