コウシンバラ (Rosa chinensis, Jacq. 1768)

コウシンバラ(Rosa chinensis Jacq.)は、中国原産のバラ科の落葉低木で、庭のバラの歴史に欠かせない存在です。この系統から生まれた園芸品種は、ヨーロッパのバラに繰り返し咲く性質と鮮やかな色をもたらし、ティー・ローズやハイブリッド・ティー、そして数多くの現代バラに大きな影響を残しました。

続きを読む
学名Rosa chinensis
属Rosa
科Rosaceae
目Rosales

China rose, Chinese rose, Bengal rose, Monthly rose と Yue ji hua

基本情報
毒性
ASPCAでは無毒。とげ、肥料、農薬には注意注意 : 人(子どもを含む) · 無毒 : 猫, 犬 と 馬
管理の難易度
中程度
植物タイプ
木本低木 · 観賞低木 · オールドローズ
葉の性質
落葉
寿命
多年草
原産国
陝西省四川省湖北省貴州省
自生環境
温帯の生物群系。自生地では藪や林縁に生え、栽培下では庭、低い生け垣、花壇、バラ園、オールドローズのコレクションで育てられる
季節性
開花期
春夏秋
収穫期
夏秋
生育
生活環
多年草
休眠
冬季休眠
生育速度
6/10
成熟までの期間
最終的な大きさになるまで5〜10年。花をつける骨格ができるまで2〜3年
樹冠径
1–1.5 m
増やし方
挿し木, 接ぎ木, 種子
気候と水やり
温度
耐寒性
耐風性
中程度。風通しがよく、冷たい風や乾いた風の当たらない場所を選ぶ
湿度
40–75 %
水やり
ごく少量
少なめ
普通
多め
非常に多い
耐乾性
はい
用土
土壌pH
土壌タイプ
肥沃な土, 深い土壌, 水はけのよい土, 涼しく湿った土
塩類土壌
耐えられない
光と置き場所
日照条件

一日を通して強い直射日光が当たる場所に置きます。

光について
日なた。暑い地域では軽い日陰にも耐える
室内
温室
屋外
日なたの花壇, 花壇, 地植え, コンテナ, 風よけのあるバルコニー
鉢
大型コンテナ, 深鉢, 底穴のある鉢, テラコッタ鉢
形態
高さ1.2–2.5 m株張り1–1.5 m
葉
緑
花
赤ピンク白黄紫大きさ4–6 cm
果実
赤
樹形・草姿
コウシンバラ(Rosa chinensis):原産地と利用法 — 樹形・草姿 1
樹皮
緑茶赤

世界の分布

POWOは Rosa chinensis Jacq. を受理名とし、自生域を中国に置いています。概要には陝西省、四川省、湖北省、貴州省が挙げられています。園芸上の分布ははるかに広く、コウシンバラは温帯や亜熱帯の多くの地域で栽培され、一部では導入されています。

  • 原産4
  • 移入4
  • 陝西省
  • 四川省
  • 湖北省
  • 貴州省
  • 韓国
  • インド
  • イタリア
  • オーストラリア

六角形:資料に基づく地域。緑の点:原産分布域。分布状況の出典 POWO(キュー王立植物園).

基本情報

コウシンバラは Rosa chinensis Jacq. のことで、POWOがバラ科の受理種として扱っています。POWOによれば自生域は中国で、とくに陝西省、四川省、湖北省、貴州省が挙げられ、温帯の生物群系に位置づけられています。1

学名は、ジャカンが1768年に『Observationum Botanicarum』で発表したものに基づくとIPNIは示しています。GBIFも同じ二名法を採用し、China rose、Chinese rose、Bengal rose など多くの通称を記録しています。2 3

ややこしいのは、Rosa chinensis が分類データベース上の一つの種にとどまらない点です。園芸の世界では「China rose」が、中国の庭園からヨーロッパのコレクションへ渡った古い型や品種、系統のまとまりも指します。種としての Rosa chinensis と、園芸上のチャイナ・ローズは分けて考える必要があります。4 5

見分け方

RHSは Rosa chinensis を現代の交配バラの多くの祖先とし、生長には幅があっておよそ1.2〜1.8 m、枝は丈夫で、光沢のある緑の葉は3〜5枚の小葉からなると記しています。花は一重で深紅またはピンク、ときに白く、径は約5 cmです。最終的な大きさは高さ1.5〜2.5 m、幅1〜1.5 mになりうるとも書かれています。4

条件のよい気候で育つ株について、NC Stateはやや大きめの姿を描いています。丸くまとまる落葉低木で生長は中程度、高さも幅もおよそ1.8〜2.4 mになることが多いとされます。若い茎が赤紫色を帯び、古くなるにつれ緑から褐色へ変わること、そしてとげがあることが特徴として強調されています。6

