ラベージ (Levisticum officinale, )
ラベージ(Levisticum officinale W.D.J.Koch, 1824)は、イラン南部とアフガニスタン原産のセリ科多年草で、Levisticum属の唯一の種です。古代からセロリやブイヨンに似た強い香りの葉を利用するため栽培されてきました。光沢のある葉のロゼットから高い中空の花茎を伸ばし、黄緑色の散形花序と香りのある種子をつけます。
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世界の分布
POWOによる自然分布域はイラン南部とアフガニスタンに限られます。ヨーロッパでは古代から栽培され、狭い原産域の外へ広く帰化しました。ヨーロッパと北米の多くの個体群は、在来ではなく古い時代の導入に由来します。
基本情報
ラベージ(Levisticum officinale W.D.J.Koch, 1824)は、セロリに似た香りのセリ科多年草です。Levisticum属で受容される唯一の種です。Linnéは1753年にLigusticum levisticumとして記載しましたが、1824年にWilhelm Daniel Joseph Kochが別属へ移しました。 1 7
英名lovageは、古フランス語levescheが民間語源的に変化したlove-acheに由来します。中世のacheはパセリや近い植物を指しました。levescheはラテン語levisticum、その元のligusticumへとさかのぼり、広く栽培されていたイタリアのリグーリアを意味します。一方、herbe à Maggiという愛称は、単に市販の固形ブイヨンに似た風味から生まれました。 7
見分け方
最初に光沢のある濃緑色から黄緑色の葉が根生ロゼットをつくり、やがて中空で縦溝のある花茎が伸びます。成熟すると高さは1.5~2.5 mです。3小葉に分かれ、さらに切れ込む根生葉は最大70 cmほどになり、上部の茎葉はかなり小さく、切れ込みも少なくなります。 7 2
株のどの部分をもんでも強いセロリの香りがします。菜園のセロリよりはるかに強く、特徴的な手がかりになります。散形花序が現れるのは晩春から夏だけなので、それ以外の時期には香りが重要な識別点になります。 5
小さな黄色から黄緑色の花が、晩春から夏に直径10~15 cmの球状の複散形花序をつくります。果実は乾いた分離果で4~7 mm、成熟すると褐色になり、はっきりした縦の稜をもちます。 7
分類のポイント
ラベージの分類では、Plants of the World OnlineがLevisticum officinale W.D.J.Kochを受容名、Ligusticum levisticum L.を基礎異名としています。古い植物誌や目録には、次の同タイプ異名も見られます。
- Hipposelinum levisticum (L.) Britton(歴史的な同タイプ異名)
- Selinum levisticum (L.) E.H.L.Krause(歴史的な同タイプ異名)
- Angelica levisticum (L.) All.(歴史的な同タイプ異名)
- Levisticum vulgare Rchb.(歴史的な同タイプ異名)
- Levisticum paludapifolium Asch.(歴史的な同タイプ異名)
Ligusticum、Hipposelinum、Selinum、Angelicaの4属はいずれも、分類の歴史の中でこの種を含んだことがあります。Levisticumという属名自体も、独自の新しい語根ではなく、歴史的な異名に由来するものです。 1 10
生息地と分布
POWOが示すラベージの自然分布域は、イラン南部とアフガニスタンに限られます。ヨーロッパではアルプス、ピレネー、コーカサスの標高1,800 m未満の山地の牧草地や湿潤な生け垣にも、栽培から広がった状態で生育します。 1 8
ヨーロッパの山地で見られることと、厳密な原産域は別の話です。ヨーロッパと北米の多くの個体群は、古い食用栽培の導入に由来します。INPNもフランスでは自然に分布する在来種ではなく、導入・栽培植物として記録しています。 9
栽培できる気候の目安はUSDAゾーン4~9です。ただしMissouri Botanical Gardenは管理の手間が多い植物としています。土は湿り気を保ち、夏にも乾ききらせないようにする必要があります。 4 3
生活環と栽培
開花は一般に2年目か3年目以降です。株元と深い根を十分に形成する時間が必要です。新しい種子は3~6週間で発芽しますが、古い種子では遅く不ぞろいになります。そのため、春や秋に株分けして増やす方法もよく使われます。 5 2