葉は互生する複葉で、鋸歯があり、つやがあります。若い小葉は赤みや紫みを帯び、その後、表は濃い緑、裏は淡い緑になります。葉のつやが少ないヨーロッパのオールドローズと、一部のチャイナ・ローズを見分ける手がかりになります。6

花の姿は系統によって大きく異なります。5弁の一重から半八重、八重まであり、香りはほのかで、単生するものも小さな房で咲くものもあります。NC Stateが挙げる花色は白からピンク、赤、紫までで、園芸型の一部にはクリーム色や黄色も見られます。6 4

分類・品種・返り咲き性

POWOは Rosa chinensis Jacq. を受理種としていますが、GBIFには園芸での使われ方に結びついた多くのシノニムや種内名が並びます。Rosa bengalensis、Rosa indica、Rosa chinensis f. mutabilis、f. spontanea、f. viridiflora、var. minima、var. semperflorens などです。コレクションの株が時代や販売元によって異なるラベルで流通するのは、このシノニムの多さによります。1 3

RHSは通称に monthly rose を挙げ、Rosa indica W.T. Aiton を園芸上のシノニムとしています。monthly rose という名は毎月花が咲く約束ではありません。温暖な季節に波のように繰り返し咲く、中国系の一部の系統の性質を表したものです。4

歴史上の役割はきわめて大きなものです。RHSは Rosa chinensis を現代の交配バラの多くの祖先と位置づけています。イリノイ大学エクステンションによれば、チャイナ・ローズは西洋の庭に届く以前から中国で愛されており、その後は二つの性質、つまり繰り返し咲く性質と、ヨーロッパの交配にはなかった明るい深紅のために求められました。4 5

品種 'Old Blush' は、学ぶうえでの目印としてよく引き合いに出されます。イリノイ大学エクステンションは、返り咲き性の歴史と結びついた古いチャイナ・ローズとして紹介しています。'Semperflorens' はNC Stateにも登場し、'Mutabilis'、'Viridiflora'、ミニチュア系は、株ごとに確認すべき園芸上のラベルです。5 6 3

生育環境と分布

植物学的に見ると、Rosa chinensis は温帯気候の中国の種です。POWOは自生域を中国の中北部と中南部とし、概要ではより詳しく省名を挙げたうえで、多くの導入地域も記しています。1

栽培による分布は、自生域よりはるかに広がっています。POWOはアジア、ヨーロッパ、オーストラリア、アメリカ大陸、熱帯や亜熱帯の島々への導入を記録しています。GBIFが複数の言語で通称を収めていることも、コウシンバラが世界中で栽培されてきたことを映しています。1 3

NC Stateは園芸上の原産を South-Central China、分布を世界の温帯全域とまとめています。庭の株は、その土地の野生の低木としてではなく、コレクションや花壇、生け垣のために栽培されたバラとして捉えるのが適切です。6

フランスでは Rosa chinensis は侵略的な種とはされていません。むしろ注意したいのはラベルと台木です。チャイナ・ローズとして売られる株の多くは接ぎ木苗で、出てくるひこばえは購入した品種ではなく台木のものかもしれません。7

栽培と置き場所

RHSは Rosa chinensis に、肥沃で腐植に富み、適度な湿り気があって水はけのよい土と、日当たりのよい場所を勧めています。水分が保たれ、水が滞らなければ、白亜質、粘土、ローム、砂のいずれの土でも育ちます。4

RHSのバラ栽培ガイドは、実践のための基本をまとめています。日当たりのよい場所に植える、株のまわりに空間をとる、株元に水をやる、葉を濡らさない、肥料を好むバラには有機マルチと控えめな施肥を行う、といった点です。風通しが悪いと葉の病気にかかりやすい Rosa chinensis では、これらがとくに大切になります。梅雨から高温多湿の夏にかけては、この風通しの確保がいっそう重みを増します。7

NC Stateによれば、条件は日なたから明るい半日陰、有機質に富む土、pH 6.0〜8.0 前後の中性域、水はけがよく適度に湿った状態で、耐寒性はUSDAゾーン6a〜9bです。同じ資料は、パティオ、斜面、花壇、チョウを呼ぶ庭、生け垣向けの植物に分類しています。関東の平野部はおおむねこの範囲に収まります。6

花を楽しむなら、やはり日なたが一番です。非常に暑い地域では午後に軽い日陰があると助かりますが、日陰が濃いと茎が間延びし、つぼみが減り、雨のあと葉がなかなか乾きません。4 7

剪定・増やし方・仕立て

RHSは Rosa chinensis をシュラブローズに分類し、剪定もシュラブローズの方法に従うよう案内しています。実際には控えめな手入れが基本で、枯れ枝や病気の枝、交差する枝、込みすぎた中心部を取り除きます。背の低い現代バラのように強く切り戻すことはしません。4 8