定着後は、日なたから明るい半日陰で、肥沃で深く、適度に湿った土を必要とします。葉と若い茎を定期的に収穫すると再生が促され、種子形成への移行を遅らせます。3~4年以上株分けせずにおくと株が老化し、根が木質化して苦くなります。 2 4
冬ごとに地上部が枯れ、秋に切り取ります。地下の株は約−20 °Cまでの長い凍結に耐え、翌春に再び芽を出します。 2
利用と注意点
葉、茎、根、種子、花を食用に利用できます。生葉はスープやサラダに香りを添えます。軟白した茎はセロリの代わりになり、乾燥種子はパンや煮込み料理の香りづけに使います。ブイヨンに似た風味の根は、すりおろしたり、浸出してハーブティーにしたりします。 5 4
ASPCAは犬、猫、馬に有毒としています。フタリド類などの揮発性油に利尿作用があり、食べると排尿が増えます。根の精油には光感作性のフロクマリン類も含まれ、樹液に触れた後に日光を浴びると皮膚反応を起こす可能性があります。これは、ほかの複数のセリ科植物にも見られるリスクです。 6 7
伝統医学では、消化不良や尿路の不調に対し、駆風・利尿のためのハーブとして利用されてきました。ドイツのCommission Eは尿路感染に関する利用を認めています。ただし、腎臓に炎症がある場合や妊娠中は使用を避けるべきとされます。通経作用の報告もあるためです。 5
間違えやすい植物と近縁種
広く普及した園芸品種はなく、種子販売では主に基本となる種が扱われます。セロリやパセリのような、多くの選抜品種がある植物とは異なります。 2
よく間違えられるのはセロリ(Apium graveolens)で、特に開花前の幼株が似ています。ラベージは香りがはるかに強く、花茎は最大2.5 mに達する一方、セロリは低く茂ります。大きな散形花序をもつAngelica archangelicaも似た姿ですが、香りはセロリやブイヨンよりアニスに近くなります。 5
セリ科には有毒な種も多いため、曖昧な同定による採取は危険です。ラベージの識別では、葉形や花色だけに頼らず、学名と、もんだ葉の特徴的な香りを合わせて確認することが、より確かな判断につながります。
主な参考文献
- Plants of the World Online / Kew, Levisticum officinale W.D.J.Koch
- Royal Horticultural Society、Levisticum officinale(ラベージ)
- Missouri Botanical Garden Plant Finder, Levisticum officinale
- NC State Extension Gardener Plant Toolbox, Levisticum officinale
- Plants For A Future, Levisticum officinale
- ASPCA、ラベージ(Levisticum officinale)の毒性
- Wikipedia(英語)、Lovage
- Wikipedia(フランス語)、Livèche
- INPN / MNHN、Levisticum officinale W.D.J.Koch, 1824(ラベージ)
- Tela Botanica / eFlore bdtfx, Levisticum officinale W.D.J.Koch
よくある質問
猫や犬に有毒ですか?
はい。ASPCAはLevisticum officinaleを犬、猫、馬に有毒としています。揮発性油に利尿作用があり、食べると排尿が増えることがあります。
セロリとの違いは何ですか?
どちらもセロリに似た香りですが、ラベージははるかに強く、ブイヨンにも似ています。また多年草で、一年草や二年草として育てるセロリよりずっと大きくなります。
なぜherbe à Maggiと呼ばれるのですか?
フランス語のこの愛称は、強い香りが市販の固形ブイヨンを思わせることに由来します。味の連想であり、植物学上の関係を示す名前ではありません。
すべての部分を食べられますか?
はい。葉、茎、根、種子、花を食用に利用します。料理での使い方は、採取する部分と季節によって異なります。
なかなか花が咲かないのはなぜですか?
通常、開花は2年目か3年目からです。株元と根系の形成に時間が必要なためで、初期生長のゆっくりしたこの多年草では自然なことです。
日なたで収穫すると危険ですか?
根の精油には光感作性のフロクマリン類が含まれます。樹液に触れた後に日光を浴びると皮膚反応を起こす可能性があり、ほかのセリ科植物にも共通する注意点です。
ヨーロッパではいつから栽培されていますか?
8世紀末から9世紀初めのCapitulare de villisには、Charlemagneの農園で栽培すべきハーブの一つとして、すでにラベージが記されています。
似ている植物
植物の毒性について不明な点がある場合は、植物学または獣医学の専門家にご相談ください。