返り咲きは、花がら摘みでも調整できます。RHSは、花がら摘みが多くのバラで次の花を促す一方、一部の花を残すとローズヒップができると述べています。Rosa chinensis では、花期を長く楽しむか、観賞用の実と鳥のえさを優先するか、目的に応じて選びます。7 6

RHSが挙げる増やし方は複数あります。春の緑枝挿し、夏の終わりから秋の熟枝挿し、夏のチップ芽接ぎ、そして原種バラでは種まきで、種には低温処理が必要なうえ発芽が遅いこともあります。NC Stateはより簡潔に、接ぎ木と茎の挿し木を挙げています。4 6

品種を残したい場合に重要なのは、種から育てると園芸上の選抜形質が忠実には受け継がれないことです。'Old Blush'、'Mutabilis'、'Semperflorens'、ミニチュア系を維持するなら、挿し木や接ぎ木、あるいは信頼できる生産者からの購入を選んでください。5 7

花・実・利用

RHSによると、Rosa chinensis は6〜9月に途切れず花を咲かせ、花色は赤、ピンク、白で、その後に緋色のローズヒップをつけます。NC Stateは、花が4〜5輪の房になることがあり、その記述ではおよそ5 cm未満にとどまるとしています。大輪の現代バラが一輪で咲く姿とは違う、軽やかな印象になります。4 6

コウシンバラの園芸上の価値は、見た目だけでは測れません。チャイナ・ローズはヨーロッパの系統との交配に繰り返し咲く性質を持ち込み、庭のバラの育種を大きく変えました。イリノイ大学エクステンションは、チャイナ、ティー、ノワゼットを、多くの古いヨーロッパのバラより暖かい地域に向く返り咲きのオールドローズに位置づけています。5

花は花壇、バラ園、低い生け垣、送粉者を呼ぶ庭、ちょっとした切り花に向きます。NC Stateは花に集まるハチやチョウ、実を食べる鳥について触れています。RHSもこの植物を送粉者に好まれるものとしています。6 4

実については、ここでは観賞の対象にとどめます。RHSは Rosa chinensis の実について、観賞用で食用ではないと明記しています。ほかのバラのローズヒップに利用例があるとしても、観賞植物としての同定情報をもとに、薬剤処理された株や同定の不確かな株を食べ物として扱うべきではありません。4

毒性・とげ・薬剤処理

ASPCAはバラ(学名 Rosa species)を犬、猫、馬に対して無毒と分類しており、有毒成分の項目も「無毒」とされています。つまり、Rosa 属の本来のバラであれば、ペットにとって無毒な植物として扱われています。9

それでも注意がいらなくなるわけではありません。とげは皮膚や鼻先、肉球を簡単に傷つけますし、植物を大量に食べれば物理的な消化器の不快感が起こることがあります。子どもについては、とげ、ローズヒップ内部の毛、庭で使った薬剤の影響も考えておく必要があります。9 4

もっとも気をつけたいのは通称の混同です。英語の「Chinese rose」「China rose」は、流通の場でハイビスカスや観葉植物など、Rosa ではない植物を指すことがあります。ペットの安全を確かめるときは学名を見てください。Rosa chinensis と、通称に「rose」が付くだけの植物は同じではありません。3 9

また、無毒のバラでも、農薬や肥料、殺菌剤、切り花の延命剤が使われていれば問題になりえます。家庭での対策は単純で、薬剤、花瓶の水、切ったばかりの枝を動物から遠ざけておくことです。7 9

病気と日々の観察

NC Stateは、Rosa chinensis が黒星病、うどんこ病、さび病、ローズロゼット病にかかりうること、アブラムシ、マメコガネ、穿孔性害虫、カイガラムシ、アザミウマ、タマバエ、ヨコバイ、ハダニの被害を受けうることを注意しています。RHSもアブラムシ、ヨコバイ、ハダニ、カイガラムシ、イモムシ、ハバチ、シカ、ウサギを挙げています。6 4

クレムソンは黒星病をバラの重要な病気とし、暖かく湿った時期が長く続くと広がりやすいと説明しています。日本では梅雨がまさにその条件にあたります。対策はまず栽培面からで、かかりにくい品種、衛生管理、病葉の除去、葉を乾いた状態に保つこと、日当たり、風が通る株間が基本です。10

うどんこ病は若い葉や新梢、つぼみに白い粉状のかびとして現れやすく、とくに気温が穏やかで夜間の湿度が高いときに出ます。さび病は葉や茎にオレンジ色の斑点をつくります。どちらにも、勢いのある株、風通しのよい中心部、株元への水やり、病気の残渣の除去という同じ土台が有効です。10

台木から出るひこばえも見ておきたい点です。接ぎ木した株では、接ぎ口より下から勢いよく伸びる枝が Rosa chinensis ではないことがあります。放置すると購入した品種を圧倒し、株の姿をすっかり変えてしまうおそれがあります。7

混同しやすい例と購入時の確認

植物を買うとき、コウシンバラという名前だけでは曖昧すぎることがあります。Rosa chinensis、China rose、園芸グループ、品種型、品種名まで記したラベルを確認しましょう。種か、植物学上の品種型か、古い園芸品種かによって、大きさ、花色、耐寒性、返り咲き性が変わります。3 4

'Old Blush' は歴史的な目安にはなりますが、Rosa chinensis のすべてを代表するものではありません。'Semperflorens' は返り咲きの系統、'Mutabilis' は花色が移り変わる型、'Viridiflora' は葉化に関係する緑の花の珍品を指し、ミニチュア系は原種とはかけ離れた園芸名で売られることもあります。5 6 3

寒い庭では、ロサ・アルバやごく耐寒性の高いハマナス系と同じ感覚で選ばないほうが安全です。RHSは Rosa chinensis の耐寒性をH5とし、NC Stateは主にUSDAゾーン6〜9に位置づけています。それより寒い地域では、暖かい壁際、水はけのよい土、株元の防寒、あるいはより耐寒性のあるバラが必要になります。4 6

コレクションの庭では、とても魅力のあるバラです。多くの現代バラより軽やかな樹形、波のように続く開花、返り咲きの歴史、主要な交配バラの系統との直接のつながりがあります。薬剤を使わない庭なら、その土地で丈夫と評判の系統を選び、多少の斑点のある葉は受け入れるほうが、シーズン中ずっと完璧な葉を目指すより現実的でしょう。7 10

主な参考文献

植物学的な基礎、つまり受理名、ジャカンによる発表、シノニム、分布は、POWO/Kew、IPNI、GBIFに基づいています。1 2 3

Rosa chinensis の大きさ、栽培条件、花色、開花、耐寒性、園芸上のリスクは、RHSとNC State Extensionを参照しています。4 6

返り咲き性と現代バラの歴史におけるチャイナ・ローズの役割は、RHSとイリノイ大学エクステンションを突き合わせて確認しました。4 5

仕立て、剪定、栽培上の問題は、RHSのバラのガイドとクレムソンのバラの病気に関する資料によります。7 8 10

ペットへの安全性は、犬、猫、馬に無毒と分類されたASPCAの Rosa species の項目に従い、とげ、薬剤処理、ふだんと違う摂取への注意を加えています。9

よくある質問

Rosa chinensis は種ですか、それとも品種群ですか?

Rosa chinensis Jacq. はPOWOが受理している種です。一方、庭ではチャイナ・ローズ、つまりこの系統から生まれた園芸型や品種を指す名前としても使われます。ラベルは、種、品種型、園芸グループ、品種名まで通して確認してください。

コウシンバラが現代のバラにとって重要なのはなぜですか?

チャイナ・ローズは、ヨーロッパでの交配に繰り返し咲く性質と、よりはっきりした赤をもたらしました。RHSはこの種を現代の交配種の多くの祖先と位置づけ、イリノイ大学エクステンションもチャイナ系を返り咲き性の主要な供給源に挙げています。

いつも返り咲きしますか?

同じ程度に咲くとは限りません。栽培されている型の多くは、とくに温暖な気候で波のように繰り返し咲きますが、株の勢い、樹齢、剪定、水やり、品種によって結果は大きく変わります。

鉢植えで育てられますか?

若い株やコンパクトな型なら、大きく深い、水はけのよい鉢で育てられます。ただ、成熟したコウシンバラはすぐに屋外向きの低木となり、日光、風通し、根を張る容積が必要になります。

Rosa chinensis の剪定はいつ行いますか?

無理のない方法は、冬の終わりから春の初めに軽く剪定し、シーズン中は咲き終わった花を摘んで次の花を促すことです。古い株に強い剪定を繰り返すのは避けてください。

Rosa chinensis は猫や犬、馬にとって有毒ですか?

ASPCAはバラ(Rosa species)を猫、犬、馬に対して無毒と分類しています。注意が必要なのはとげ、農薬、肥料、花瓶の水、食べすぎであり、本来のバラに特有の毒があるわけではありません。

実は食べられますか?

食べることはおすすめしません。RHSは Rosa chinensis の実を観賞用で食用ではないとしています。薬剤処理の有無や同定の確かさ、ローズヒップ内部の刺激性の毛も考慮する必要があります。

似ている植物

植物学上の情報は、RHS、Kew Gardens、POWOなどの信頼できる資料を基にまとめています。本ページは参考情報です。毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。